今回用意された客室は、エグゼクティブフロアにあるコーナースイートだった。三方向にのびる廊下のそれぞれ最も奥に位置し、スーペリアルーム2室分に当たる65平米の面積がある。入口を入ると、リビングルームが広がり、明るい赤色の大きなソファがまず目に飛び込んでくる。ゆるやかなラウンドシェイプがソフトな印象を醸し、並んで座ってくつろいだり、ひとりで寝そべってカウチベッドにしたりと、重宝なソファだ。

ソファの前にはテレビの載ったサイドボードがあり、収納と間接照明を兼ねている。テレビは22インチしかなく、広い空間では滑稽なほど小さく見える。窓際には、高めのテーブルを挟んでふたつのイスを添えている。ドアの並びには、書斎を思わせるコーナーがある。後ろの壁を飾り棚にし、ハロゲン光の間接照明がオブジェを照らしている。デスクは広く、使いやすいレイアウトだ。

リビングとベッドルームは、引き戸で仕切られている。引き戸の脇には、リビングとベッドルームの両方に扉が設けられたクローゼットがある。クローゼットの反対側には、ミニバーと冷蔵庫を設置。ベッドルームには、120センチ幅のベッドが2台並んでいる。真っ白いデュベカバーと、真っ赤なスローケットやクッションのコントラスト、そして、白いレザーのベッドボードに青いシェードのブラケットが、室内に変化と彩りを与えている。他には、ベッドサイドに小さなソファとテーブルをひとつ、そして、シンプルなテレビ台を置くに留めている。

バスルームは約10平米。ベイシンのある脱衣室、洗い場のあるバスエリア、独立したトイレで構成される。バスタブはゆったりとしており、小型の液晶テレビもある。シャワーは多機能型のタワーだが、ハンドシャワーが使いにくい。バスタブの脇の壁は半透明になっており、ベッドルームを通して自然光を感じることができる。スイートに用意されるタオルにはロゴが刺繍されており、肌触りもよかった。

全体的に見ると、デザイン性や装飾性には富んでおり、個性的な客室ではあるが、ひとつひとつの備品の質感は低い。また、雰囲気重視で、真に快適性を追求した部屋造りにはなっていない印象だ。例えば、ナイトテーブルには、携帯電話充電に便利そうなコンセントが備わっているが、ナイトランプを消灯すると、このコンセントにも電気が来なくなる。せっかくのコンセントなのに、眠っている間に携帯の充電ができないとは不親切だ。また、扉や仕切りに半透明のアクリルを使ったり、フローリング風にするために無粋なシールを使ったりと、わざわざ部屋を安っぽくしているようにすら感じる。

清掃やメンテナンス状況も極めて悪い。カーペットには夥しい染みが見られ、サテン仕上げのステンレス部分や半透明アクリル部分には、手垢に由来する皮脂汚れが染み込んで、妙な模様になっている。ボンボリ型のランプシェードには埃が山のように積もり、バスルームはカビだらけだ。カーペットの染み抜きは大変な作業になりそうだが、その他は簡単に改善できるはず。にもかかわらず放置してあるのは、意識が低い証拠だろう。これほど汚れたスイートは、新横浜プリンスホテルのジュニアスイート以来。せっかくの明るいコンテンポラリーな雰囲気が台無しだ。