2000.01.05
エアクルー宴会
ホテルパシフィック東京 Standard Twin
哀-4

ツインの室内

品川の駅前に位置し、ユニークな外観をもつ30階建てのホテルパシフィック東京は、1000室もの客室を抱えているが、これらがフルに稼動することも少なくないらしい。開業から30年が経とうとしている建物は、古々しくて機能的にも物足りない部分もあるが、よく見て回ると興味深い建築美も見受けられる。立体的でスケール感のある玄関アプローチや、今同じように造ろうと思ったら幾ら掛かるかわからないほどゴージャスな総大理石張りのロビー回り、それほど大きくないながらも都心では貴重な日本庭園などがそれだ。だが、スタッフの質には疑問も残った。毒々しい色のマニキュアを塗り、茶色に脱色した髪をしてフロントカウンターに立ち、決してゲストと目を合わせることなく冷徹に業務に当たるフロントクラーク。大きなバッグを抱えながらチェックインを待つゲストを見ても、手伝おうともせずに従業員同士おしゃべりに興じているベルガールたち。そしてそれを見てみぬ振りのアシスタントマネージャーなど、サービスには奮起が必要だ。

利用した客室は最もスタンダードなツインルームで、その中でも低層に位置する7階の客室だった。駅側は主にツインが、裏側にはダブルが配置されている。裏側の客室なら庭園が望めるので、低層階でもそれなりの景観が得られるが、駅側の低層階は退屈な眺めだ。高層階になったとしてもインターシティができてからは視界が遮られるようになり、それほど期待できるものではないながらも、一応レインボーブリッジなどが見えるらしい。客室面積は30平米ある割りには狭く、天井も低いので窮屈な感じがする。ベッド幅は110センチとやや小ぶりだ。

ミニバーに備え付けられた電磁湯沸かしは、「SONY ソネットサーバー」という名称で、なんだかまるでインターネットプロバイダーのよう。バスルームはユニット式で、シャンプー類はポンプ式だった。タオルは3サイズ揃っているが、この客室ではなんと撤退したパシフィック千葉で使用していたブルーのロゴ刺繍入りタオルだった。かなりくたびれているものの、よくぞ長いこと使っているものだと感心してしまった。同じ階の客室にはどうやらエアクルーたちがたくさん滞在しているらしく、深夜には各扉を開け放って思い切り大声で騒ぎ、宴会状態。それが午前4時ごろまで続き、安眠できたものではない。どこの航空会社か知らないが、同じサービス業に携わるものとして、恥を知って欲しい。

デスク周辺 バスルーム

2000.04.18
不快指数
ホテルパシフィック東京 Deluxe Suite
哀-1

ベッドルーム

このホテルでは建物の両翼の先端、つまり廊下の突き当たりにスイートを配しており、低層階から高層階まで縦一列にスイートが並んでいる。一部のラグジュアリースイートを除くと、主に2ルームタイプと3ルームタイプがあり、それぞれ50,000円と100,000円の定価がついている。スペースに限って言うならば、50,000円のスイートにスタンダードルーム1部屋分が加わっていきなり50,000円も高くなるのは驚きだ。2ルームタイプのスイートを利用したことがないので比較はできないが、今回利用した3ルームタイプのスイートも特段豪華な造りになっているとは言えないので、50,000円の差を実感するのは難しそうだ。

いずれにしても、廊下の先端という位置を活かして、扉が両開きの立派なしつらえになっているのがひとつの特徴だ。扉を開けると大理石敷きの前室があり、左右に客室が分かれている。ベッドルームは建物の裏側に向いており、ベッドが2台置かれているほか、テレビとスタンド、肘掛け椅子のシンプルな配置で、ベージュを基調とした落ち着いたインテリアだ。ベッドサイズはスタンダードツインよりも広い120センチ幅で、寝具は羽毛布団を採用している。照明やカーテンの開閉はすべてナイトテーブルで可能。

バスルームはダブルベイシンだが、シャワーブースはなくビニールクロス張りで今ひとつぱっとしない造りだった。アメニティも一般客室よりアイテムが増え、歯ブラシなども立派だったがシャンプー類はポンプ式。バスルーム手前のクローゼットは扉が鏡張りで、その前にあるドレッサーの鏡とあわせれば、後姿もチェックできて便利だった。

