ANAインターコンチネンタルホテル東京 Club InterContinental Corner Suite | |
ANA InterContinental Tokyo |
2009.04.04(土)
|
東京都港区 |
哀-4
|
|
|
広いだけのラウンジ | ANAインターコンチネンタルを訪れるのは正月以来。さほど間が空いたわけではないが、このホテルにはその間に大きな出来事があった。それは国内最大級のラウンジを備えたクラブインターコンチネンタルフロアのリニューアルオープンである。
新しくデザインされた客室とともに、東京のアクティブな滞在をサポートする体制を整え、長期にわたる改装を完成させたのはこの2月。少々出遅れたと言えなくもないが、そろそろ落ち着いてきた頃あいではないだろうか。そう思いつつ期待に胸を膨らませチェックインした。 到着は大変スムーズだった。メインエントランスで事情を心得たドアマンに迎えられ、そのまま35階の新しいラウンジへと案内された。エレベータホールは艶のあるブラックやブロンズ色を基調に、ブランドブティックのような趣を感じさせており、黒地に金のロゴがエクスクルーブな雰囲気を醸している。ラウンジに足を踏み入れると、まずはその広さに圧倒される。 レセプションエリアにはカウンターデスクがゆったりと配置され、専任のゲストリレーションズが、チェックイン・アウトの手続きだけでなく、滞在中のあらゆるサポートを引き受ける。ラウンジにはいくつかのエリアがあるが、大きく分けると3つのコーナーに分けられる。 まずは先ほどのレセプションエリア。続いてライブラリー、ヘッドセットでゲームも楽しめる大型ディスプレイ、マッサージチェア、さまざまな形状のソファが配されたくつろぎと楽しみのエリア。最後にドリンクやフードを楽しむバー&ダイニングのエリアだ。ほかにミーティングルームもあるが、個人的な宿泊ではあまり利用する機会はないだろう。 ダイニングエリアは混雑時以外、奥半分はクローズされているので、トータル600平米という広大さを実感する機会は、実のところ少ない。それでも、これまでのどのラウンジよりも広いことは確かで、これまで最大級とされてきたハイアットリージェンシー東京のラウンジが小ぢんまりと感じられるほどである。 だが、ホテルの特別階用ラウンジは、空港の待合ラウンジとは存在意義がまったく違い、ただ広くて快適ならばいいというものではない。いかにパーソナルなサービスと安心を提供するかが重要である。 ラウンジが広く、対象客室が多くなるほど、それぞれの客について把握するのは困難になり、サービスの目が行き届かなくなってしまうだろう。スタッフ同士の情報引き継ぎや共有も容易ではなくなる。それを打開するには、スタッフひとりひとりのスキルアップ、強固なチームワークに加え、十分な人員が必要となる。 ここのラウンジが手本としたに違いない香港のクラブインターコンチネンタルを例にとってみよう。ここほどではないが、香港のラウンジも広く、席数が多い。そこには、香港というビジネスとレジャーが高度に融合した世界屈指のディスティネーションで、旅慣れた客に磨きこまれた元リージェントの血統を継ぐ優秀なスタッフが、十分な人数で揃っている。 すべてが優雅にかつフレンドリーに行われるが、こちらから歩み寄るまで、スタッフは決して踏み込んで来ないだけの節度を保ち、必要にして十分、いや、それ以上のサービスを心得ているのだ。フードサービスは料理人が、カクテルはバーテンダーが、テーブルサービスは経験豊富な給仕が担当している。レセプションにいるのは、まさに有能な個人秘書であり、過去の滞在ではすべての困難を解決してくれた。 このチームワークとプレゼンテーションを手本とするのには大賛成であるし、同じチェーンに手本があるのは素晴らしいことだ。だが、単なる猿真似で客が納得すると思ったら大間違いである。まだスタートから2カ月足らずで良し悪しを決めつけるのは酷だが、今回見たところでは残念ながら順調とは言い難かった。 まずは客が多すぎる。これほど大きなラウンジに、収容人数を超えるほどの客が押し寄せては、くつろぎもムードもあったものではない。まるで劇場幕間のホワイエみたいなざわめきである。ティータイムはクッキーだけ。カクテルアワーのフードは、運ばれてくるなり人がピラニアのように群れてむさぼり尽くすので、いったい何が振舞われているのか、その残骸を見ることすらできなかった。 朝食はコーヒーマシンにすら長蛇の列。シェフが立ってオムレツなどのオーダーを受ける予定だったらしいが、どう見てもそれは成り立たないありさまだ。優雅どころかあさましいばかり。こんなラウンジなら、使いたくないと思った。異様な熱気でごった返すラウンジも、投資家には好調を示す証しに見えるのだろうか。これでは客もスタッフも不幸ではないだろうか。