ゴールデンウィークも過ぎ、新緑と呼ぶにはいささか葉の色が濃いが、心地よい風を感じながら庭園を散策するにはもってこいの季節になった。庭にはせせらぎもあり、エサをついばむ水鳥の姿がひとときの安らぎを与えてくれる。瑞々しい葉を茂らせた枝の間からは、ミノルヤマサキ設計のホテル棟が望めるが、この環境とも見事に調和した建物だと、改めてそのデザインの秀逸さに感嘆させられた。
この日、ロビーに足を踏み入れてまず最初に驚いたのは、エントランス脇にあるソファとイスを見た時だった。いつもなら、全体のトーンにちゃんと調和した水色とダークウッドの肘掛け椅子があったはずだが、それがどういうわけだか昔ながらのピンクのイスに置き換わっていた。そのイスそのものが悪いわけではないのだが、布地といい木肌の色といい、どう考えてもその周囲のテイストとは溶け合わない。とりあえずなのかもしれないが、この場所にこのイスを置いても恥ずかしいと思わないセンスの悪さに寒気がした。
また、客室でもトラブルが続いた。重なる時は重なるものないかもしれない。まず、BGMの装置の調子が悪く、音楽が鳴らなかった。このホテルのBGMは、ラジオの他にジャズやヒーリングミュージックのチャンネルがあり、室内でくつろぐのにピッタリなので、結構気に入っている。それが鳴らないのは困るので、早速客室係に様子を見てもらったが、すぐには直りそうもないということで、ルームチェンジをすることになった。
次の部屋ではベッドにライトが電球切れ。加えてナイトテーブルに載ったガラス板の汚さが目に付いた。そこで疑問に感じたのは、清掃後のインスペクターは、いったいどこを見ているのだろうという点だった。しっかりチェックできていないのなら役不足だろうし、この程度でよしとしているようではそれまでだ。GMが外国人になってから、比較的頻繁に利用していても、訪れる度に新しい工夫が見受けられ、どんどん進化してゆくという印象があり、それはそれで大変に好感の持てることだが、基本的なことがお粗末では、どんな工夫も霞んでしまう。
つい先日もルームサービスの充実ぶりに目を見張り、テレビチャンネルでMTVやムービーチャンネルが無料で見られるようになったことに感心したが、清掃の粗雑さが相変わらずでとても残念。付加価値を追求するばかりでなく、当たり前のことをきっちりとする姿勢も強く持って欲しい。
それから、これも毎度感じることだが、せっかくのスーパーベッドのベッドメイクが乱雑だ。ベッドのスカートはあさっての方を向いていることもしばしばだし、シーツもベッドの左右に同じ長さで垂れていない。廊下ですれ違う客室係の態度から想像するに、彼女らは一生懸命に仕事しているようだ。見れば年配の女性も少なくないから、要求される生産性と体力とにギャップがあり、粗雑にせざるを得ないのではないかと推察する。また、掛け布団の足下のほうをマットレスに巻き込み過ぎているようで、ベッドに横になった時に布団が胸のあたりまでしかこない。肩が出ないように布団をかぶりたい人間にとっては、非常に使い勝手の悪い状態になっている。なんでだろう。
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