10ヶ月ぶりのインターコン東京ベイは、少しも変わっていなかった。20階のクラブフロアレセプションに案内されると、そこには懐かしい顔ぶれのゲストリレーションズやバトラーが待ち構えており、まるで戦地から戻った兵士を迎えるように熱烈歓迎してくれた。中には初めて見るスタッフも数人いた。だが、彼らもまた旧来からのスタッフに馴染んで、このホテルらしいサービススタイルを受け継いでいる。これなら安心して滞在できるだろう。やはりここは第二の我が家だ。

客室はいつも通りのデラックスベイビュールームが用意された。41平米の面積があり、レインボーブリッジを真正面に臨む、東京でも屈指の景観を誇るナイスビュールームだ。とりわけ夕暮れからの刻々と表情を変えてゆく時間帯が一番美しい。

だが、室内は開業から10年以上が経過し、傷みが目立つようになっている。特に壁紙やソファのファブリックが顕著で、痛々しさが漂う。ひとつには日当たりがよすぎるために、日光による劣化が速いのだろう。さらに、ベイビュールームに禁煙室を持たないために毎度消臭対応で用意してくれているが、壁紙にはヤニが染み込んでいて、それがくすみの原因になっているように思われる。

それさえ我慢すれば、広々としていながら落ち着いた雰囲気のあるいい部屋だ。ベッドはシモンズ製マットレスと真っ白なデュベカバーが快適。バスルームも広く、独立したシャワーブースと深いバスタブがあって、使いやすく心地よい。ターンダウンはリクエスト制だが、頼めば丁寧にやってくれる。

滞在中はいくつかのレストランで夕食をとった。「エイジアンテーブル」へは予約せずに出向いたが、「お久しぶりです」と再訪を歓迎してくれた。コースもあったが、ここはアラカルトで好きなものを注文する方が似合う店だ。キビキビしたサービスで、タイミングもよく気が付いてくれる。だが、肝心の味は、非常に美味しいと感じさせてくれた時期と比較すると、ありきたりで驚きのない味となり、随分と落ちたといわざるを得ない。

「ブルーベランダ」には、とうとう知っているスタッフがいなくなってしまった。特段不足があるわけではないが、初めて訪れる客と同様のサービスに終わることは、やっぱり寂しい。ブッフェ中心の店だが、アラカルトメニューからロコモコを注文してみた。手ごねハンバーグのデミグラス丼という感じだが、なかなかいい味だった。

3階の「アトーレ東京ベイ」は撤退し、新たにフィットネスルーム「B・Five」と「C4U」がオープンしている。フィットネスルームは小さいながらも、大きな窓からの景色やディスプレイの映像を楽しみながら、体を動かすことができる。「C4U」はスタイリッシュでカジュアルなバーレストランで、好みに合わせてオーダーメイドできるバーガーや、フルーツや野菜をたっぷり使ったスムージーやジュースのほか、気軽に楽しめる料理が揃っている。値段も手頃で、結構使い勝手のいい店だ。

クラブラウンジはあいからわず混雑している。カクテルアワーのオードブルにしても、朝食にしても、これまで見たことのない料理はひとつも並んでいない。マンネリ化しているので、もう少し工夫して欲しい。ラウンジのスタッフは、機敏によく働いているが、人数が少なく、物理的に追いつかないという場面がよくある。特に、朝食はたった一人で満席のラウンジを仕切っている。ピーク時はだれかがフォローに入るべきだろう。また、パンの味も落ちてきてる。焼き方は変えていないというが、おそらく生地そのものが変わっているように感じられる。

チェックアウトしてから、正面玄関で永遠のドアマンとしばらくおしゃべりをした。彼も今やドアマンのチームリーダーになった。そして永遠のバトラーはアシスタントマネジャーに昇格した。彼らに身に付いた貫禄が、この10年での一番の変化かもしれない。