悪いことは続く。日本一信頼できるインターコン東京ベイのドアマンが、この時に限って正面玄関に不在であった。トランクから荷物を降ろし、誰かが来るのを待って見たが、これ以上は寒くていられないと感じるまで、誰も現れなかった。中に入るとベルガールが2人いるではないか。ドアマンが持ち場を外している時くらいは、ボケッとせずに玄関に注意を払ってもらいたい。

クラブフロアでのチェックインはスムーズだった。ラウンジに客の姿はなく、眩しいほどの日差しが注ぎ込み、穏やかな雰囲気だった。用意されたのは、いつものベイビューデラックスルームだが、壁紙とソファのファブリックだけが新調された部屋だった。まだ新しくして間もないはずだが、すでに擦り切れや汚れが生じている。安売りで稼働率が高い上に、客層の低下で部屋の使われ方が乱雑になった影響は少なくないだろう。

ランチを食べようかと思ったが、夕食には「エイジアンテーブル」を予約してあったので、今あまりヘビーなものは食べたくない。かといって、適当な店がなかったので、ランチ抜きでディナーに備えることにした。

夕刻、久しぶりにラウンジのカクテルアワーに顔を出した。最近は、いつも混雑しているとわかっているので、避けるようになっていたのだ。やはりこの日も混雑しており、ほとんど満席だった。しかし、最初から長居をするつもりはなく、食前酒代わりにグラス1杯の飲み物をもらって、すぐにレストランへと向かった。

3階には3店のレストランがある。日本料理「分とく山」、グリル＆バー「C4U」、そしてアジア料理「エイジアンテーブル」である。このうち開業当時からあるのは「エイジアンテーブル」だけだ。この日、「C4U」は結婚式の二次会が催されており、3階ロビーまで爆発的な盛り上がりようが響き渡っていた。

「エイジアンテーブル」の店内は落ち着いていた。照明がおさえられ、東京湾やレインボーブリッジの夜景が、湾曲した窓に大きく映える。だが、以前のこの店は落ち着きとは無縁だった。いつも多くの客で賑わい、高揚感のある活気が漲っていた。それと比べると、ムードある落ち着きというよりは、廃れた陰気さにも感じられる。

料理はアラカルトで注文した。一品ごとにタイミングを見計らって提供される。食べ慣れた品であっても、以前ほど美味しいと感じないのは、気のせいだろうか。メニューで一番高い商品でもある海鮮鍋は大失敗。具は蟹だの貝だのいろいろ見栄えよく揃えているが、どれも痩せて貧弱だし、肝心な鮮度が悪く、食べられるところはほとんどなかった。

デザートも面白みがないし、締めくくりのコーヒーも、この程度の店で924円も取るとは高すぎ。基本的にアジアの屋台料理の延長だと思うと、料理の価格は相場の数倍に感じる。総じて印象は悪く、支払った金額の半分の価値すら感じなかった。大好きな店だったので、とても残念だった。この店もまた、近く姿を消すことが決まっている。