品川駅周辺は、日々刻々と表情を変え続けている。新幹線の新駅や新しい高層ビルなど、建築中の施設が数多くあり、訪れる度に違う顔に生まれ変わっている。そんな新しい街・品川ではすっかり老舗になったホテルパシフィックは、70年代のホテル文化を色濃く残しており、どこか懐かしい空気を漂わせているホテルだ。重厚感のあるロビーフロアの大理石、滝を配した庭園、ラウンジ天井の照明など、これから開業するホテルにはおいそれと真似のできない手の込んだ贅沢さがあちこちに見て取れるにもかかわらず、全体的にはどこか垢抜けないところも、このホテルの「らしさ」として一票投じたくなる魅力だ。
このホテルでは、いつも少しずつ改装を進めているが、最近はエレベータとロビーラウンジを改装した。ロビーラウンジは以前よりも、高いテーブルや椅子を増やし、カフェ風の雰囲気になったが、全体的にはやや軽いインテリアになった。しかし印象的な天井の照明や壁には手を加えなかったのでホッとした。
チェックインをしようとフロントに向かうと、ちょうどタイミングが悪かったのか、多くのエアクルーやその他の外国人グループ客がチェックインに列をなしていたので、仕方なく列に並ぶことにした。ベルガール達は、フロントの方を向き姿勢を正して立っているが、列には大きな荷物を持っているゲストが多数並んでいるのに、それを積極的に手伝おうとはしていなかった。長いフロントカウンターには、十分な空きスペースがあるものの、フロント係は少数しかおらず、人員の不足も行列の要因になっているようだ。
客室は高層階の禁煙室を希望すると、25階の部屋をアサインしてくれた。室内の照明には、バスルーム以外すべて白熱灯を用いており、照明器具は十分な明るさが得られるよう配置してある。室内は30平米あることになっているが、窓枠の部分に他のホテルでは類を見ない厚さがあるせいか、一回り狭く感じる。家具などには傷みが少なく、小奇麗な印象だ。バスルームも、時代掛かったベイシンや、独特な形のカランなど、最新のホテルにはない雰囲気が感じられる。
最近はマンションの一室と大差ないような、自宅のようにくつろげることをアピールしたホテルが増えてきた。便利なことに越したことはないだが、自宅同様にはいかない不自由さも、ホテルに宿泊しているんだという実感につながり、ホテルファンには悪くない状況だ。このホテルはペイテレビが1日500円だ。安いなぁと感心するが、作品リストを見ると、とうの昔に7泊8日が解禁になったかなり古い映画ばかり。変わりゆく品川駅前の様子を横目に、ベッドに腰掛けて古い映画を観ながら、その頃を思い出すってのもありかも。
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