だが、この夜は、順延になったお陰でホテルパシフィックの窓から、その花火の一部を見ることが出来た。東京湾大華火祭を客室から鑑賞できるホテルは、いずこもルームサービスやレストランでの食事をパッケージにして、ここぞとばかりに高い料金設定のプランを売っている。だが、花火大会の落とし穴は、今回のように天候によって順延や中止になる可能性があることだ。このリスクは結構高い。また、花火が一部しか見えなかったり、豆粒のように小さくしか見えないくせに、便乗して高いプランを売っている阿漕なホテルもあるので要注意だ。

その点、ここホテルパシフィックは、花火大会のプランは売っていない。もし、NTTドコモビルがなければ、部屋から見事な花火が見えただろうが、大半はビルの陰になってしまっている。それでも、大きな尺玉が上がると迫力ある光景が広がり、少し遅れて打ち上げ音が腹に響く。思いがけない花火に、ちょっと得をした気分だった。

それにしても、品川駅港南口方面には、高層ビルがびっしりと建ち並び、ホテルパシフィックからの景観は、すっかりと様変わりしてしまったものだと、しみじみ思った。20年前には、東京湾の景観が広がり、海に近いホテルだという実感があった。だが、今は海面を見ることはできなくなってしまった。付け加えると、開業当時のキャッチコピーは「The Best Hotel in the World」。開業スタッフの並々ならぬ意気込みを感じることが出来るフレーズだ。