一方リビングは、シッティングルームとダイニングルームにそれぞれ1部屋分を当てており独立した使い方が可能だが、どちらかというと壁を取り払って合体させたほうが広々として使いやすくなるように思った。全体的に、ホテルライフを楽しむとか、ゆったりくつろぐといった雰囲気ではなく、宴会の控え室として使ったり簡単なビジネスミーティングをする場合などに向いている客室だ。それならそれ向けにインターネットの接続やオフィスアイテムの充実など、ビジネスユースにありがたいアイデアを盛り込んでもらいたいところ。

インテリアはかなり流行遅れな感じがするばかりでなく、そろそろ改装が必要なレベルにくたびれているので、同じ系列のグランパシフィックの同料金客室と比べても見劣りがしてしまう。また、室内の湿度がとても高く、不快指数の針は振り切れんばかりだった。

客室設備はさすがに古臭いが、ロビー周りには今のホテルには真似のできない雰囲気を漂わせている。特にロビー階にふんだんに使われたオニキスは、一見の価値があろうかと思われる。ここのエレベータホールには独特の重厚感があって好きだ。最近2階フロアを改装し、今風の色合いの大理石を採用したが、ロビー階から2階に向かうとさっぱりとした感じはするものの張りぼてのように軽々しく見えるほどだ。ロビーラウンジにも昔ながらの雰囲気があって、滝を配した庭園を望むゆとりある設計はなかなかのもの。コーヒー1,000円は少々高いが、風変わりなポットで運んでくるのが面白い。

リビングのソファ リビングのライティングデスク

ダイニングを入口側から見る 鏡張りのクローゼット扉と、そこに映ったドレッサー

ダブルベイシンだが、シャワーブースはなし アメニティでは歯ブラシが立派で印象的

2000.09.27
富士山とカラス
ホテルパシフィック東京 Suite
楽-2

リビングルーム

沖縄から最終便で東京に着いたが、仙台公演から移動続きでいささか疲れたので都心に一泊することにした。夜遅いチェックインではあったが、フロントには他にも手続きする宿泊客の姿が見られ、カウンター内にはまだ数名の係がおり、スムースに手続きが完了した。別の係のカウンターで手続きをした連れに気付くと、「同じ階の部屋をご用意しましょうか?」と気遣いを見せてくれ、長旅の疲れもすこし解れたような気がした。一晩の宿泊にしてはやけに多い荷物も丁寧に運んでくれ、若いスタッフたちの印象は大変よかった。

客室は高層階のコーナーに位置する2ルームタイプのスイートで、品川駅側がリビングルームに、反対側がベッドルームになった細長い構造だ。前回利用した3ルームタイプのスイートから一部屋分削除したのと同じ面積で、仕様も大差ないにもかかわらず料金に50,000円もの差があるのは不思議だと思っていたが、実際に利用してみてその謎はより深まった。プライベートで利用する限りは、差額を出して3ルームスイートにしたいという魅力はまったく感じず、むしろ2ルームスイートの方が使い勝手がよいように思った。

ベッドルームとバスルームは多少の装飾の差こそあれ、両スイートでほとんど同じ造りになっている。寝具は羽毛布団を採用しており、薄くピンクがかったシーツと枕カバーがユニークだ。タオルは豊富にセットされていて、バスローブももちろん用意してある。トイレはウォシュレットだ。

朝、ベッドルームの窓からは富士山がくっきりと見え美しかった。また庭園を飛び交うカラスが窓枠のすぐ近くにとまり、普段なかなか間近ではみれないカラスの生態も観察できて興味深かった。それにしても、チェックイン時とは正反対に、チェックアウト時の女性スタッフの感じの悪いことといったらない。特別に手落ちがあるわけでもないのに、表情と仕事ぶりだけでこれほどまでに相手に不快感を与えるというのも、考え様によってはものすごいことだ。

リビングのデスクとアーモア ベッドルーム

アメリカンカジュアルダイニング「T.G.I フライデーズ」

最近ホテルレストランがどんどん変化を遂げている。どのホテルへ出掛けても画一的な店ばかりだったが、ここへ来て個性を前面に押し出し店や、気軽に洗練を味わえる店が急激に増えた。経営的にも厳しい状態が続く店も少なくなく、思い切ってテナントとして店を任せる決断を下したホテルも出てきた。

