特別感が希薄な特別階 |
2006.09.17(日)
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ホテルパシフィック東京 The Pacific Floor Double Room | |
Le Meridien Pacific Tokyo |
哀-4
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ホテルパシフィック東京の26階と27階は、全面的な改装が済んで、新たに「ザ パシフィックフロア」と呼ばれる特別フロアになった。ホテルが掲げるテーマは「心とからだを癒すスタイリッシュな隠れ家」ということらしく、パンフレットを見る限りでは随分と様変わりしたように見受けられる。特別フロアと言ってもラウンジはなく、いわゆるエグゼクティブフロアのようなサービスがあるわけではない。単に内装が違っているというだけだ。
ところが、このフロアはいつもラックレートに近い強気の値段で売っている。割引率が高い一般フロアの同じ面積の客室と比較すると、2倍近い料金になっていることもしばしばだ。いくら新装の部屋だからと言って、倍もの料金を支払う価値があるとは考えにくい。だからかどうか知らないが、いつ見上げてもこのフロアは真っ暗だ。一般フロアならスターウッド・プリファード・ゲストの特典で部屋のアップグレードが期待できるが、ザ パシフィックフロアに関しては対象外の扱いになっている。特典で一般フロアからザ パシフィックフロアにアップグレードされることはないし、ザ パシフィックフロアを予約しても、よりよい部屋にアップグレードされることはないらしい。 そんなこともあって、ザ パシフィックフロアを利用するチャンスにはなかなか恵まれなかった。だが、この日は都内のホテルは混雑しており、どのホテルも満室だったり、空室があっても条件の悪い部屋や割高な部屋しか残っていなかった。そんな中でもザ パシフィックフロアの客室は、いつもと同じレートで販売されており、十分な残室があった。他が高い時なら、ザ パシフィックフロアを選んでも、相対的に割高感が軽減されるかもしれないと思って予約した。しかし、結果的には、それでも高い授業料になった。 今回利用したのは、ザ パシフィックフロアダブルルームの25平米タイプ。これが最もコンパクトな部屋に当たる。料金的には駅を挟んで反対側のストリングスホテル東京の普段のレートよりも高く、部屋はより狭い。だが、同じホテルパシフィック東京の中で比較すると、エレベータホールから客室まですべてが改装され、一般フロアに対する特別感というものは確かに存在する。フロア全体がナチュラルな色彩でコーディネートされ、これまでよりも安らぎに近づいたことを伺わせる。 だが、部屋は覚悟していても狭かった。ニューグランドのシングルルームから来てもなお狭かった。家具のチョイスが悪いわけでも、レイアウトに問題があるわけでもない。やっぱりこの部屋はそもそも狭いのだ。では有効面積はいったいどのくらいあるのか。実測してみた。すると、窓の出っ張りやバスルームのパイプスペースを含めても、20平米に満たないことがわかった。壁は隣の話し声さえ筒抜けなのだから、かなり薄いに違いないのに。5平米はどこへ消えたのかは謎のままだ。 客室へ入ったところから居室までの間は、フローリング風の床になっているが、実はシールを張っているだけ。壁の木目もシールだ。照明のスイッチ類も、一般家庭で使われているようなタイプで、センスが悪い。今時、もっと洒落たデザインものがいくらでもあるだろうに。一般フロアではカーテンレールが窓枠よりも内側に設置されているが、ここでは窓枠の間に設けている。その結果、気は心程度だけ部屋を広く使えるようになったが、カーテンを閉じても隙間から光が洩れ、遮光が中途半端にしか出来なくなってしまった。 ベッドは160センチ幅。マットレスの感触やデュベの軽やかさは気に入ったが、ベッドリネンの肌触りはいまひとつ。枕は妙にフカフカしていて好みに合わなかった。ユニークなのは、ベッドの下部に沿って間接照明を取り付けていることだ。まるで光の中にやわらかく浮かんでいるように見えて面白い。ナイトテーブルのパネルでは、照明や空調などが操作でき、デザインもなかなかよく出来ている。 デスク周辺はすっきりとしている。一般フロアのものに通じるデザインと素材のデスクには、26インチの液晶テレビとDVDプレイヤーを備えている。地上波デジタル放送にも対応し、画像は美しい。クローゼットは小さく、ハンガーを横向きに重ねて収納するタイプ。ミニバーにはカップ&ソーサーが用意され、紅茶も備えている。窓際にはふたつのソファとコーヒーテーブルがあり、クッションを添えた。照明は調光可能なハロゲンダウンライトを中心に、フロアスタンドや読書用チューブライトを備え、充実している。 バスルームの改装は、かつてがどうであったかが容易に想像できる程度に留めており、やや中途半端な印象だ。壁に安っぽいシールを張り巡らし、扉、シャワーカーテン、浴室金具、照明器具を新調したくらい。この中で最も効果を発揮しているのは、シャワーカーテンだろうか。カーテンレールをカーブしたものに替えたことで、これまでのようにカーテンが体にまとわりつくことがなくなった。また、扉が引き戸になったので、通行が楽になった。アメニティは一般フロアよりも充実しているが、シャンプー類は相変わらず大きなボトルアプリケーター。資源節約のためと言いつつ、これまで簡易パッケージだったものを紙箱入りにしているなど、ちぐはぐな面もある。 この部屋は、デザイン面でトータルコーディネートされているのに、小物アイテムの詰めが甘い。これは、パークホテル東京にも通じるものがある。ティシューケースやメモパッドなど、比較的利用頻度の高いアイテムが、一般フロアと同じダサいデザインのものをそのまま使っている。細部まで吟味したり、特別なアメニティを充実させるなどして、妥協のないコーディネートを実現して欲しい。 とにかく、この部屋は広さと質感の割りに高すぎるというのが問題なのだ。一般フロアに対して2,000円〜3,000円程度の加算なら納得できるし、実際に利用するだろうと思う。このまま強気の値段を貫いていれば、いつまで経っても閑古鳥のままに違いない。 |
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ホテルパシフィック東京 | 000105 000418 000927 020315 020608 030225 030713 030802 031231 050822 051125 060611 060627 060710 060729 060804 060813 060819 060913 |
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