東京全日空ホテルでは全客室の改装が完了したが、そのうち最も大幅に手が加えられたのが、エグゼクティブフロアだ。フロアも32階から35階までの4フロアに拡大され、エグゼクティブルームが増えた。これまで申し訳程度の存在感だったエグゼクティブラウンジも、面積を大幅に広くし、提供するサービスを充実させた。チェックインにはラウンジの他、フロント脇のエグゼクティブメンバーズカウンターも利用でき、客室でのLAN接続、すべての有料チャンネル、6階フィットネスセンターの利用が無料となり、ビジネスセンターやランドリーの利用が優待されるなど、付加価値も高くなった。
今回利用したのは、32平米のスーペリアツイン。入口を入ると木目に囲まれたホワイエで、クローゼットがある。シックで高級感のある仕上がりだが、スポットの照明と雰囲気を出すための間接照明だけで、出かける前の身だしなみをチェックしたりするには暗すぎる。クローゼット内も同様に暗い印象だった。
続く居室はよくできている。限られた空間を生かしたレイアウトは、使いやすさだけでなく、変化に富んだ個性をも巧みに演出している。三角に張り出した窓際には、ベンチ風のソファを据え、ソファ脇の引き出しには金庫が収められている。ベンチは片方が幅広になっており、三角形のエッジをより強調するシャープなデザインだ。添えられたクッションの赤、壁のアートの赤が、それぞれ力強いアクセントになっている。
デスク周辺も機能的に仕上がっている。デスクには白い天板があしらわれ、広々と使えるのがいい。LANのジャックやコンセントも便利な位置にある。テレビは液晶だが、やや小さい。その下には引き出し。ミニバーキャビネットを窓に近い位置に持ってくることで、ありきたりなレイアウトから脱している。
ベッドはシモンズ製でデュベカバーを使った仕上げ。ヘッドボードは白いレザーで、ベッド周辺の装飾にも高級感を持たせている。また、コーヒーテーブルに置かれた小さな植木が、生き生きしたイメージを感じさせる。他の客室同様、照明効果が非常に高く、コントラストのはっきりした都会的な空間だ。だが、昼間見ると、木目部の手垢汚れや、不自然なテカリが気になる。デザイン性は優れているが、果たしてメンテナンスに向いているのかは疑問。常に清潔で快適な状態に保つのは、なかなか大変そうだ。
バスルームもユニークに仕上がっている。全体にマットな石を使い、高級感もあるが、居室同様、機能的な使い安さが気に入った。こぢんまりとしたベイシンにはスツールを添え、脇の棚やベイシン下のなど収納箇所も多く確保した。バスタブの脇には小型のテレビを設置し、サーモスタット付きカランを備える。
シャワーブースには扉があるが、バスタブとの間にはガラス壁がなく通じており、開放感がある。シャワータワーはレインシャワー、ボディシャワー、ハンドシャワーとマルチアクションだ。居室側の壁を磨りガラスとすることで、自然光が入るスタイリッシュな空間になった。アメニティはラテデュールを揃えている。
エグゼクティブラウンジは、エアライン系ホテルだけあって、空港内ラウンジを思わせる雰囲気だ。セクションごとに雰囲気が分かれており、食事に適したテーブルのコーナー、ゆったりとくつろげるソファのコーナーなど、目的に合わせて好みの場所を見つけられる。雑誌も豊富に用意され、自由に閲覧できる。
日中はケーキやチョコレート、カクテルアワーには各種フィンガーフードが用意される。カクテルなどアルコールを含め、すべてセルフサービスだが、シェイカーなどバーグッズも用意されているので、自分で作る楽しさがある。朝食はスクランブルエッグ、ホットベジタブルなど、温かい料理も揃い、なかなかの充実だ。スタッフは常駐しているが、こちらから頼みごとをしなければ、積極的に接してはこないので、適度に放って置かれたい人には適している。しかし、接客の技術は高く、洗練されている。
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