ANAインターコンチネンタルホテル東京 Imperial Suite |
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ANA InterContinental Tokyo |
2008.09.20(土)
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東京都港区 |
怒-2
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エトランゼ | このホテルは開業20周年を機に全館を改装したばかりだが、まだ新しさの感じられる客室を早くも改装するそうだ。全日空ホテルからインターコンチネンタルへとリブランドしたことで、よりインターコンのカラーを強く打ち出すというのが名目になっているが、出資しているファンドに対して見せ掛けの勢いを演出しているようにしか感じられないのはなぜだろうか。真意はわからないが、いずれにしてもまだ十分に使える設備を作り直すのだから、もったいないことは確かである。
24階から27階にある高層階客室のバスルームは改装を終え、壁面の一部をガラス張りにして開放感を持たせた。そしてこれから着手するのは、28階以上の高層階客室である。クラブフロアを28階から35階までの8フロアに拡張するに当たり、これまでクラブフロアでなかった客室をクラブフロア仕様に改装するに加え、クラブラウンジを34階から35階に移転し、規模もこれまでの3倍以上と日本最大級の広さにする計画だ。 しかし、それほど多くのクラブフロアが本当に必要なのだろうか。もしそれだけの需要があるとしても、クラブルーム数とラウンジの規模から察するに、エクスクルーシブな環境やパーソナルなサービスは崩壊してしまうだろう。そうなってはクラブラウンジは単なる無料飲み食い場でしかない。ホテルの品位を犠牲にしてまで改装することはないと思うが、もう決まったことならば、せめて居心地のよいラウンジと客室を実現してもらいたいものだ。 当初の予定ではこの夏の間に改装し、今頃はもう完成しているはずだった。しかし、予定は延期されており、11月か12月の着工になる見込みらしい。そうなると、今度の年越しはクラブフロアがないということも考えられる。例年賑わいを見せていた正月のホテルイベントもほとんどが中止され、正月プランは単なる食事付きパッケージのような魅力のない内容になるようだが、それでは毎年の年越しをこのホテルで過ごして来た常連を数多く失うことになるだろう。最近のインターコンチネンタルは何を考えているのか理解に苦しむ。 このホテルの35階にはインペリアル、ロイヤル、アンバサダー、プレジデンシャルの4つのスペシャルスイートといくつかのレギュラールームがあるが、クラブラウンジ移転で大規模な改装が行われ、現存のスイートは今が見納めとなる。なくなる前にもう一度インペリアルスイートを利用してみたいと思っていたが、今回その機会に恵まれた。 インペリアルスイートの面積は184平米。メインエントランスを入ると、レギュラールーム3室分のリビング・ダイニングルームがる。大理石の床に大胆な柄を配した厚手のセンターカーペットが敷いてあり、全体が開業当時からの淡いカラースキームでコーディネートされている。色合いはやわらかくても、三角形に張り出した窓のエッジや、多用したミラーが室内を複雑に見せ、都会的な躍動感を与えている。いささか古めかしい印象のインテリアだが、最高級スイートらしい凝った意匠が数多く見られるだけでなく、時代の変遷が感じられ、なかなか興味深い。 リビング・ダイニングの一番奥にはパントリーがあり、そこにも廊下に通じる出入り口がある。パントリーにはミニキッチンや冷蔵庫の他、レストランで使うようなショーケース風ワゴンがあるが、食器類は備えていない。ダイニングセットは8人用で、テーブルは大理石製。卓上にレースの敷物を添えているのが昔風だ。デスクの上には真鍮製のシャンデリアがあって、開業当時はモダンな部類だったのだろうが、今では懐かしさを漂わせている。 ダイニングセットと反対側にはどっしりとしたソファセットを据え、ダイニングとリビングの中央にグランドピアノやAVのアーモアを設置。ピアノは開業以来、年に3回の調律を欠かさなかったようだが、記録によれば2008年3月6日を最後に調律は行われていない。アーモアのテレビは28インチのブラウン管。オーディオはバング&オルフセンだが、カセットプレイヤー付きの旧型モデルである。 