室内ではより強烈なカラースキームが出迎える。ブルーのカーペットに、ベージュのスローケット、そこに朱色のクッションと来た。このダサいコーディネートを一層ダサく見せているのが、室内をくまなく照らす蛍光灯のシーリングである。実際は新宿駅から徒歩5分なのに、まるで飛行機を乗り継いで辿り着いた中国山間部の街にあるホテルのような雰囲気だ。

そして困ったことに、このシーリングはエントランス照明と連動しており、これだけ消すことができない。居室の明かりとしては、ベッド両脇、フロア、デスクとスタンドがいくつもあるので、シーリングはなくても困らない。むしろ、ない方が雰囲気のある照明になっていい。これだけ明るいと、ムードなんてあったもんじゃないし、清掃の不行き届きがとても目立つ。

明るい中で見ると、壁の一面だけは真っ白く張りかえられている。これまた白すぎて、まるでプロジェクタースクリーンのようだ。その壁に真ん丸いミラーが取り付けてあるのだが、一瞬、壁をぶち抜いた覗き窓なのかと思った。

部屋の面積は30平米。ひとりで過ごすにはゆとりの広さである。ベッドは158センチ幅で、窓を向いて置かれており、マットレスは薄いが、肌触りがなめらかなベッドリネンを使っている。ベッドの足元には二人掛けと一人掛けのイスが、丸テーブルをはさんで向かい合っている。座面は硬く、あまりくつろいで座るには向かない感じだ。

デスクユニットは、バゲージ台、チェストを兼ねており、26インチの液晶テレビが載っている。デスクに添えられたイスも簡素で、ややガタがきており、寄り掛かるのが怖かった。脇の冷蔵庫は大きいが、中は一部が引き抜き式。冷蔵庫の上には湯沸しポットとお茶セットが載るが、この部屋にはインスタントコーヒーセットは置いていなかった。室内に余計なものがないことで、床にかなりの余裕が感じられる。どう見てもムードが足りないのだが、不思議なことに居心地は悪くなかった。

バスルームはすっきりと清潔感のあるデザイン。170×240センチの広さがあり、ユニットバスとしてはゆったりとしている部類だろう。壁はプラスチックパネルで、ベイシントップも樹脂系だが、金具が高級品なので、それが空間のクオリティを一段引き上げている。

翌日午前11時のチェックアウトは、前回にも増して長蛇の列だった。フロント前から延びた列の最後尾は、メインロビーを横切った先にあった。100人以上が並んでいるようである。この列が途切れたのは11:25。それからフロントへ行ってチェックアウトをした。数多くの客に接し、係も疲れたに違いないが、丁寧なサービスを心掛けており、「お待たせして申し訳ございませんでした」と誠実そうな表情で詫びていたのが印象的だった。

ちょうどランチタイムがスタートする時間になったので、新和食「かがり」に寄って見た。生簀があったり、キラキラの装飾があったり、オーセンティックなのかアバンギャルドなのか、どちらともいえない内装の店だ。ランチのメニューはどれもお手頃プライス。店内はほとんどが中年女性で埋め尽くされ、ヨン様がらみの会合に迷い込んだかのようだった。

味はかなりの薄味。まさか味覚が狂ったのかと思い、連れにも味見させたが、「これじゃ糖尿病食ね」との反応だった。デザートはイケメン坊やがトレーに載せて運んできた3種類のスイーツからひとつを選ぶというスタイル。これもまた女性のハートをがっちり掴む戦略だろうか。いやはや、なんとなく居心地が悪かった。