なんとも複雑で苦い思いがした。 利用したコーナースイートもまた新装されたばかりだった。写真で見た時はなかなか魅力的だと思ったのに、実際には印象が大きく違った。まずは部屋が臭い。新しい建物のにおいは好きだが、ここのは新しいにおいというより、安物の家具屋のような、頭の痛くなる臭いがする。 そして内装は実際になんとも安っぽいのだ。そう見せている原因は照明プランにもある。電球型蛍光灯がメインで、ハロゲンや白熱灯は少ない上に、調光ができず、連動して一括で消えてしまうものが多いため、ムードのコントロールがほとんどできない。 そこにきて、彩度の低い退屈なファブリックと家具が、室内を殺風景に見せている。シックで都会的というよりは、褪せた印象。その上、家具の配置が悪く、ゆとりより不足を感じる。同様にシックな内装はハイアットが得意であるが、ハイアットの方がはるかに心地よいのは、いかにシックであっても、ぬくもりを感じさせる要素が必ずどこかに含まれているからだ。 それでもリビングはまあ悪くない。余計なインテリアをうるさいと感じる人には、むしろ休まる色使いかもしれないし、広いデスク、L字ソファ、テーブルを挟んだふたつのイス、大型テレビ、収納棚と、必要なアイテムはきちんと揃っており、十分過ぎる間隔を持ってレイアウトされている。 だが寝室のレイアウトには閉口した。ベッドは2台。ハリウッドツインに並んでいる。本来なら両脇にナイトテーブルがあるはずだが、それをふたつとも同じ側に置いているのだ。ベッド脇にクローゼットがあるため、その前が十分に広くなるよう、「工夫」したつもりなのかもしれない。だが、それによって失われるバランス感と機能の方が深刻だった。見るからにアンバランスで滑稽だと、どうして思わないのか不思議である。客室係に手伝わせて、本来あるべき状態に戻したらスッキリした。 それでクローゼット前が窮屈になったかというと、そうでもない。まあ、十分に広いともいえないが、使いにくくて苛立つようなこともなかった。寝室には他にイスなどはなく、ベッド前と窓際はガランとしてさみしい。観葉植物とか壁にオブジェのひとつでもあれば、ずいぶんと印象は違うだろうに。 バスルームは不満ばかりだった。こんな使いにくいバスルームをデザインするとは、何かの嫌がらせかと思うほどである。ベイシンはダブルでスタンディングボウル型。高い位置でボウルに伸びるカランが何かと邪魔に感じる。トイレは独立しており、新型でこれはまあいい。一番不満なのは、洗い場付きのバスである。 バスタブは内側の幅が狭く、水深が35センチ程度と浅いために、しっかりと体を沈めることができず、なんとも窮屈で入り心地が悪い。洗い場の幅はわずか80センチとこれも窮屈。しかも、使いにくいシャワータワーを採用している。タオルやバスローブがふかふかで、アメニティがRENを揃えているのだけが救いだった。 これならば、既存のコーナースイートの方がいいのではないか。そう思って、翌日にはルームチェンジを頼んだ。クラブフロアには新しい内装のフロアだけでなく、以前のままのフロアも残っているのである。移った先の部屋は、これまでにも何度が利用しているので、特段目新しさはないが、不満だった小さなテレビが37インチ液晶型に入れ替わっている。 かつてはこの部屋も安普請だと思っていたのに、昨日の部屋から来ると華やかで立派に見えるではないか。リビングとベッドルームの遮光性とトイレの機能では新タイプが勝っているが、それ以外は旧タイプに軍配があがる。汚れていたカーペットなどのファブリックは新品同様にクリーニングされているし、バスルームの使い勝手はこちらの方がはるかにいい。 普通は、古いタイプの欠点を踏まえて、よりよい客室を作るものだと思うのだが、インターコンチネンタルは、全日空ホテルとして積み上げたものを引き継ごうとはしなかったようだ。これをエゴととらえず、何と解釈すればいいのだろう。 |
|
|
ANAインターコンチネンタルホテル東京(公式サイト) | |
以前のレビューはこちら→ | 980103 020216 030817 031102 040612 040821 050428 050505 050828 051227 060430 060811 060815 060824 070506 070805 070904 071231 080614 080920 081231 |
公開中リスト
| 1992 | 1993 | 1994 | 1995 | 1996 | 1997 | 1998 | 1999 | 2000 | 2001 | 2002 | 2003 | 2004 | 2005 | 2006 | 2007 | 2008 | 2009 |
| ホテル別リスト | レストラン別リスト | 「楽5」「喜5」ベストコレクション |