2001.01.07
グランドホテルのロビー
ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル Club Superior Room
楽-3最近はこぢんまりとしたロビーをもつホテルが増え、邸宅風の落ち着きがパーソナルなサービスへの期待感を高めてくれるが、グランドホテル的なスケールの大きなロビーもまた魅力的だ。このホテルはメインエントランスを入ると正面に大きな階段があり、壁面に水が流れ落ちるアトリウム空間になっている。床には大理石が敷き詰められ、階段とその脇にあるデッキ風のコーナーそれぞれの壁面にもふんだんに大理石を使った。2階へと続くエスカレータが斜めにレイアウトされていたり、あえてシンメトリックにしていないことで変化を感じさせる。天井からは均等に光が当たるよう照明がたくさん埋め込まれており、なかなか居心地のいい空間だ。
そのロビー空間を思う存分眺めて楽しめるのが、1階「マリンカフェ」に隣接するテラスだ。ちょうどロビーの中央を向いてカフェテーブルと籐椅子が並んでいて、パティセリーでコーヒーなどのソフトドリンクやケーキ、サンドイッチといった軽食をセルフサービスで楽しむことができる。値段が手頃なのもうれしい。ロビーウエディングをやっているときや、披露宴がおひらきになった直後は雑然とした雰囲気になってしまうが、普段はゲストやホテルマンなどいろいろな人たちが行き交い、ピープルウォッチングに最適。そして石に反射して聞こえてくるホテルならではのいろいろな音が意外な癒し効果を発揮する。このテラスで一休みしたあと、自分の客室に戻ると、その静寂がロビーとのコントラストを感じさせ一層の落ち着きを生み出してくれる。窓から眺める港の景観まで、いつもと違って新鮮に見えるから不思議。
クラブラウンジで顔なじみのゲストリレーションズのみんながサービスに当たる姿を眺めて無料のコーヒーを飲むのも楽しいけれど、ちょっと人恋しくなったら館内をぐるっと散歩してテラスで休憩。小さなホテルでは味わえない変化の楽しみ方のひとつだ。開業当時からみると、徐々にレイアウトが変わったり余計な装飾が加わったりと、もともとの雰囲気が崩れてゆく傾向にあるが、ぜひともこの贅沢な空間をセンスよく保ちつづけてもらいたいと思う。そして、2階にあるグランドピアノの自動演奏だが、いつもいつも同じ演奏データを繰り返し流しており、しかもダサい選曲なので、もうひと工夫してほしい。何なら演奏データを提供してもいいんだけど。
今回は2001年に入って最初の滞在であったが、到着から出発まで申し分のないサービスで、終始快適に過ごすことができた。ターンダウンにやってきた学生風の若い女性がとても快活で、楽しそうな仕事振りが印象的だった。ほんの数分の在室で、とりたたて会話を交わすわけではないが、パソコンに向かって作業を進めるぼくの背後で丁寧にベッドを整えている気配からも、一生懸命さのようなものが伝わってきた。
2001.02.03
デュベカバー
ホテルインターコンチネンタル東京ベイ Club Deluxe Room
楽-2夜遅くチェックインしたので、すでにクラブラウンジはクローズしており、1階のフロントで手続きをした。フロントの前には数人のベルマンが礼儀正しく立っていたが、いずれも見たことのない顔ぶれだった。人影がまばらになったロビーでも、あたたかい笑顔をたたえて立っている彼らには、育ちのよさのようなものが感じられる。フロントカウンターにも見覚えのあるスタッフはいなかったが、コンシェルジュのマーリックがいたので、ほんの少しの間雑談を交わした。ただそれだけのことでも、このホテルにチェックインしてよかったと思える。
客室はすでにターンダウンが済んでおり、カーテンが閉じられやさしい照明に落とされている。窓際にたってカーテンを開くと、舞台の幕が上がった時のように景観に引き込まれてしまう。すでに用意されている加湿器やちょっと多めのバスソルトを見ると、なんとなくキモチが通じているようで、そばにだれもいなくても、誰かと一緒にいるような安心感をおぼえるから不思議だ。ベッドを見るとカバーが変わっていた。もっと濃い光沢のあるグリーンだったカバーが、薄いグリーンの薄い布地になっている。一瞬見たときはなんだか薄っぺらで安っぽくなったなと思ったが、よく見るとベッドカバーではなく表地に柄の入ったコットンのデュベカバーだった。毎日交換して洗うから清潔感があるし、表地が直接肌に触れても抵抗がない。それに伴いクッションがなくなった。
