2003年6月7日 |
|
京王プラザホテル Executive Deluxe Room | |
喜-1 a vitality and dignity | |
|
|
昼間の演奏会を終えて、夕方前に京王プラザホテルにチェックインした。東京には夕立にも似た通り雨が降り、雨上がりには美しい虹が出た。ちょうど客室の窓から虹の裾が見え、厚く暗い雲の間からも、ビルの谷間に向けて光が差していた。巨大都市東京も、自然のスケール感からすれば、とてもちっぽけな存在なのだと実感できる光景だった。
改めて東京の景色を高層の客室から見下ろしてみると、高層ビルの多さに驚かされる。かつては、ここ京王プラザホテルが、日本一の高層ビルだった時代もある。当時、周辺には高い建物などまったく存在せず、手に取るような東京湾も、遠く富士山も、何もさえぎるもののなく見事な景観を一望できたことだろう。 外を眺めながらふと考えるのは、はるか以前、たとえば500年前にこの場所、この高さから東京を見渡したら、いったい何が見えたのかということだ。空気は今とは比べ物にならないくらい澄んでいただろうし、東京湾だってどんな海にも負けずに美しかったに違いない。今、ビルの林に見えているコンクリートの土地には、どんな植物が繁り、どんな生き物が戯れていただろう。500年なんて、地球の歴史にとってみれば、ほんのまばたきみたいなものだ。まばたきをしている間に、東京も随分と変わってしまった。この先500年、東京はどんな風になるのか。そして、500年後にも名前が残るホテルは、いったいどんなホテルなのだろうか。 今日、明日のことで目一杯になっている自分に、ちょっとだけ広い視野を与えてくれた虹。見えていたのはわずかな時間であったが、その余韻は長く残った。この日の公演でもらった花束に入っていたカサブランカが、2本折れてしまった。かわいそうなので、ミニバーにあったグラスに水を張り、1本ずついれて、ナイトテーブルに飾った。豊かな百合の芳香が、眠りを一層深くしてくれる。夜にはつぼみだったが、夜明け前には花を開いていた。切り落とされても、たくましく、そして誇らしく咲くカサブランカに、今ホテルが失いかけている気品や生命力を感じずにはいられなかった。 |
|
|
|
[京王プラザホテル] |
Y.K.