前回は苦い思いでホテルを後にしたが、今回は満足することができた。同じホテルであっても、その時々で体験する事柄がまったく違ってくるので、結果的な満足感はチェックアウトするまでわからないものだ。また、担当する係によっても差が生じるのは、人間が関わることゆえ、やむをえない。むしろ、毎度計り知れないところが、ホテルのおもしろみでもあるのかもしれない。まあ、プライベートな時はそれで結構でも、ビジネスの時は安定していてくれないと困ってしまうのだが。
車で到着した時、ちょうど前にバスが停まっていたが、程なく出て行った。ドアマンは、そのバスの乗客の荷物を扱い、バスを見送っていた。バスが出て行くと同時に、車を正面に移動したが、ドアマンはタイミングを失ったのか、なかなか対応してくれない。仕方なく自分で扉を開け、荷物を降ろすよう頼むと、いささかトゲのある返事をし、乱雑に荷物を扱った。それを見て不愉快に思ったが、気を取り直してそのドアマンの様子を観察してみると、どうやら悪気はないらしい。今風の若者という感じで、単にぶっきらぼうなだけの気のいい兄ちゃんだった。ベレー帽と皮風のロングコートの制服はモダンでカッコいい。
改装を終えた1階フロントは、背後にあるスクリーンに間接的に映像が映し出され、イギリスのSFドラマ「謎の円盤UFO」に出てくるシャドーの長の執務室を髣髴とさせる。フロント係は手際がよく、スマートな印象だった。カウンターの前では、アシスタントマネージャーが立っているところをよく見かけたが、引っ込んでばかりいないで、積極的にゲストの前に顔を出しているのは好ましい。
客室は高層階を希望していたら、最上階になった。最上階にはトップスイートがあるためか、廊下の絨毯や壁紙が、他の改装済みフロアとも違っている。室内の仕様はほとんど同じだが、若干の差がある。まず、最上階だけは数十センチ外に張り出した出窓になっている。眼下には庭園と森を望むが、森の眺めは低層階の方に軍配が上がるだろう。高層階とて、それほど眺めがいいわけではなく、周辺のマンションや学校ばかりが目立つ。
最上階は、他の階に比べて天井が高くなっているホテルは多いが、このホテルはその逆で、最上階だけ天井が低い。天井高を取るか、出窓を取るかの選択という感じだ。また、最上階には窓の両脇にあるこげ茶の格子がないので、すっきりとした印象であるとともに、デスクとセットになっている肘掛け椅子の背後が広く使えてよい。また、8階では観葉植物の鉢に備わっていた間接照明が、この客室にはないなど、装飾的な部分が若干省かれ、より落ち着いたテイストに仕上がっている。
前回利用できなかったLANは完成していた。滞在中は無料でアクセスでき、アクセスの方法も手軽で利用しやすいのが気に入った。今後、このサービスは、ホテルにとってなくてはならないものに変わってくるだろう。バスルームは、8階の客室と同等だった。しかし、この客室に限っては、シャワーヘッドを自分の方に向けてセットしても、ホルダーがゆるくて固定ができないので、すぐに首があさっての方を向いてしまい、とんでもない方向にお湯が飛散して困惑した。結局、終始自分でシャワーヘッドを持ったまま使用しなくてはならず、大変不便だった。
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