また、ナイトテーブルに並んでいた衛星チャンネルの案内や、スタンドに収納されていたプロモーションのチラシなどが一冊のファイルにまとめられるようになって、余計な印刷物が目に入らずスッキリとした。この夜はなかなか眠れなくて、窓際のソファに横になりながら、夜明けまでレインボーブリッジを行き交う車の流れを見つめながら物思いに耽ってしまった。
2001.03.01
リバーサイド
ホテルインターコンチネンタル東京ベイ Club Superior Room
楽-3予約を入れたのが午後10時過ぎで、すでに馴染みのある係はいないと考え、電話にでたフロント係に直接予約を入れたところ、リバービューの用意になるとのことだった。今回は単にベッドを求めてのことだったし、川側は絶えて久しく利用していなかったのでいい機会になった。
チェックインしたのは午前零時近かった。深夜になるとどこのホテルでもそうだが、従業員もテンションが下がってくるのか、手続きは事務的な色合いが濃くなってくる。部屋に入ってカーテンを開けるとうす曇の空に都心の明りが反射して、なんとなく不気味な眺めが目に飛び込んできた。ちょっと煙っているが大川端あたりの高層ビルがたくさん見えて都会的な雰囲気が味わえる。こんな天気だから仕方がないが、晴れていれば見事な夜景だろう。予約の際リバービューと聞いた時は予約を取り消そうかと思ったくらいだが、実際にカーテンを開けて眺めてみるとまんざらでもなかった。
ただ、比較的建物の先端に近い客室だったので川面がすべて見えたが、内側に寄るにしたがって隣のビルが邪魔になってくる。この位置でさえ、隣のビルは十分に邪魔だった。特に日中は日も差し込まず展望室やオフィスの人たちと視線があうことすらあるかもしれない。それでも朝日を浴びた夜明けの川面の美しさは、レインボーブリッジ側の開けた景観にも引けを取らず魅力的だ。両方のビューでどちらかが圧倒的に優れているというわけでなく、それぞれに個別の魅力がある。ここはおいしいビューをふたつも持つ欲張りなホテルなのだ。
2001.03.03
深夜のケンカ
ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル Club Superior Room
哀-2最近、クラブラウンジのカクテルアワーで振舞われる「週替わりスペシャル」がとても楽しみだ。盛り付けが美しく、ちょっとした軽食にもなる内容で、この日は鴨とフカヒレのパイ包みスープ、外国人が喜びそうなアボカドのお寿司、魚介のハーブ蒸しなど、横浜の特別階ラウンジでは群を抜いて充実している。この日は特に外国人が多く、ゲスト同士でも気さくに会話が弾んでいい雰囲気だ。このような国際色が味わえるラウンジとしては、関東周辺ではヒルトン東京、ロイヤルパークホテル、フォーシーズンズホテル、インターコンチネンタル東京ベイが代表的だが、外国人ゲストがのびのびとくつろいでいる光景がよく見られるラウンジの従業員は、サービス面でも他のホテルより長けていることが多い。
部屋に戻ってからデスクに向かい、仕事がひと段落着いたのは深夜2時だった。それからゆっくりとバスタブにつかり、ベッドにもぐりこんだのが3時半。さあ眠ろうと思ったら、隣の部屋から叫び声が聞こえた。あまりの声の激しさに初めは事件かと思ったほどだ。今回の客室はコネクティングルームなので、ドア越しに声がガンガン響いてくる。耳を澄まさなくとも隣には中国語を話す男女がいて激しい言い争いをしていることが伝わった。しばらくすれば収まるかと様子を見ていたが、30分経ってもまだ鼻息が荒く、こちらも痺れを切らしてアシスタントマネージャーにお願いをして注意してもらった。それと同時に、コネクティングルームはもうコリゴリだとフォリオに残してもらうよう頼んだ。
