2001.05.12
相席
ヒルトン東京 Executive Room
喜-4やはりここのエグゼクティブフロアのゲストリレーションは素晴らしい。チェックインはスムースで丁寧。そしてゲストをくつろがせるコツをよく心得ている。自然体な接し方だがなれなれしくなく、仕事振りを見ていて安心できる。手続きをしながら西洋銀座の空気を思い出した。そして、正面玄関から客室まで付き合ってくれたベルマンも、ヒルトンらしい機敏さを保ちながら、等身大の親しみを垣間見せ非常に印象が良かった。日々ホテルにお世話になりながらも、「ああ、ホテルに来たな」という実感を持てたのは、かなり久しぶりなことだ。
90年代以降、ホテルの多様化し個性が際立つようになってきて、何がホテルらしさかと一口には言えなくなってきたが、今回のヒルトンで体験したような、ファインプレーのようなテンポ感と、ツボを押さえたサービスに触れるのは格別の喜びだ。ラウンジのティータイムやカクテルアワーには、都内でも屈指の充実度を誇る品物が並び、多くのゲストで賑わっている。ラウンジには飲食のサポートをする専属のスタッフを置き、バーと遜色ないサービス内容だ。マネージャーはゲストと積極的に会話を楽しんでいることも、ラウンジ全体の雰囲気にプラスの作用をもたらしているようだ。
ただ、困るのはラウンジが混みあってくると、勝手に相席にしてしまうことだ。カクテルアワーに出向いたときは満席だった。諦めて帰ろうかと思ったら、こちらへどうぞと誰もいない席を勧められた。座ってから相席ですがいいかと尋ねられたのだが、ぼくは構わないと答えた。ところが、もともとこの席に座っていて、たまたま料理を取りに立っていた先客は、戻ったら知らない間にぼくが座っていたものだからビックリしたようだ。相席に案内するなら先客にも断ってからにしてもらいたいものだ。
見知らぬ人とひとときの会話を楽しむのも、時にはオツなものだが、この先客は、シャンパンとワインとビールを同時に飲みながら、若い姉ちゃんを連れ込むためのナンパ電話を、携帯で掛けつづける品のない人だった。まったく居心地が良くなかったので、一杯飲んですぐに客室へ戻った。
客室にはこれといった変化はなかったが、客室の扉に仕込まれたカードキーリーダーが新しくなったようだ。アメニティはモルトンブラウンからSOMOになり、その他のアイテムもパッケージが変わった。また、ディレクトリーやルームサービスのメニュが一新され、スタイリッシュな印象になった。一般階とエグゼクティブフロアではエレベータホールの造りにも大きな差があるが、26階に他の階とはデザインの違う石張りのエレベータホールがある。何なのか謎。
週末のヒルトンはファミリー向けのプロモーションが盛んで、各レストランでは平日よりも手頃な値段で、贅沢な雰囲気を味わえるような工夫が見られる。大人っぽいムードのグリル&ロティスリー「トゥエンティワン」でも、ファミリートリート7,500円というメニューがある。こちらはメインディッシュをチョイスでき、オードブルとデザートは楽しげにディスプレイされたブッフェカウンターから好きに取るというシステムだ。ブッフェ台にいく気がなかったので、グランドメニューからアラカルトで注文することにした。
昨年に引き続きアスパラガスのフェアメニューも用意されており、コースに加えることにした。タラバガニのケーキは見た目がコロッケ状で、中に冷たいカニ肉が入っており、バルサミコやマスタードでパンチのある仕上がり。アスパラガスのスープにはモリーユが惜しげなく入っているが、そのモリーユの香りのよいこと。それからメインのサーロインは、国産でないものを選んだが意外にジューシーでやわらかかった。また、添えられたガルニのキノコ、ほうれん草、ポテトのガレットがまた存在感のある味わいだった。
デザートはメニューを見たが、サッパリした感じのものがなく、コーヒーだけを飲んで締めくくった。店内は軽快なイメージながらも、イスや床材は結構上等。軽そうに見えて、実は教養のある女のよう。サービスも安定しており、実によい状態だった。活気がよく似合う店だ。
3ヵ月半ぶりのヒルトン東京。狭い正面玄関車寄せには、駅へのシャトルバスと空港リムジンが陣取っていて、タクシーも自家用車もバスの後ろに列をなして待たなくてはならなかった。シックなユニフォームを身につけたドアマンやベルマンたちは、みなリムジンバスの方に気をとられて、それ以外のゲストのことは視野に入っていないようだった。やっとのことでひとりのベルマンの注意を引いて荷物を扱ってもらい、37階のラウンジまで案内をしてもらった。ベルマンは笑顔を絶やさず、キビキビとしており感じがよかった。ラウンジでのチェックインも同様で、めったにこない客なのにしっかりと顔を覚えており、親しみを込めて接してくれた。
案内されたのは、建物が描く曲線の内径に位置する客室で、窓から入り口に向かって末広がりに扇状になった、通常よりも広めのタイプだった。窓の部分は柱の関係で、通常のタイプのものより狭いのかもしれないが、入り口付近にはかなりのゆとりがあり、少々ガランとした感じがする。室内の形状が異なる以外、バスルームを含め設備はまったく同等だ。ベッドは柱の死角にある場合が多いが、このタイプのレイアウトだと、入り口を不用意にあけると丸見えになってしまう。それでも、やや狭い印象がある普通の客室に対して、このゆとりある空間は尚も魅力だ。
