日曜日のディナータイムは心地よい賑わいを見せていた。店の様子は以前と変わらないのに、楽しい雰囲気が増したような気がする。ちょうどオーストリアの新酒ホイリガーのシーズンだったので、それを存分に味わうために組まれたコースを注文した。

カレー風味のオイスターグラタン、栗のスープ、平目のあさりソース、牛肉の赤ワイン煮込み、温かいタルトタタンと、定番の料理が続々登場する。けれんがないので、ごまかしもきかないが、いずれもいい料理だった。散々食べて飲んで喋って、気が付いたら夜も更けていた。店の外に出ると、思わず震えてしまうほど寒かった。

それから都心に戻り、シェラトン都ホテルに4泊。締め切りが迫った作品を仕上げるために、缶詰になる予定になっている。でも、作業は翌日からにして、今夜はワインと食事の余韻を楽しむことにしよう。サッと入浴して、ベッドに入ったが、やっぱり寒い。この日の最高気温は12度しかなかった。深夜にはもっと下がっているのだろう。なのに、ホテルの空調はまだ冷房設定なのだ。オフにすることの出来ない古いタイプの操作盤なので、最高温度に設定して眠ったが、それでも寒くて凍えそうだった。

翌朝、部屋をしみじみと見回してみた。初めて利用するタイプではなく、以前からアンバランスだと感じていたバルコニー付きの部屋。36平米のデラックスルームは、それなりに均整が取れ、インパクトも持ち合わせた内装に仕上がってる。だが、40平米のバルコニー付きラグジュアリールームは、どうも殺風景だ。デラックスにはミラー部分やライトアップされた観葉植物があるのに、それより上位のこの部屋にないのはなぜだろう。庭園や池を見下ろす広いバルコニーは確かに魅力的だが、それよりは室内で過ごす時間の方が圧倒的に長いのだがら、室内にこそ工夫をしてもらいたい。

ベッドはハリウッドツインだが、なぜかベッドが窓の方により過ぎていて、窓側のナイトテーブルがカーテンを圧迫してしまっている。もう少しベッド全体を室内側にずらしても問題ないのに。そして、照明プランがとても片寄っており、暗いところは本当に真っ暗だ。もっとバランスよく、そして効果的に照らせないものか。さらに、でかいイスばかり並べて、デスクはキッチンの隅に置くような小さなものというのもアンバランス。ふつうのソファセットと大きめのデスクを導入した方が、幅広く使いやすい部屋になるだろう。

不必要に大きくて場所ばかり取っているアーモアだが、中に入っているのはブラウン管テレビだ。古いものを活用しているのならまだしも、なんと2006年製とあるではないか。なぜこの時期にブラウン管テレビを新しく買ったのだろう。液晶ならばもう一回り大きいものを入れられたのに。何を考えているのかよくわからない。

滞在中の清掃は、概ね1時間以内に手際よく行なわれるので、時間が無駄にならずにいいのだが、担当する人によって独自のスタイルのようなものがあるらしく、ベッドメイクや備品の置き方などに微妙な違いが見られる他、丁寧さや端整さにも差が感じられた。

相変わらず気温が低いのに空調からは冷風が容赦なく吹き付けるので、滞在中は設定温度を最高にしたままにしていたが、最終日の朝、今度は汗だくになって目が覚めた。なんと、眠っている間に全館の設定が暖房に切り替わったらしい。それなら一言教えてくれればいいのに。殺す気か？