インルームダイニングのオーダー先が、ゲストサービスセンターからルームサービス専用ダイヤルに変わった。交換台になんでも一度に頼めるのが便利だと感じる人が多いのかもしれないが、ぼくは料飲について熟知している担当が電話を受けてくれるほうが安心できる。
オールデイダイニングの「マリンカフェ」が、改装してブッフェダイニング「オーシャンテラス」に生まれ変わった。ブッフェダイニングというくらいだから、もちろん朝・昼・晩とブッフェを最大の売り物として営業しているが、ブッフェ以外に軽食のセットメニューやデザートセットなどを扱う時間帯もある。今までの船のデッキのようなムードからは一転して、ブラックやクリスタルの雰囲気をベースに、シックで落ち着いた内装にすっかりイメージチェンジした。特にブッフェのディスプレイには工夫が見られ、とてもエキサイティングだ。改装にあわせて食器もほとんどが新しくなった。夜はぐっと照明を落としてオトナの雰囲気。今までのヨコハマインターコンチネンタルでは考えられなかったテイストの店が誕生したが、内装に限って言えばホテル全体の色調やコーディネートからはいささかはみ出た感が否めない。
店の入り口があるエントランスホール内には、ブラックなどのような濃い色調のものはかつてまったく目に入らなかったが、今ではこの店のサインと入り口を飾る蛍光灯の照明が、エントランスホール全体の調和を乱してしまったことは確かだ。しばらくすると慣れて気にならなくなるのかもしれないが、ちょっと残念。ランチとディナーの狭間の時間に、ニューヨークセットという軽食を注文した。シーザーサラダとベジタブルスープ、パン、コーヒーという構成だが、パンが普通のバケットだけでつまらなかった。シーザーサラダはまあまあだったが、全体的にあまりニューヨークという感じはしなかった。それにこのセットに限ってはちょっと割高な印象があった。
2001.04.08
海を見る部屋
ホテルインターコンチネンタル東京ベイ Club Deluxe Room
楽-2最近、このホテルに宿泊するときはいつも到着が遅い時間になる。まだドアマンが立っている時間だったので顔なじみのドアマンと軽く談笑してロビーに入れば、アシスタントマネージャーが「お帰りなさいませ」と声を掛け、エレベータホールへ向かうぼくの背中を見送ってくれる。このホテルが大のお気に入りで、住むような感覚で泊まっていた頃がよみがえってくる瞬間だ。いろいろな香水の残り香が入り混じったエレベータから客室フロアに降りると、こんどはこのホテルの匂いにふわっと全身を包まれる。カードキーで扉を開けると、東京湾の眺め。何度も何度も同じシーンを繰り返しているのだが、客室に入って初めて海が見えるというこの演出には、いつでも新鮮さを感じる。
食事は済ませてあったので、「ブルーベランダ」にコーヒーを飲みに行った。ディナーブッフェが終わり、後片付けが一通り済んだところだった。コーヒーだけじゃ淋しいからと、ミルフィーユも注文した。まず、運ばれてきたコーヒーを一口飲んでみて、味が格段によくなったことに驚いた。申し訳ないが、東京ベイもヨコハマも、コーヒーはあまりいただけないと思っていた。年中胃が痛いぼくには濃すぎて、いつでもお湯で薄めて飲んでいた。だが、こんどのは薄くなったわけではないが、スッキリと飲みやすくなったし、香りもいい。ミルフィーユは大きな皿にダイナミックに盛られ、楽しい一皿だった。
2001.05.19
コネクティングルーム
ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル Club Superior Room
哀-1町田で食事を済ませてホテルに到着したのが、午後11時頃。客室ではさくらんぼ4つのウエルカムフルーツと、隣りの客室へ通ずるコネクティングの扉が待ち構えていた。いつもならコネクティングの扉を見ると「今日も眠れないのか」と意気消沈してしまうが、今日はどうしたことだろう。その扉を見ても、いやな予感はしなかった。その扉を介して老夫婦の会話が聞こえてくる。他愛のない会話だが、よく聞こえる。それだけ筒抜けなのだ。しかし、その老夫婦は早寝だった。しかも出発が早かった。お陰でいつもの様に深夜に騒がれて安眠できないという事態は免れた。