午後のケーキタイムに引き続いてのカクテルアワーは、いつもながら大変な賑わい。外国人たちが、ゆっくりと腰を据えてグラスを傾けているから、出遅れるとなかなか席が確保できないこともあるようだ。この活気は他のラウンジではなかなか味わえない。
仕事の合間に軽く食事がしたくなった。ルームサービスを注文する手も考えたが、気分転換をかねてレストランに出かけてみることにした。「トゥエンティワン」に新しいシェフが来たと聞いたので、早速味わってみようかと思ったが、まだメニューは以前のままで、新しくなるのは9月の中旬くらいになるとのことだったため、またの機会に。替わりに隣の「チェッカーズ」に入った。
席につくとメニューを差し出しつつブッフェを薦められたが、あれこれと楽しみたい気分ではなかったので、アラカルトからチョイスすることにした。テーブルにはクロスの上に紙のマットが敷かれ、布のナプキンやキャンドルなど、しっかりとしたセッティングがされている。バラエティ豊かなメニューを眺めていると、あれこれ気移りするが、この店でのお気に入りはナシゴレンだ。ボリュームがあって、香ばしいサテも添えられている。
食事の前に飲みのもはどうかと勧めてきたのを遠慮したのが気に入らなかったのか、肩で風を切って歩くいかつい係が無愛想に注文を受けに来た。ナシゴレンとソフトドリンクだけを注文すると、今度はスープはどうか、サラダはいらないかと押し付けがましくあれこれと勧めて来て辟易した。食事を済ませて早々に席を立つと、その係とすれ違ったが、「ありがとうございました」と声をかけられることもなかった。
2001.11.17
昼夜連続
フレンチパシフィック「トゥエンティワン」ヒルトン東京
楽-4仕事上での会食が目的で昼の12時から予約をいれた。電話で予約をしたときには、ちょっと頼りなさそうな女性が対応した。少々不安があったのだが、必要なことは伝え、予約も受けてもらえたので、やりとりを終えて電話を切った。すると、しばらくして責任者から電話が入り、その日は貸切営業の予定が入っているために、ランチタイムの閉店時間が繰り上がっている事を知らせてくれた。こちらとしては、その閉店時間よりも早く次の予定が入っているので、まったく問題ないことを伝え、受話器を置いた。リクエスト内容を責任者に直接伝えられたことも、こちらにとっては好都合だった。
当日は期待通り、よい席を用意してくれていた。この日は相手の食事の内容をあらかじめ予測することができず、店を選ぶのにも苦労したが、結局、料理一品と食後のコーヒーという軽食で終わってしまった。うるさい注文をつけておきながら、料理の注文の方はしけた内容で申し訳なかったが、それでも実によくサービスしてくれた。しかし、ビジネスの会話に集中していたので、残念ながら新任シェフの独創的なスタイルの料理を十分に堪能する余裕がなかった。
グリル&ロティサリーからフレンチパシフィックへと変化した料理をじっくり味わいたいと思い、その日の夜に再度利用した。夜の店内は、レストランとして理想的な賑わいがあり、その空間にいるだけで楽しい気分になれる、そんな雰囲気だった。週末にだけあるファミリートリート7,500円を注文した。オードブルは、中央のカウンターからブッフェスタイルで好きなものを取る。オーソドックスなものから、生牡蠣、生ハム、和風の小皿に盛られたユニークなものまで、バラエティ豊かに並んでいる。ディスプレイにも工夫かあり、見ているとついついどれも食べたくなってしまう。
メインディッシュは、幾種類からチョイスでき、キッチンで調理されて運ばれてくる。今回は、プライムフィレのシェフスタイルというものを注文してみた。シェフスタイルというところにひかれたこの料理は、スープに浸したそうめんや豆腐の上に、フィレ肉を載せたというもの。実にユニークだった。デザートは、また別のテーブルにディスプレイされ、ケーキやフルーツなど、種類も豊富だ。シェフは積極的にテーブルを回り、様子を見ている。その姿も謙虚な感じで好感が持てた。サービスは概ね良好だったが、少し他のテーブルを見回すと、ワイングラスが空になって困っているゲストがいたりと、やや目の行き届かない部分があるようだ。
2001.12.31
大晦日
ヒルトン東京 Executive Room
楽-3チェックインの時点から、エグゼクティブラウンジは手続きで混雑していた。それでも、ゲストリレーションたちはペースを乱すことなく、一組ごとに落ち着いて対応していた。その自己コントロールは大したものだと感心するが、急ぎの用がある時などには、落ち着き過ぎているように思えて少々イライラすることもあった。態度や口調は丁寧でやわらかいが、よく聞くと言葉の内容は半ば強制的な意味合いを含んでいるというケースも少なくない。しかし、こちらから何をリクエストしたり依頼したことに対しては、いかに厳しい状況でも前向きに対処してくれる。その姿勢は信頼に値するものだった。
ラウンジ内でサービスに当たるモロッコ出身のスタッフが、実に感じがよく優秀だった。表情や仕草がやわらかく、まったくトゲがない。それでいて動作は機敏でよく気が付く。元旦のラウンジでは和服姿でサービスをする女性スタッフもおり、好評のようだった。
客室は概ね快適だった。しかし、携帯電話の電波は客室によっては、かなり入りにくかった。特に新宿駅側の客室での入りが悪いようで、北西に行くほど状態がよくなるとのこと。
Y.K.