この「T.G.Iフライデーズ」は、コーヒーショップの移転に伴い、跡地を改装してオープンしたカジュアルダイニングだ。店に入ると、まるで「ハードロックカフェ」のようなド派手な内装になっており、以前のコーヒーショップの面影はまったくなく、老舗の大型ホテル内にあるのは不思議な感じがする。従業員たちも奇抜なひとたちが多く、なにかのアトラクションのようだ。

少々サービスがお粗末でも、気が利かなくっても、キュートなノリに圧倒され、なんだか楽しい雰囲気になってくるからおもしろい。料理はバーガーやグリルが中心で、ポーションはアメリカンサイズ。価格は手頃で、宿泊客以外の利用も見込んでいるようだ。もちろん部屋付けで利用でき、週末は深夜3時まで、平日でも深夜1時までオープンしているので、とても便利だ。

コーヒーショップ「ピコロモンド at the Garden」

朝食をとりに出掛けてみたら、とても混雑をしていた。前夜のチェックイン時にはこれほど客室が埋まっているようには感じられなかったが、コーヒーショップには様々な国籍のビジネスマンがごった返し、空港のカフェテラスのような雰囲気だった。もともとコンチネンタル料理「浮殿」があったところに移転してきたわけだが、日本庭園を望み三方を大きなガラス窓に囲まれ、朝食にはピッタリのロケーションだ。

窓際に座れれば、その爽やかな感じがより強く味わえるだろうが、混み合っていたので残念ながら中央の落ち着かない席になってしまった。店全体を見渡してみると、いろいろな形の椅子やテーブルがあるのがわかるが、どれを取ってみてもあまり座り心地はよくなさそうだ。

ブッフェが中心となっているが、面倒だったのでメニューからヘルシーブレックファストを選んだ。カットフルーツに盛り合わせと、てのこ盛のプレーンヨーグルト、チルドジュースとインスタントのカフェインレスコーヒーが付いて2,000円。確かにヘルシーかもしれないが、あまりおいしさや楽しさを感じない構成だった。サービス的にもさばかれている感じで快適とはいえない。

2000.09.28
昼でよかった
鉄板焼「浜木綿」ホテルグランパシフィックメリディアン東京
哀-1

昼食には海を渡ってもうひとつのメリディアンに出掛けてみた。無料のシャトルバスも運行されているが、チェックアウト後だったので自家用車で向った。フレンチレストランはいつからか、ディナータイムだけの営業になってしまったが、フレンチテイストを自慢にしているホテルだけに残念なことだ。中国料理もいいなと思ったが、せっかくなら眺めのよい店にしようと、高層レストランの様子を見に上がってみた所、思いのほか混雑を呈していた。スカイラウンジではブッフェをやっていたが、この日は朝からやっぱりブッフェの気分にならず、隣りの鉄板焼店に入ることにした。

満席でさらに席を待っているお客が他にもいるとのことで、我々も30分ほど待たなければならなかった。そこにぼけっと座っているのも無駄だから、ロビーなどをひとまわりしながら館内の雰囲気を味わって時間までに戻ると、ちょうど席が空いたところだった。どっと帰ったところだったのか店の中は閑散としており、もう4組がぽつりぽつりと残っているだけ。あらかじめ決めてあった注文を済ませ、さっと食べて短い時間で退店した。

注文したのはランチコース「秋の花娘〜un deux trois〜」という、ちょっと恥ずかしいネーミングのフェアメニュー。浜木綿特製「山形牛ときの子たちのデュエット」[オーストラリア産ロブスターの香草パン粉「黄金焼き」牛100%」「鉄板焼きハンブルグステーキ」という3品があって、それが1品だと2,000円、2品だと3,000円、3品すべてだと4,000円という価格設定で、どのコースにもけんちん汁、ご飯、香の物、クリームあんみつが付く。料理はほとんどオードブル感覚で食べた感じがしないほど量が少ないので、結果的には3品頼んで正解だった。