前回宿泊した際に、コネクティングはどうかご勘弁とフォリオに残してもらうよう頼んであったが、このホテルではあまりそうした情報を活用していないらしい。以前にも触れたが、東京ベイなら一度頼んだことは次からきちんと反映される。ぜひ見習ってほしい。
昼の12時半に予約を入れてあったので、5分くらい前に店に出向くと、入口には大勢の人がごった返していた。予約なしで来た人たちは1時間待ちだと告げられ、ガッカリしながら下りのエレベータに乗り込む姿が目立った。我々も少々待たされて席へと案内された。店内はエントランス前の混雑と変わらない活気が溢れかえり、ゆったり優雅にという雰囲気はどこにも感じられなくなっていた。
サービスは懸命だが、まったく余裕がなく、気軽に声を掛けられないムード。座席の配置は席が客で埋まるとなおのこと窮屈で、トレーを持ちながら席の間を縫って歩くことすら容易でない様子。深く腰掛けているつもりでも、従業員が後ろを通りかかるたびに、背もたれにぶつかって軽い衝撃を感じた。また、従業員たちはベテランから研修生までが入り混じっており、スキルに相当の差が見受けられた。
料理はもうタイミングどころではないような感じで、やけに間があいたかと思えば、間髪入れずに運ばれて来たりとばらつきがあり、なんとなく落ち着かない食事だった。デザートのマンゴープリンは、冷蔵庫の味がしてガッカリしたが、それ以外の料理の味はなかなかだった。商売繁盛は結構だが、活気を通り越して、もはや気ぜわしい。サービスもこう雑では、ホテルのありがたみが感じられない。やはり、横浜でゆっくりと食事をしようと思ったら、平日の方がいいだろう。
2001.06.09
私はコンシェルジュ
ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル Club Superior Room
喜-4昼間の演奏会では、司会、ゲスト演奏、舞台監督と盛りだくさんの役を仰せつかり、いくら自分でタフだと思っていても、所詮カラダはひとつきりだから、結構目の回る忙しさだった。その上、気温が高く汗で湿ったシャツが肌に触れて気持ちがわるかったので、到着するなりウエルカムフルーツのブドウ4粒をほおばって、そのままシャワーに直行した。目の前の観覧車には恋人たちだろうか、まだ人影があり、眼下の道路も賑わっていた。いつ見てもお祭りのような光景が、楽しい気分にさせてくれる。
さっぱりしたところでライティングデスクに向かい、なにか目新しい情報はないかと、立てかけてあるパンフレットを眺めていたら、このホテルのヘッドコンシェルジュが本を書いたことが紹介されていた。フロントや売店で扱っているようだが、もう遅い時間だったので、翌朝早速コンシェルジュデスクに行って、ご本人から1冊購入させてもらった。部屋に持ち帰り、バスタブに湯を張って、備え付けのバスソルトをたっぷりと振りいれ、朝風呂につかりながらその本をめくり始めた。ほんの数ページかじるつもりが、結局一冊まるごとむさぼり読んでしまうことになった。細かい内容は読んでのお楽しみだが、コンシェルジュの業務内容や、サービスに対する情熱がよく理解できるだけでなく、読めばますますホテルが好きになるに違いない。文体や言葉の選び方ひとつにも、謙虚で誠実な感じがにじみ出ており、等身大のコンシェルジュの姿に好感が持てた。かなりオススメ。
久しぶりの「ラヴェラ」だった。以前、サービスにあまり好感が持てず足が遠のいていたが、今回利用してみて、サービスは相当の改善がなされ快適だった。自信を保ちながらも、出すぎずスマートな様子は見ていて気持ちがよい。そして昼のメニューは、とてもリーズナブルだ。オードブルとデザートをブッフェ形式で楽しめるランチセットは3,200円で人気だが、朝食をしっかり食べたので、ブッフェという気分にはなれず、アラカルトのパスタを注文することにした。パスタやピッツァは千円台で用意されており、パンやコーヒーも付く。テーブルには眩しいほど白いクロスがかかり、同じ材質の白いナプキンが置かれている。合成繊維だがやわらかく清潔感がある。さすがに日曜日。ものすごい活気だった。
2001.06.24
What's your name?
