1996.01.27
移動日
京王プラザホテル South Tower Executive Deluxe Room
哀-1

宮古島でのコンサートを終え、この日は移動日で事実上はOFF。休みといっても、移動と次の準備でリフレッシュにはほど遠い。羽田から車でホテルへ向かい、着いた時にはもう午後9時をまわっていた。地方から帰るといつも思うことだが、東京というのはものすごい都市だ。その活気にいつも圧倒される。ついさっきまで南の楽園にいたせいか、鮮やかで穏やかだった島と、灰色の雑踏との差についていけない自分がいる。

ホテルの部屋に入り、窓の外の夜景を眺めながら明日の演奏について考えていると、東京に帰ってきたはずなのに、どこか遠くの知らない都市で迷ってしまったような気分にふと陥ることがある。南館の客室のほの暗さや、どことなくノスタルジックな雰囲気も手伝っているかもしれない。なんとなく寂しくなってバーに行ってみたりするが、見知らぬ人たちに囲まれても何も変わらない。

とにかく大きく息を吸って、脳に掛かった蜘蛛の巣のような曇りを吹き払う。ゆっくりとシャワーを浴びて、心地よいベッドにもぐりこむが、なかなか眠れない。移動日はこんな状態になることが多い。それまでの緊張感が急に解けるのが原因のようだ。緊張感が解けるといっても、翌日にはもう元の状態に戻さなくてはならないのを体がわかっているから、開放的にはならない。なんとなくCDプレイヤーを一時停止にしたままの状態に近いような気がする

。こんな時、顔見知りの従業員がいるホテルは心強い。顔見知りがいないとしても、ちょっとした一声を掛けてくれたり、にっこり微笑みかけてくれるだけでも、かなり救われる。だが、このホテルではなかなか顔見知りが出来ない。規模が大きすぎるのかもしれないが、同じ顔ぶれに出会うことも少ないように感じる。

エグゼクティブフロアといっても通常通りフロントでチェックインするから、ラウンジがあるホテルのように特定の従業員と繰り返し接するということがない。大規模なホテルは紛れていたい時には都合が良いが、パーソナルなサービスを受けるには無理がある。

今回は10時間しか滞在しないからという理由と、翌日の列車に新宿駅から乗るために駅からの便がいいという理由を優先させてこのホテルを選んだ。しかし、こうなることがわかっていたら、少々遠くてもパークハイアットにすればよかった。

Y.K.