この日も車で到着した際、やや離れたところにいたドアマンは、遅ればせながらも気付いて駆けつけてくれた。そして、明るくにこやかに出迎えると、荷物を持ってベルガールへとスムーズに引き継いだ。その際、名前を伝達することも怠らなかった。これが高級ホテルの標準的サービスというものであり、別にほめるには値しない。当たり前なのだ。だが、かつてを思うと拍手をしたくなる。

ところが引き継がれたベルガールは何かと不慣れだった。テーラードスーツの入ったハンガーは床に引きずるし、「リージェンシークラブへ」と言っているのに「一度フロントへ」と強引だった。そんな彼女の後には続かず、そのままエレベータホールへと進み、9階のレセプションへ向かった。

そこでは、ちょっとした問題が発生した。予約が見つからなかったのである。いつもなら予約確認メールないしプリントを持参するのだが、この日に限っては持っていなかったので、もしかするとこちらの手違いで予約したつもりが入っていなかったのかもしれない。だが、スケジュール表にはプランの内容や料金まで記入してあるので、予約し忘れたとは考えにくいのだが、予約確認書類を持ち合わせていない以上、強くは言えない。

レセプションの係にも予約したはずのプランや料金を伝えたが、係は「お部屋のご用意は可能ですが、通常料金のご案内になります」と言われた。もうプランは売り切れなのかと思ったが、こっそり携帯で検索したら、まだ売っているではないか。それなのにラックレートで売りつけようとは、相手もなかなかやるもんだと感心したが、よくよく話を聞いてみると、どうもプランの予約の入力方法がわからないらしく、予約課に何度も電話を入れて「アンダーコード」なるものを聞き直していた。

また、以前の宿泊について、ゴールドパスポートのポイント加算に誤りが見つかったのだが、それについて尋ねてもチンプンカンプンという反応で、何とも頼りない印象だった。

やっとチェックインが済み、部屋に落ち着いてから、早速フィットネス＆プールに向かった。土曜日の午後だからか、プールが特に賑わっていたが、子供連れではなく、ほとんどが40代の女性たち。のんびりとジャクージに浸かったり、ストレッチ感覚でゆったりと泳いでいる人が多いので、人数が多い割には雰囲気は崩れていなかった。

スイミングの後、ロッカールームに戻ってシャワーを浴び終わったら、ちょうどロッカーメンテナンスのために係が入ってきた。ただでさえ狭く、ロッカー周辺は人がすれ違うのがやっとなのに、そこに係がふたりも来ると息苦しいほどだ。それなのに係はお構いなしに自分の仕事をしている。客の邪魔にならないことが基本なはずなのに、なんと無神経なのか。「それは今やらなければならないことなのか」と問いかけると、やや口ごもって「いや・・・」という反応だったので、ならばと出て行ってもらった。

夕食前にはラウンジで一息。土曜日でもここのラウンジは空いている。きっと同じこの時間、隣のヒルトンのラウンジは超満員だろう。そして、時間になったところで、予約してあった「翡翠宮」へ。店内に混雑の様子はなく、サービスには余裕が感じられ、快活で笑顔も溢れている。

しかし、やはり料理の提供にはかなりの時間を要した。3皿目の料理が出た時には1時間が経っており、テーブルの状況に合わせて料理提供のタイミングを調整しようとは微塵も思っていないことがよくわかる。上海蟹は痩せて小さく、食べるのも哀れという感じだった。インテリアは今風で悪くないが、テーブルからバックヤードにある青いバケツ型ゴミ箱が丸見えで興ざめする。今回は、何かとデリカシーのなさを感じさせる滞在だった。