ホテルインターコンチネンタル東京ベイ Club Deluxe Room
哀-2久しぶりにクラブラウンジが営業している時間にチェックインをすることができた。20階に上がると、デスクではにこやかなゲストリレーションズオフィサーが出迎えてくれた。しかし、イスを勧められて腰を掛けると、「お名前を頂戴できますか?」と尋ねられ、ちょっと悲しかった。こちらはその係の名前も顔もよく覚えているのに。その後も、それほど難しくないお願いに応えてくれなかったり、歯車が合わない滞在だった。長く付き合えば、いいことも残念なこともたくさんある。それでも、このホテルを訪れるのは、いいことの方が多いからだ。今日、残念だった分、次はいいことがあるかもしれない。
アメニティに若干の変化があった。黒い小さな折りたたみブラシが、ちょっと立派そうなしっかりとしたブラシになり、ボディスポンジとヘアバンドが加わった。
始まったばかりのタイフードフェアを目当てに「エイジアンテーブル」に出かけた。夜8時と遅めの予約で、ちょうど席が回転したところだったのか、レインボーブリッジを見渡す大きなテーブルに座ることができた。フェアにはコースメニューも用意されていたが、アラカルトから注文することにした。あれこれと興味をひくものが多く、たくさん注文してしまったら、結果的にはお腹が一杯で、最後の料理はすべて食べきることができなかった。特に印象に残ったのは、カニの入ったスープ「トムヤムプー」と、鮮魚の蒸し煮だ。新鮮なイサキを丸ごと蒸して、ネギをたっぷりのせて食べる。その他の料理も丁寧に仕上げられ、タイミングやサービスもパーフェクトだった。宿泊客が予約をして出かけると、ウエルカムドリンクをサービスするという案内が客室に置かれていたが、それはもらえなかった。
食後は「ブルーベランダ」に席を移してコーヒーを飲んだ。先日飲んだコーヒーがおいしかったので、店を変わる気分になったのである。アメリカンフェアを行なっているとかで、スタッフはみなナイキのシューズにジーンズといういでたちだった。若いスタッフはより若々しく、そうでないスタッフもそれなりに若返って見えた。しかし、せっかくユニフォームをアクティブなイメージで統一しても、ヘアスタイルがホテルマンそのもの。せっかくなら、ヘアスタイルにもアメリカンテイストを表現したら面白いのにと思った。このホテルはワインのプロモーションが実にうまい。とても魅力的な品揃えで、しかも信じられないような手頃な価格で楽しめる掘り出し物が必ずある。「ブルーベランダ」ではバラエティ豊かなカリフォルニアワインを取り揃えており、それを目当てに訪れるゲストも少なくないようだ。
この日は横浜みなとみらい地区を代表する3つのホテルが、日を揃えてブライダルフェアを行なっていた。この3つのホテルは「横浜三銃士」と銘打った共同の宿泊プランなども販売し、ご近所で睨み合うだけでなく、力を合わせてこの地区の活性化に力を注いでいる。ブライダルフェアもこの「横浜三銃士」のタイトルを掲げ、来場者はそれぞれのホテルを見比べることができるようにしていた。
空いた時間を利用して、宿泊中のインターコンチネンタルホテルのフェアをざっと見て回ったが、せっかくなので他のふたつのホテルものぞいてみることにした。それぞれに個性を打ち出したプレゼンテーションを行なっているが、センスや雰囲気という点ではパンパシフィックホテルが一歩抜きん出ている印象だった。光の使い方、ジャズバンドの生演奏を入れての盛り上げ方、フラワーなどのディスプレイなどが、楽しく華やかな披露宴をイメージさせる。ロイヤルパークホテルはしっかりとした宴会ロビーが別に設けられているので、外来のお客たちとでごった返す心配がないし、ヨーロピアンテイストの上品なインテリアが、格調の高さを感じさせてくれる。
