その理由は、客を乗せて正面玄関に到着した際、下車した外国人客はスタスタと館内に入ってしまったが、荷物がたくさんあったのに係がそれに気づかず、結局運転手自らフロントまで運ぶハメになったかららしい。この程度のことは毎日のようにあちこちのホテルで繰り返されているように思うが、その運転手にしてみれば大事件だったのだろう。そして客に体験を繰り返し語るわけだから、一度の失態がいかに尾を引くかを考えると恐ろしい。

そんな話を聞きながら到着したハイアットリージェンシー。偶然にも前回このホテルに来た時がまさにそのような状況だったが、今回は同じ失敗を繰り返しはせず、「前回は大変失礼いたしました」と早速詫びがあった。

チェックインを済ませ、まずは「おんぼらあと」で大海老天丼ランチ。一休みの後、屋内プールへ出向いたが、珍しくデッキチェアも満席で、プール内はイモ洗いの賑わいだったため退散。見るとどうもアジア系外国人が多いようだ。クラブラウンジもまた、いつになく混雑しているが、どうもクラブフロアの客ではない様子。団体客の特典か何かでラウンジアクセスを可能しているのかもしれないが、イスを輪にして並べ、大酒くらって騒いでいる様子は、非常に下品で迷惑だった。

翌日のランチは「カフェ」で。チキングリルを注文したのだが、出てきた料理は冷え切っていた。係を呼ぼうにも目の前を勢いよく通り過ぎるばかりで、声を出しても手をあげても気付いてくれない。やがて水を注ぎに来た係に責任者を呼ばせ、慌ててやって来たマネジャーに「これはバンバンジーか」と文句。すぐに作り直すと頭を下げ、実際2分後には新しい料理が運ばれてきた。

だが、冷めた料理と一緒にカトラリーも片付けられてしまっていたのに、運んで来たマネジャーはそれに気付かず立ち去ってしまった。再度係の注意をひこうと努力するのだが、先ほど同様に目の前を通り過ぎるばかりで、だんだん腹が立ってきた。手で食えというつもりか。

そうこうしている間にも、少し離れたところにある柱の陰で「あそこの客がさぁ、メニュー内容の説明がないとかって、怒っちゃってるんだよね」と、別のテーブルの客について話題にしているが、客に聞こえるところで交わすには不適当な表現が多い。もう我慢がならず、食事を中断して店を出た。その後、店の責任者が宿泊のアシスタントマネジャーを伴って部屋に謝罪に訪れた。

こうした状況は日常的に繰り返され、多くの客が冷めた料理を食べさせられていると思うが、現状を把握しているのかと尋ねたところ、歯切れの悪い返答。ただ目の前の不手際に頭を下げて回るだけでなく、なぜこうなったのかの原因を究明しなければ、店はダメになってしまうだろう。

性懲りもなく、夜にまた同じ「カフェ」を利用したが、今度はさすがに配慮を怠らなかった。だが、十分な注意をもってして運ばれた料理も、満足のいく出来栄えではなかった。デザートは1品1,320円も取るのに、その半額の価値も感じられないのが残念。店内もだいぶ薄汚れてきた印象があり、オープンから4カ月でちょっと気が緩んできた感じが否めない。

チェックアウト日のランチは「佳香」で弁当。華やかで女性好みする内容。実際に客の9割は女性だった。

滞在中、文書を中国語へ翻訳する必要が生じ、コンシェルジュに中国語に堪能なスタッフはいないかと尋ねたところ、韓国語ならいるが中国語には対応できないとの返答だった。翻訳のスペシャリストを紹介してもらうことも考えたが、文書が短いことに加え、急を要していたので、もう少し身近なところに解決策を見つけたかった。だが、コンシェルジュはそれ以上の知恵を絞ろうとはせず、簡単に諦めた。

中国料理店に中国人スタッフはいないのか尋ねると、「いるにはいるが、そうしたことには対応できない」とあっさり。とりあえず電話で聞いてみてくれと頼むと、逆にあっさりとＯＫ。原稿をコンシェルジュに託したところ、1時間後には翻訳文が届けられた。もちろん、後日、この中国料理店にご馳走を食べに出掛けることを怠りはしなかったが、それにしても何とも頼りないコンシェルジュである。