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ANAインターコンチネンタルホテル東京 Corner Suite | |
ANA InterContinental Tokyo | 2011.08.05(金) |
東京都港区 | 哀-4 |
ARCHIVES ・ 1992 |
巨大ラウンジの意味 前回このホテルに来たのは昨年の夏。ほぼ1年ぶりの再訪となった。インターコンチネンタルは、かつてお気に入りのホテルグループだったが、横浜でひどくガッカリし、東京ベイにも失望し、もうメンバーを辞めてもいいかと思うようになってしまったので、このホテルへの宿泊頻度も、全日空ホテル時代より低下している。 インターコンチネンタルも全日空も、いい会社だと思う。単に波長が合わなくなってきただけで、恨みがあるわけでもなく、なんとなく別れた昔の恋人のような存在だ。 1年ぶりの様子うかがいは、35階のラウンジでの温かい歓迎からスタートした。ラウンジの責任者を務める女性は、人情味に溢れ日本女性らしい雰囲気。どことなく旅館の女将さんを思わせ、彼女がいるととにかく安心なのだ。他の面々からも「お帰りなさいませ」「お久しぶりです」と次々と声が掛かり、気分よく過ごせそうな予感がした。 チェックインと同時に、ラウンジでのどを潤し、早速部屋へと案内してもらった。用意されたのはいつものスイート。1年ぶりでも室内の様子はしっかりと記憶に残っており、特に変わった様子はない。清掃にシビアなことを知っているスタッフが、「今日も念入りに清掃していたようです」と言葉を添える。確かに丁寧に仕上げてあり、気持ちがいい。 リビングのテーブルには、ウェルカムアメニティ。前年に比べるとずいぶんと貧弱になっている。フルーツは、誰かの食べ残しかと思わせるほど。最初からこれだったなら違和感ないのだろうが、だんだんショボくなるのは非常によろしくない。フルーツの他には、金平糖といかにも和風な箸が用意された。外国人なら日本情緒を感じるかもしれないが、日本人にとっては漢字Tシャツとか相撲ネクタイ同様、なんとなく笑いを誘う。 寝室のベッド配置は相変わらずへんてこりん。すなおに2台のベッドをハリウッドツインに寄せて、ナイトテーブルを両脇に置けば、シンメトリーになってバランスが整うのに。 なんとも退屈なインテリアだという印象は今も変わらないが、コオーディネートのまとまり感はなかなかいい。また、ベッドでの寝心地は格別で、ほどよい重みを感じるデュベと滑らかなシーツの感触は、このホテルを離れていても時折恋しくなるほどだ。 日中はクッションとスローケットでデコレーションされているが、夕方のターンダウン時には、すぐに眠りに就けるように整えてくれる。 ベッドの脇にはすぐにクローゼット。両開きの引き戸で仕切られているが、スイートのクローゼットとしては狭い。その中にアイロンセットなどの常備品が収納されているので、持ち込んだ荷物を整理するスペースが限られている。 熱心に清掃したと聞いたが、バスルームには気になる汚れがいくつか残っていた。想像するに、熱心に清掃したというのは、通常の手順を念入りにという意味で、ふだんやらないところはやっていないのだと思われる。棚部分の埃やトイレ扉の手垢などは、簡単に落とせるのに見落とされていた。 このバスルームやトイレのことは、相変わらず好きになれない。浅くて窮屈なバスタブや、マンションの設備みたいなつまらない内装は、インターナショナルホテルのスイートにふさわしくない。 加えてよくないのが、客室全体の照明プラン。調光できるものはひとつもなく、多くはスイッチが一括になっている。サイトの客室紹介には、陰影のある魅力的な写真が掲載されているが、室内に備わっている照明設備をどう調整してもあのような雰囲気は出せない。つまり詐欺画像である。そんな詐欺画像を使うこと自体、現状の照明設備が魅力に欠けることを自ら認めているようなものだ。 さて、このホテルの35階に備わっているクラブインターコンチネンタルラウンジは、特別フロア付帯のラウンジとしては国内最大級の規模を誇っている。エクスクルーシブな雰囲気やパーソナルタッチのサービスという旧来のラウンジのイメージから、まるで独立した飲食施設であるかのようなスケール感のある施設へとシフトした、新しい世代のラウンジだ。 だが、ここまで広くした狙いはなんなのか。ここでいったいどんな価値を提供したいのか。それがいまひとつわからない。いくら広くても、利用客が多くて混雑しているのであれば、ひとりひとりの客にとっては何のメリットもない。広くて混んでいるくらいなら、狭くて空いている方がずっといい。だが、もしこれがゆったりと使えるのであれば魅力的だ。 それには、クラブフロアの客室数を限定し、その分、客室単価を上げればいい。このホテルは標準客室が狭いので、ラウンジの開放感は付加価値として重要だ。ゆとりある空間とパーソナルなサービスの中で充実した朝食でパワーチャージしたり、旅慣れた人の醸すムードとともに夕刻のシャンパンを楽しんだりできるのなら、少々高くてもこのフロアを選びたくなる。 しかし、現状は理想とは程遠い。ビーチサンダルやハーフパンツの中年、走り回って騒ぎ放題のこども、ビジネス用に備え付けられたコンピュータを使って大音量でゲームをしている学生、ソファに靴を脱いで寝転がる女などなど、もう何でもありの下劣なラウンジになっている。その上、BGMやTVまで騒々しく、それはもう音の暴力というレベルだ。 サービスに当たるスタッフたちがどう思っているかは別として、クラブフロアの在り方を決定できる立場にある者は、この状態を看過し続けている。そこに伺えるのは、クラブフロアが客の高いニーズに応えるための設備として設けられたのではなく、単にラウンジ内で飲み食いをする分の料金をあらかじめ上乗せしただけという売上向上オンリーの発想だ。 最近はコンビニエンスストアで購入した品を部屋に持ち込んで食事を済ます客も増えており、ホテル内のレストラン利用はますます落ち込み気味。そこで一日に何度でも使えるブッフェレストランの料金を宿泊料に盛り込んだのが、今のクラブフロア。仮に1万円の増額で、1万円分の飲み食いをされたとしても、1万円分のレストラン利用があったと思えば、ホテルにとってはもうけもの。そんな発想だから、客層も悪くなるわけだ。 そして、混雑するラウンジで長居をするほど野暮なことはない。狭いラウンジなら、入口に客が来て席を探す素振りを見せれば、誰かがそれをキッカケに席を立つ光景がしばしば見られる。だが、これほど広いラウンジでは、そうした呼吸がシンクロすることはまずない。 この日、記念日を祝おうとこのホテルでの滞在を決めた老夫婦が、夕食の前にラウンジでのひと時を楽しもうと訪れたが、ラウンジ内は満席で安居酒屋のような騒がしさだった。老夫婦は座る場所もなく、そのまま部屋へと帰って行ったという。それはエレベータ内で聞いた老夫婦の会話だが、思い描いてた特別階の滞在があまりに想像と違って心底驚いた様子。もはや、ホテルは夢の舞台にはなり得ないのだろうか。 夏の東京全日空ホテルといえばアウトドアプール。今年も多くの人で賑わっている。昨年まではクラブフロアゲストは、1時間1,000円の有料デッキチェアを無料で利用できるサービスがあったのだが、今年から廃止された。そのためか、無料のデッキチェアはたくさんの人で混雑しているが、有料チェアはガラ空きだった。 真意のほどはわからないけれど、このホテルというか、IHGホテルグループは、金儲け主義のにおいがプンプンしてよろしくない。お稼ぎ頂いて結構だが、もう少しさりげなくお願いできないものだろうか。 |
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