しかし、インターコンチネンタルは今ひとつ直感的なインパクトに欠けており、強力な武器が見当たらないような気がした。個性的な外観とはうらはらに、改装したボールルームのインテリア以外には、内容に決定的な個性がないのかもしれない。開業から10年が経って、やや発想がマンネリ化しているようだが、国際会議などでの実績は相当なものがあるのだから、その強みを活かした上で新鮮なアイデアを盛り込んだパーティを提案してもらいたい。フェアの朝、ロビーでは模擬挙式に向けて、気合の込もったリハーサルが行なわれており、下品なマイクテストの声が「オーシャンテラス」の最も奥の席までけたたましく響いていた。その辺からしてセンスのなさ丸出しだ。
ホテル4階にある「ロイヤルベイクラブ」が改装されて、「ハーバービューフィトネスクラブ」になってから、初めて利用してみた。内部のレイアウトが少し変わったが、概ねの構成は以前と変わっていない。しかし、スタッフがとても積極的で明るい感じになり、親しみやすいから楽しくカラダを動かすことができるようになった。料金も手頃で、しかも、ウエアなども無料でレンタルできるので、手ぶらで出かけられるのがうれしい。横浜三銃士のフィットネスクラブでは、最も優れているように思う。
30歳の若さで「世界料理大会イタリア代表選抜大会」に優勝した実力派シェフ「ウンヴェルト・ヴェッツォーリ」氏を招いてのフェアが、7月7日から15日の期間で行なわれた。イタリアンレストラン「ラヴェラ」のプライベートコーナーで開催されるこのフェアでは、リチャードジノリの食器とクリストフルのカトラリーが使われ、一層雰囲気を盛り上げた。初日のランチに予約をしたところ、昼間だからか短パンなどリゾートし過ぎの服装をしたゲストが多かった。
サービスに当たるスタッフはわずか2名で、物理的にやや行き届かないところがあった。初日なので仕方がないとはいえ、料理と料理の間隔が著しく空いてしまったり、せっかく運ばれてきた料理が冷め切ってしまっていたりと、残念なことが多かったが、レシピには力強さが感じられ、味付けもしっかりとしておりよりよい状態で食べてみたいものだと思った。特にデザートで提供されたタルトが、田舎の素朴な味わいで、なんとも言えない郷愁を誘い印象深かった。パン皿が空になってもおかわりを運んでこないし、コーヒーのおかわりも勧められずサービス的には不満が残った。
CANNELLONI DI MELANZANE CON RICOTTA IN GUAZETTO DI ASPARAGI
リコッタチーズを詰めたナスのカネロニ アスパラガスのソテー添え
Eggplant Cannelloni filled with Ricotta Cheese served with AsparagusFETTUCINE CON GAMBERI E ZUCCHINE
エビとズッキーニのフェットチーネ
Fettucine with Shrimp and ZucchineFAGOTTINO DI SALMONE CON FRUTTI DI MARE E VERDURE AL DRAGONCELLO
サーモンの魚介入りファゴッティーノ エストラゴン風味の野菜添え
Salmon and Seafood Fagottino with Tarragon flavoured VegetablesO/または/or
FILLETTINO DI MAIALE CON PRUGNE IN SALSA DI GORGONZOLA
豚フィレ肉のロースト ゴルゴンゾーラソース プラム添え
Fillet of Pork with Gorgonzola Sauce and PlumCROSTATA AL CICCOLATO
チョコレートのタルト
Chocolate TartCAFFE/コーヒー/Coffee
前からファンだった「まぐろづけ丼」を久しぶりに注文してみた。いつもと変わらないおいしさにホッとする。ランチのメニューは以前よりも手頃な価格設定になり、より気軽に利用できるようになった。スタッフは一見すると無愛想な印象だったが、よくよく接してみると意外に親切だった。席数もさほど多くなく、こぢんまりとした店だが、やはり4席しかないカウンターが狙い目。桟橋に発着する船がよく見えて楽しい。
2001.07.28
騒音
ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル Club Superior Room