天井高は最高部で290センチとゆとりがあり、窓も通常階よりも高さがあるのだが、カーテン生地が厚い上にまとまりにくく、完全に開いても幅を食っているため、窓の両脇が隠れてしまうのが残念。加えて、カーテンがすってんてんなのが気になった。カーテンは電動式で、照明はそれぞれ独立して調光が可能で便利だが、部屋の一部が非常に暗く、不自然な印象がある。 リビングの次の部屋は書斎兼パーラーである。ミニバーはダイニングルームではなく、この書斎に用意されている。部屋の中央にソファセットがあり、壁に埋め込まれたAVラックの方に向けてセットされている。テレビはリビングと同じ28インチブラウン管で、オーディオはアナログのレコードプレイヤー付きのレトロなモデルが今でも置いてある。デスクはさほど大きくもなく、その後ろに置かれた扉付きの棚には何のオブジェも飾られておらず、ちょっとつまらない。この部屋にも廊下への出入り口が設けてある。 続く寝室には140×200センチサイズのベッドが2台並んでおり、デュベやスローケットなどは最近のスタイルに改められている。屏風のような衝立とオットマン付きソファは、窓際ではなく廊下側の壁近くに設置。ベッドと対面する壁には、一面に収納が用意されている。寝室のテレビは22インチの液晶だが、大型の家具が揃う室内では、とりわけ小さく感じられた。寝室も照明のバランスが悪く、特に夜の窓際が暗い。本来はスタンドがあったに違いないが、故障か何かで撤去されて以来、補填されていないものと思われる。書斎と寝室のカーペットは比較的最近新調されたようだが、元来のインテリアとはマッチしないことも気になった。 バスルームはこのスイートの最も奥にある。窓際はカーペット敷きで、収納棚と大理石製のメイクアップカウンター、そしてダブルのベイシンが設置されてる。寝室との間の扉と通路が他の扉よりも6センチ狭いのだが、差がわずかにもかかわらず、かなり細く感じられるのが興味深かった。 バスルーム内は20平米ほどの広さがあり、チョコレート色の天然石で仕上げた風格ある空間だ。ジェットバス機能を備えたバスタブは142×192センチという特大サイズで、ふたつのカランを持っている。バスタブの周囲3方はミラー張りで、天井にも縁と同じ天然石が張ってある。シャワーブースは140×95センチの広さ。左右にそれぞれ固定シャワーとハンドシャワーが設けられているのがユニークだ。いずれのシャワーも水圧が強力で心地いいが、ブースの扉の隙間からかなりの水が外に流出する。 浴室金具はいずれも金メッキが施され、ゴージャスな雰囲気。アメニティはRENで揃え、スキンケアアイテムも充実している。バスルーム内トイレは扉で仕切られているが、配管が古いからか、下水臭がかなりきつかった。その臭いはバスルームだけでなく、ベッドルームまで漂ってくる。また、バスタブの縁は階段になっており、そこには滑り止めのためにバスマットが敷き詰められているのだが、そのバスマットには前の客のものと思われる足跡が多数残っていた。前客は相当に足が大きかったようだ。 お名残惜しくスイートでのひと時を満喫したが、それと同様に現在のクラブラウンジもまたこれで見納めになるかもしれない。滞在中、ラウンジが混雑する状況に遭遇することはなかったが、雰囲気を乱す客に辟易した。朝食時にはシャンパンやフレッシュスクイーズジュース、山盛りのブルーベリーなど、ラウンジの朝食としてはなかなかの充実度だ。 落ち着いたいい雰囲気のラウンジに、一人のフランス人がやって来た。彼は終始携帯電話で通話している。声がラウンジ中に響くのでそれだけでも迷惑だが、人には急ぎの用というものもあるだろうと我慢。ところが、今度は通話をしたままブッフェ台で料理を取り分け始めた。片手には携帯電話を持っているので、料理を取り分けるのは空いたもう片方の手。 通話に気を取られていると見え、スクランブルエッグは床にベッチョリこぼすし、ベーコン用のトングは床に落とすし、騒々しいし見苦しい。更に信じられないことに、落としたトングを拾い上げると、元の位置にそのまま戻した。その後もずっと挙動不審で、何かヤクでもやっているのかと思うようだった。空間の雰囲気をぶち壊すのはいとも簡単であるが、逆にそれを上品に保つのは難しい。 |
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ANAインターコンチネンタルホテル東京(公式サイト) | |
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