地上から「ヒルトピア」に通じるアプローチは、立派で幅広い階段になっているが、そのスケール感とは裏腹に、そこに誘い込まれていく客はほとんどいない。地下鉄西新宿駅から地下道でヒルトンにアクセスする場合にも、この「ヒルトピア｣内を経由するのだが、足を止める人をほとんど見かけたことがない。広くてカーペット敷きの通路には、ホテル直結の施設らしいグレード感が漂うが、魅力のある店が少なく、一巡しても購買意欲が高まらないのが現状だ。

さて、チェックイン前に、ちょっと小腹が空いたので何か食べることにした。ホテル内の店はどこも混雑しているようだったので、「ヒルトピア」なら空いているかもしれないと思って地下に行ってみた。想像通り、人通りが少なく、いくつかある飲食店も気の毒なほどガラガラだった。軽くカレーでも食べることにして店に入ると、他に客がいないという状態。まだ午後１時前だというのに、これでは採算が合わないのではないかと、余計な心配までしてしまう。

カレーのランチセットを食べ、食後の一服は場所を変えてくつろごうと思い、３７階のエグゼクティブラウンジへ。ここなら眺めもいいし、ちょっとしたデザートもある。ついでにチェックインをし、ルームキーを受け取ったが、その部屋の真上に子供連れが滞在しており、騒がしいかもしれないということで、他に部屋を探し直すという申し出があった。そんなわけで、ラウンジでくつろぎながらも40分待たされ、やっと部屋に入ることができた。

今回の部屋は、エグゼ階が改装されてからは初めて利用するキングベッドルーム。窓が少し斜めになっている分、わずかに部屋が広くなっているタイプで、180センチ幅のベッドが入り、ガラス製の楕円型デスクが設置されている。ツインルームではカウンターをデスクとして使うようになっていたが、ダブルルームではデスクが独立していることで、よりビジネスに適した環境が整っている。その他は、すべてツインルームと同等だ。

部屋で一息入れ、そろそろ仕事に取り掛かるかと思った時、何となく胃の辺りに異変を感じた。普段あまり胃が痛いなどということはないので、急に胃がムカムカしだして不安になった。少し横になっていればすぐに楽になるだろうと思って、とりあえずベッドに横たわったが、回復するどころか悪化する一方。こりゃまずいと、とにかく安静にして、じっと耐えることに。

結局、すべての予定を中止し、一晩高熱と胃痛に苦しんだ。その間、原因はなんだろうかと、調子が悪くなるまでの行動を思い出しながら検証してみた。前日は公演があったが、思い返してみるといつになく異常に汗が出ていた。その後は資生堂パーラーで食事をし、やや冷たい雨が降る中、人混みをかき分けるようにして歩いた。消耗したカラダで、傘もささずに雨の中を歩いたのが原因かもしれない。それとも、カレーか・・・？

朝になってもまだ不調だったが、ラウンジに行って軽く朝食をとった。オレンジジュースとヨーグルトとカモミールティだけ。いつもは朝食しっかり派なので、パンやら卵やら、たらふく食べる。それを知っているスタッフたちも、妙に慎ましい量しか食べていないところを見て、「どうしたんですか？」と心配してくれた。そして、午前の予定をキャンセルし、朝9時にチェックアウトすると伝えってあったのを午後までレイトチェックアウトさせてもらえるよう変更してから、再度部屋で横になった。

午後2時まで部屋で過ごし、チェックアウト。ラウンジに行くと、係は朝よりは元気そうになったと言ってくれたが、実際はきっとひどい顔をしていたに違いない。ブドウジュースを一杯もらって、次の約束に向かった。ホテルはなにも悪くないのだが、こうも不調だと気分は「哀」。