楽-1このホテルではいつもいつも騒音に悩まされる。この日に利用した客室は、上階に子供を複数連れたゲストが滞在しているらしく、子供が起きているような時間には、容赦のない激しい騒音が響いていた。翌日にはどこからともなく、かなづちの音が響いてきて、週末のひとときを利用して、心を穏やかに落ち着けようとこのホテルを訪れたにもかかわらず、まったく逆効果になってしまった。観覧車側と海側では観覧車側の方が騒々しいような気がするが、実際には街の喧騒よりも、海側にあるシーバス発着所のアナウンスの方が数段激しく神経を逆撫でする。アナウンスのない夜間は、確かに海側の方が癒されるので、心穏やかに過ごすには海側の方がいいかもしれない。
そして、さらに騒がしいのがロビーウエディングだ。日曜日には今もって盛んに行なわれているが、この日のロビーウエディングはいつもとは違った意味で気を引いた。牧師が胡散臭いのである。神に仕える者がたたえる、純粋な表情は微塵もなく、語り口からしてなんともインチキ臭い。クサいだけでホンモノの牧師なのかもしれないが、それにしてももう少し品位というのもを考えたほうがいい。ホテルそのものの胡散臭く感じてしまう。横浜一センスの悪いホテルから早く脱してもらいたいものだ。
2001.08.21
台風
ホテルインターコンチネンタル東京ベイ Deluxe Room
楽-3天気予報では、台風が東京を直撃すると盛んに報じていたので、翌日の約束に備え、都内に宿を取ることにした。欠航が相次いだ航空便を利用してなんとか大阪から戻り、一度自宅に帰ってから改めて決めた宿泊だったので、予約を入れる時点で、すでに午後10時を過ぎていた。宿泊予約係はすでに閉じており、フロントの男性スタッフが予約の電話に応じたが、料金体系や客室タイプなどに関する知識に、やや不足があるように感じられた。
クラブフロアには空きがないとのことだったので、レギュラーフロアを利用することになった。それならば、クラブフロアでは味わうことのできない体験をしたいと思い、チェックインの際に、できるだけ低い階をとリクエストしてみた。すると、ラッキーなことに、客室階では最も低い8階の部屋に空きがあった。客室に入ってカーテンを開けて外を眺めると、高層階からよりもひときわ近くに海を感じることができる。台風の接近で波立つ東京港の表情は、いつになく険しいもので、いつまで眺めていても飽きることがなかった。
レギュラーフロアとクラブフロアでは、客室内の仕様に若干の差がある。入り口コンソールに掛けられている絵の種類が異なり、デュベに改められたクラブフロアに対しレギュラーフロアは昔ながらのベッドカバーだ。クラブフロアには常設してある、ズボンプレッサー、シューラック、バスローブ、ベイシン部分のマット、バスピロー、バニティミラーなどはなく、アメニティも若干アイテムが絞り込まれている。また、タオルは刺繍のない真っ白なものがセットされている。しかし、レギュラーフロアであっても、連泊中に不足を感じることはなく、快適な滞在だった。
直撃するといわれていた台風は、横浜市付近に上陸したといいながらも、都心で猛威をふるうことはなく、気が付けば日が差して、ビルの林を照らしていた。雨上がりのボードウォークは、とても清々しく、散歩をするには最高だった。
せっかくベイビュールームで爽やかな朝を迎えても、「ブルーベランダ」での朝食だと、残念ながら店に朝日は差し込まない。でも、ベイビュールームの朝日に負けないくらい爽やかに出迎えてくれるスタッフが揃っているし、品数豊富なブッフェが楽しい一日をスタートさせてくれる。ブッフェカウンターには定番のメニューから、中華点心やタピオカココナッツミルクなど、朝には珍しいものまでがズラッと並ぶ。オムレツも上手にこしらえてくれるし、ワッフルやパンケーキは焼きたてが食べられる。ちょっと寝坊した朝には、ランチの分までおなか一杯にするのも悪くないだろう。サービスは良好で、使用したシルバー類は、その都度交換してくれる。団体客は少なく、ヨコハマよりも落ち着いた客層であるように見受けられた。
