1999.06.28
最低階
ヒルトン東京 Standard Room
楽-3

単に帰るのがしんどくなり、部屋をひとつ取った。寝るだけなので最低の部屋でいいと言ったら、本当に最低階の部屋だった。高層ホテルで低層階の客室に宿泊するのは損をした気分がしないでもないが、逆に滅多に拝めない景観なので新鮮さがある。8階の部屋の窓からは低層棟の屋根が見えるだけで、他には夜景ひとつ見えない。高所恐怖症の人や、避難経路が気になる人には最適。

ダブルのシングルユースで利用したが、客室はベッドが1台しかない分、スペースに余裕があり、ひとりで利用するには十分だ。バスルームはさすがに狭く、壁はビニールクロス張りで冴えないものの、清掃状況は素晴らしく、アメニティも豊富で不自由はなかった。ただ、電話機がライティングデスク上にしかないのが、不便だった。

特筆すべきなのは、ルームサービスの充実ぶりで、パスタなどのライトミールだけでも45種類のバラエティーがあり、その他にも「武蔵野」や「王朝」からのスペシャリテが豊富に用意されている。コーヒーは900円、アメリカンブレックファストは2,600円、和朝食は2,800円だ。

グリル&ロティサリー「トゥエンティワン」

レンチレストラン「伊万里」として営業していた店舗が業態変換をして、グリル&ローティスリー「トゥエンティーワン」として再オープンしてから2年が経った。オープン初日に利用して以来、その年には頻繁に利用していたが、ついに昨年は一度も利用することがなく、ほぼ1年半ぶりの再訪となった。サービス陣の顔ぶれはだいぶ変わったが、懐かしい人々も少なからず残っているので、安心して食事をすることができた。

この店に来る時は、なぜかメニューを見ずにおまかせになる。マネージャーのサゼッションが楽しいので、ついついそれに乗せられて、料金も分からないまま注文をしてしまうのだが、会計の段になって予想よりも高かったことはない。

今回も薦められるがままに、フォアグラのソテー、南瓜の冷製スープ、前沢牛霜降り肉のステーキを注文したが、満足感のある内容だった。自分で薦めたものに対する責任感がきちんとあるらしく、料理が提供される度に、頃合いを見て「お口に合いますでしょうか?」と尋ねててくる。食事中のサービスは極めて快適で、若々しいサービス人たちには、ヒルトンならではの快活でフレッシュな印象がある。皆スピーディに振る舞っているが、洗練された動きなので、慌ただしさを感じさせないのがいい。

用事がある時は欠かさずそばに控えていてくれ、最近は高級店でさえ頻繁に経験する、呼んでも気付いてくれないという失態は、この店では皆無だ。また、テーブルで会話が盛り上がっている時は、それを割ってはいるようなことはせず、近くでじっとタイミングを待っている姿が印象的だった。

以前の「伊万里」と比較すれば、格段に都会的で明るいインテリアに変わり、客層も若くなったのかもしれないが、昔からエグゼクティブたちをもてなしてきた経験がしっかりと引き継がれており、最近はやりのハードだけの店とは別格だ。食器はコンテンポラリーなデザインのものを採用しているが、シルバーだけは、「伊万里」時代のまま、クリストフル社のマルメゾンを使用している。

オープンキッチン内の料理人たちもサービス精神旺盛で、入退店時にはにこやかに声を掛けてくれるのがうれしい。コースメニューはランチ2,800円から、ディナー6,000円からと、リーズナブルな設定となっているので、気軽に利用できる。また、11月30日まで、ランチ3,500円、ディナー7,500円の「1億人感謝メニュー」が用意されており、充実した内容でオトクだ。

1999.12.31
拭いたつもり?
ブラッセリー「チェッカーズ」ヒルトン東京
怒-1

本当は「トゥエンティワン」にいくつもりでヒルトンに車を入れたのだが、店の前にいってみるとなぜだかお休み。じゃぁ「武蔵野」で懐石でもと思えば、こちらも休み。「王朝」はやっていたのだが、中国料理の気分ではなかったので、最後の選択肢「チェッカーズ」に入ることにした。年末年始はいろいろなホテルでレストランの営業時間などが変更になっているようだ。

こちらでは大晦日にもかかわらず、ありがたいことにオトクなランチブッフェを実施していた。パスタ&ピザのブッフェで1,600円。コーヒーを付けても1,900円と手頃。ブッフェカウンターは1箇所のみで、前菜風に仕立てられるサラダと数種ずつのピザとパスタがあるのみだが、値段を考えれば十分な品揃えだと感じる。デザートは食事が終わった時に声を掛ければ、その日のデザートをテーブルまで運んできてくれる仕組みだ。

店内にもヒルトンらしい活気があり、空いた皿をすぐさま下げてくれたりと、目が行き届いているかのようだった。ところが、他の部分で不満を感じさせられた。今回、カウンター席を利用したのだが、このカウンター席はディナーブッフェの際にはブッフェカウンターに変身する。ちょうどテーブルの部分にたくさんの料理が並ぶことになる。そのカウンターテーブルには更に一段高いカウンターが付いていて、その部分にも料理を載せれば2段に分けて使えるような設えなのだが、その壁面が非常に汚れていた。

席に着くと目の前にその汚れが迫り、食事をしながら目にする光景としてはまったくふさわしくないものだった。従業員にペーパータオルをもらい、自分で拭いてみたところ、あっという間に油汚れで真っ黒になってしまったほど汚れていた。そうして客が拭いている姿を見ても、従業員たちは見て見ぬふりをしているばかり。皿を下げに来た時にさりげなく「ここ、ずいぶん汚れていますね。もう少しキレイにした方がいいですよ」と声を掛けると、「ちゃんと拭いています」と言い放って、そのまま皿を下げて行ってしまった。ちゃんと拭いているのならなんでこんなに汚れているのだろう?

このような感覚で仕事をしているのだとしたら、バックヤードではなにが行われているかわかったものではない。この店で食事をするのが不安になって来た。

Y.K.