というわけで、会う時は彼指定の店か、さまざまな飲食店が揃っているような場所になる。その点、ヒルトン東京はレストランも充実しているし、特別なリクエストにも柔軟に応えてくれるので安心だ。久しぶりの再会を喜び合って、早速何を食べたいか尋ねると、急にシリアスな表情になった。これもまたいつものことなので、驚きはしないが、どうやら慎重に選びたい様子。とりあえず、各店の軒先を回り、メニューや雰囲気を見てから決めてもらうことにした。

その結果、中国料理「王朝」に入ることになった。ちょっと意外だなと思ったが、考えてみれば、以前タイ料理の店に連れて行かれたことがあった。もっとも、彼はエビしか食べていなかったように記憶しているけれど。予約なしで突然訪れては困惑されるかと心配したが、遅めの時間だったのですんなりとテーブルに案内された。

メニューを眺めながら、とりあえずルイ・ロデレールを。またもシリアスな表情で注文を厳選し始め、その結果選ばれた料理は、すべてエビ料理だった。しかも、シュウマイが食べたいがエビ以外入れないでくれとのスペシャルオーダー付きで。でもそれじゃYUKIがかわいそうだからと、牛肉のXO醤炒めも注文しようと、それはそれはありがたい申し出もあった。

エビ尽くしの食卓に満足した彼は杏仁豆腐を追加。「トッピングはエビにする？」と聞いたら、笑って「プレーンがいい」と言う。フルーツにもアレルギーがあるらしい。でも、アーモンドゼリーは大丈夫なのか。アレルギーというのは不思議なものだ。

食後は「マーブルラウンジ」に移動して、奥のコーナーにある静かなソファに座った。コーヒーとチョコレートムースに加え、ボトル入りのアイスティを注文。ワインのようなボトルから、大ぶりのワイングラスに注がれたアイスティは、ソーテルヌのようなクリアな輝きと豊かな香りを放っている。味はすっきりとしており、独特の喉ごしを感じるが、特別驚くほどおいしいというわけでもない。1本9,000円というアイスティ。まぁ、話のタネにはいいかも。

友人を見送った後は、37階のエグゼクティブラウンジでチェックイン。すでに部屋の準備は整っており、すぐさまルームキーと朝食券が渡された。週末でラウンジの朝食が混雑することが予想されるために、あらかじめ「マーブルラウンジ」の朝食券を用意したらしく、どちらを利用しても構わないとのことだった。

部屋はいつもと変わった様子はないが、デスクに添えられたオフィスチェアに座った時にいつもとは違う感じがした。何だろうと考えたら、この椅子には肘掛がないが、いつもは肘掛付きだったことに気付いた。それだけのことだが、ちょっぴり損をしたような気分。その上、ウェルカムアメニティが夕方になっても用意されなかったので、催促してみた。すると慌てて持ってきてくれ、申し訳なかったと、ちょっとしたオマケを添えてくれた。ささやかでもオマケというのは効果が大きい。

ラウンジのカクテルアワーは、週末だけあって混雑を呈していた。しかも皆長居をしていて、なかなか席が空かない。ラウンジを大幅に拡大してもなお、まだ混乱は続いているようだ。

これではきっと朝食も落ち着かないだろうと思い、「マーブルラウンジ」を利用することにした。こちらは混雑することもなく、ゆっくりと過ごせそうだが、真夜中を思わせるようなビートの聞いたラウンジミュージックが流れ、テーブルにはチープな紙ナプキンとマグカップが並び、4千円近い料金を取るにしてはカジュアル過ぎて、ゆったりと気分のいい朝には相応しくない。

料理も来る度に悪くなる。フレッシュな野菜が極端に少なく、バラエティ豊富には感じない。だが、エッグベネディクトなど、これまでのブッフェにはなかったアイテムも幾つかお目見えしている他、ブッフェ台に並ぶもの以外にもリクエストに応じて調理してくれるという楽しみが加わった。ヒルトンでは黙っていると損をするということかも。