通常のメニューだと、ディナーコースは9,000円からだが、ステイゲスト向けに7,000円で提供するコースを用意している。品数は9,000円のコースを同等で、メインディッシュ以降の料理も共通しているので、7,000円なら十分にお値打ちだと感じることができるメニューだ。この夜は台風の影響もあってか、非常に静かな営業で、普段でも落ち着いたムードのある店内が、一層穏やかな雰囲気だった。料理は総じて良好。温度もよく、係の説明は丁寧でわかりやすい。
ワゴンデザートは、充実しており、ガトー7種、フルーツコンポート、アイスクリーム2種の計10種。小菓子はチョコレートのみだった。ワインはいつみてもバランスのよい品揃えに唸らせられるが、このシーズンにはカリフォルニアワインのプロモーションを行なっており、リストは圧巻であった。それでいて価格は手頃で、しかもすべての種類をバイ・ザ・グラスで楽しめるという、思い切ったサービスをしている。ワインの扱いに関しては、さすがとしか言いようがない。参りました。
2001.09.15
バルコニーの足跡
ホテルインターコンチネンタル東京ベイ Club Deluxe Room
楽-2末尾21番のデラックスルームは、各階すべてダブルベッド仕様で、2面の窓からのワイドな景観に加えて、バスルームからも港が眺められることで人気の高い客室だ。ラックレートだとクラブフロアで61,000円と、スイートに次ぐ高額の設定になっているが、52平米というゆとりのスペースと、クラブフロアの充実したサービスを考えると、それほど高い気はしない。一応リバービューのカテゴリーに入っており、川側の窓からは、ちょうど隅田川を正面に見据えるような位置になり、隣のビルもさほど邪魔にならずに、川面とその周辺の景観を楽しむことができるが、もう一方の窓から望む港の眺めも、レインボーブリッジこそ半分に切り取られてしまうものの、お台場方面を一望でき、ハーバービューの魅力をも併せ持っている。
インテリアは、ツインのグリーンベースとは趣を異にし、ベージュを基調としてまとめられていたが、ベッドにこの春から採用されたデュベは、ツインもダブルも共通してグリーンの色調なため、いまひとつ調和がとれていない。ベッドの足元には大きなカウチソファが置かれ、ベッドの四隅に立つ支柱とともにアクセントとなっている。ベッドは高さがあり、天蓋風のカーテンは半分のところまでひくことができる。
客室エントランスから、ベッドルームの内扉まで、クローゼットを配した空間となっているが、レイアウトの関係上、必要以上のスペースを割いており、ムダな気もしないではないのだが、廊下との距離が保たれているお陰で、よりプライベートな環境が実現している。バスルームにも十分な広さがあり、小型テレビを備えたダブルベイシン、窓に面したバスタブ、その隣のシャワーブース、そして少し離れた位置にあるトイレと、理想的なレイアウトになっている。タイルは10万円のスイートと同じだが、広さや使い勝手はむしろ10万円のスイートよりも勝っている。
この日は少し曇っていたが、夜景がとても美しかった。港側の窓は床まであって、窓の外には避難用のバルコニーがある。かなりの広さなので、出られるようにもできたのかもしれない。もしこのバルコニーで潮風を浴びることができたら、もっとステキだろうなと想像しつつバルコニーに目をやると、埃まみれの床には、アームストロング船長が月に残したものと同じような足跡がベタベタとついていて興ざめした。
シャワーを浴びて、外を見ようとミネラルウォーター片手に裸足のままリバービューの窓際にたった時、無意識のうちに、床を這うスタンドのコードを踏んでいたらしい。急に足の裏に鋭い衝撃が走り、ふと見ると足のウラが焦げていた。スタンドのコードの一部がどういうわけか露出しており、ちょうどその部分を踏んでしまったようだ。恐ろしい。
夜遅く、コーヒーを飲みに「ブルーベランダ」に出かけた。すると、近くの席のお客さんがビーフカレーを注文していた。ワゴンが運ばれてきて、目の前でフランベをして盛り付けてくれる。なんとも美味しそうに見えた。今度チャレンジしてみよう。
Y.K.