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ホテルパシフィック東京 Luxury Suite | |
Hotel Pacific Tokyo | 2010.09.29(水) |
東京都港区 | 楽-5 |
ARCHIVES ・ 1992 |
今夜だけ鉄ちゃん いよいよ、9月30日の閉館を控え、宿泊可能な最終日を迎えたホテルパシフィック東京。そのラストスパートを見届けるためにチェックインした。いつもなら数多くの部屋に灯りが点くが、今夜、ほぼ半分のフロアはクローズされているのか、真っ暗だった。 フロントにも人影は少なく、落ち着いているというよりは、どこか寂しげに見える。この長いカウンターも、あと半日でその役目を終えるのだ。 いつもより丁寧なチェックインが済み、客室へ。今となっては改めて目をとめることもなくなってしまったインテリアを、しみじみと心に刻みながら行くとしよう。立派なオニキスのエレベータホールは、特に気に入っていた場所だ。 客室階廊下は、どちらかというと好きでない雰囲気。天井が低く、平板な色合いが退屈だと思っていた。だが、今日は清楚で上品に見えるではないか。人の気分とは勝手なものだ。 今回はユニークな宿泊プランを利用した。その名も「THE京急宿泊プラン」。パシフィック東京を世に生み出し、これまで運営してきたのが京急。ホテル目の前の品川駅から、横浜や三浦半島へ、真っ赤な電車を走らせているのも京急。その京急のテイストをふんだんに盛り込んだのが、今回のプランである。 最初、このプランを知った時には「ばかばかしい」とさえ思っていた。だが、バカも徹底的にすればあっぱれに昇華する。そして、実際に泊まってみたら、これでもかという半端なさに、すっかり惚れ込んでしまった。 客室はパシフィックフロアのラグジュアリースイート。91平米の広さを持つ3ルームタイプのスイートを、京急テイストにデコレーションした部屋を利用する。 廊下の突き当たりにある両開きのドアを入ると、ホワイエがある。まずは駅でお馴染みの表示が出迎えた。その表示の通り、ホワイエから左に行けばベッドルーム、右に行けばリビング。いずれも扉で仕切られており、その扉には「ドアーに注意」のシールも貼ってある。 各部屋の入口には駅名表示式に、ひらがなの案内が掲示してある。まずは「りびんぐ」から。装飾に使われてる素材やアイテムは、すべて実物とのこと。フェイクではない分、説得力は大きい。 リビングにはライティングデスクとソファーセットがある。天井の装飾照明はそのままだが、ソファには車内で実際に使用されているファブリックで作ったヘッドカバーが掛けてある。 天井近くの壁面には電車の方向幕を、クローゼットの扉には列車種別幕を掲示。いずれも間近で見ると大きく感じる。そして、その手触りを初めて知ることができた。 テレビキャビネットはブルーの京急電車を模して塗装。子供部屋の収納にしたら、喜ばれるだろう。もちろん、これも元はホテルファニチャーである。 テレビにはゲーム機が取り付けられており、鉄道運転シミュレーションなどのゲームソフトも用意されている。これだけでも夜明けまで熱中してしまいそうだ。 ライティングデスクには、マニアも喜ぶグッズが置かれている。実際の車内で使われていた無線機とアナウンス用のマイクらしい。次の停車駅を告げる車掌の声が聞こえて来そうだ。 また、京急の歴史を記した書籍や写真集が置いてあり、興味深く読んだ。ここまでだけでも、ちょっとした「京急資料館」である。しかもプライベートというのがいい。他に、双眼鏡と品川駅構内案内図が置かれており、客室の窓からトレインウォッチングも楽しめる。 続いて「だいにんぐ」。こちらは、スーペリアルーム1室分の広さに、丸い4人掛けダイニングセットを置き、収納キャビネットがあるだけの、シンプルなスペース。 ホテルルームデザインとして見ると、リビングとダイニングを仕切る壁は不要だったと思われる。両方合わせて60平米のワンルーム空間とすれば、もっと広々と感じられ、使い勝手も向上したはずだが、明日で終わりの部屋に、今更何を言っても仕方がない。 ダイニングテーブルの上には、車両で使われていた円形の吊り輪が付いた吊革が置いてある。これはここで何に使うのだろう。 壁面のエッチングミラーには、京急電車のシールが貼られている。他にも、額に収められた歴代車両の写真が、スイート全体を賑やかに彩っている。 ダイニングの収納キャビネットも、電車スタイルに塗装されている。そして、中には4種類の車両のNゲージモデルが展示されている。これらが収納されているところは施錠されており、手に取ることはできない。 Nゲージモデルは、小型ながらディテールまで精妙に造られており、今にも動きそうな感じだ。だが、電気は通じていないので、動くことはない。 実際に電車を走らせてみたいならば、バスケットに入ったプラレールを広げてみるのもいい。カーぺットを傷めないよう、フロアマットも用意されている。 ベッドルームはホワイエを挟んで反対側にあり、リビングやダイニングとは違った景観が眺められるのも魅力。落ち着いた雰囲気のベッドルームには、テレビの載った収納家具があるが、こちらは通常塗装のまま。イスの類はなく、眠るための空間といった趣きだ。 ベッドルームへの工夫は少ないが、スローケットに用いられているブルーのファブリックは、京急車両のシート用生地だという。こうして間近で見たり触れたりすると、厚手のしっかりした感触と、やわらかい風合いが伝わり、なかなかいい生地を使っているのだと感心した。 ベッドボード上には間接照明を設置。ベッドの仕様はパシフィックフロア用のもので、リネンやマットレスも心地よい。壁面の額は、もちろん京急車両の写真。 クローゼットはバスルームの前室にあり、そこにはドレッシングカウンターも備えている。クローゼット内は、まるで鉄道の手すり状態。吊革が連なり、なんとなく笑いを誘う。 バスルーム扉にも、鉄道と同じ表示が。ただ、バスルームではなく「お手洗」と書かれている。ベイシンはダブル。シャワーブースはなく、古いタイプのバスルームだ。アメニティはスイート仕様だが、シャンプー類はスイートでもボトル式ディスペンサーを使っている。 さあ、これだけ楽しい仕掛け満載の部屋なら、一歩も外出しなくたって退屈することはないだろう。だが、最終日なのだから、館内のパトロールもしなければならない。 レストランは軒並み満席。最後の盛り上がりを見せているようだ。コンビニエンスストアはほとんど品物がなく、ふだんパンフレットなどが置かれている棚も空になっている。着実に閉館準備は進んでいるようだ。 翌朝は「大志満」の和定食を。男性一人のビジネスマン利用客が多い。落ち着いた風情の中、植栽を眺めながらの朝食は、心なごむひと時だった。 さて、今回のプラン宿泊証明書を持って、お名残りのチェックアウト。フロントではお別れのクッキーに、手書きのメッセージを添えてプレゼントされた。心なしか、スタッフも寂しそうである。またどこかで会えるだろうか。 |
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