鉄板焼を焼く調理人は若い女性だったが、やはり手さばきがぎこちなく、これ以上高い物を注文しなくってよかったと思った。鉄板越しの窓からはレインボーブリッジと都内の景観が望め、夜はまた美しい眺めかもしれないが、黒服はともかくとしても直接サービスに当たる女性従業員が素人臭いので、ディナータイムに大枚を叩くには勇気が要る。

2000.11.12
駆け込み乗車はキケンです
ホテルグランパシフィックメリディアン Club Luxury Twin
哀-2

洗練されたインテリアのクラブフロア客室

日曜日の午後とあってか、ロビーには途絶えることなく人々が行き交い、大型ホテルらしい活気があるといいたいところだが、お台場の観光スポットと同化してしまい、ディズニーランドのアトラクション施設内にいるような錯覚すらおぼえてしまうほどだ。オマケに従業員たちの視線ひとつとってもまったく洗練された雰囲気を感じない。特に背中をまるめた姿勢でフロント前に立つ年配の管理職は、まるで商売をする気のない観光地の土産物屋で店先に立つ老人のようだ。いくら若者たちがはつらつと頑張っても、そこでパワーを吸い取られてしまいそうな感じ。

チェックインのために27階のクラブラウンジに向かおうとエレベータに乗り込むと、閉じかかった扉に無理矢理手を添えてひとりの男(オヤジ)が割り込んできた。胸のプレートを見ればこのホテルの従業員であることは一目瞭然である。いくら急いでいようとも従業員としては大層はしたない行為だ。乗り込んできてからも、自分の行き先のボタンを押したきり非礼を詫びるでもなく平然としているばかりか、目的の階に着くとそしらぬ態度でさっさと降りていった。乗り込んでから降りるまで客の我々に気付かなかったとでもいうのだろうか。

27階にあるクラブプレジデントラウンジは、ロビー階の喧騒がウソのように静かで、まさに別世界の空気が流れていた。デスクには2名の女性がいてチェックインの手続きを行なったが、その時点では特に親しみを感じさせない無味乾燥な印象があった。チェックイン時には飲物などを勧められることもなく、そのまま客室に直行した。

以前利用した時には驚くほど清掃状態が悪かったが、今回は一転して大変良好だった。室内は特に傷んだところもなく、まだ新しさを感じるほど。しかし、パブリックスペースやエレベータ内など、キズがあっても補修していない部分がたくさん見受けられることから、メンテナンスや清掃に対する意識が改善されたというよりは、単にこの客室の稼動が悪いのか、はたまたこのフロアだけ特に念入りに管理しているかいずれかの可能性が高い。

50平米のスペースを持つラグジュアリールームはエントランスを入ったところがフローリングになっており、すぐ脇にクロゼットとドレッサーがある。バスルームの扉はハーシュ&ベドナーらしく引き戸を採用しているのだが、すこしずれているとはいえエントランス扉と互いに位置に向き合うようなレイアウトになっているため、状況によっては廊下からバスルーム内が丸見えになることもある。バスルームは天井が高く、2箇所のウォールライトと3箇所のハロゲン光ダウンライトがあって、とても明るい空間に仕上がっている。シャワーブース内を除いては、腰までが大理石張りでその上はクロス張りだ。

エントランスからベッドのある室内までは結構長い距離があり、途中にコンソールのある廊下をはさむことで雰囲気の異なるふたつの空間を生み出している。木の風合いを生かし、ベージュを基調としたインテリアはとても快適。窓も大きく取られレインボーブリッジ側なら東京の夜景を一望できるし、反対側でも空港などが望めウォーターフロントならではの景観が楽しめる。窓枠には木材を使用し、カーテンの柄はユニークな意匠だ。

いろいろなホテルにエグゼクティブフロアやクラブフロアと称する特別階はたくさんあれども、一般階とこれほどまでに内装を異にするホテルは他に例がない。強いて言えばヨコハマグランドインターコンチネンタルホテルはフロアでの差が大きい方だが、ここはそれ以上に大きく違っており、同じホテルとは思えないほど廊下から客室までがらりと変わる。それはコーディネートのセンスと実力がハッキリと浮き彫りになっている比較例にもなり、予算の差とは別のセンスの差がよくわかって実に興味深い。

エントランスから室内までフローリングの廊下がある 左手前がエントランス、右側がバスルーム入り口

大きなカガミで広く見えるバスルーム 金色の金具がまぶしい

Y.K.