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グランドプリンスホテル新高輪 Twin Room | |
Grand Prince Hotel New Takanawa | 2010.07.22(木) |
東京都港区 | 哀-3 |
ARCHIVES ・ 1992 |
崩壊するデザイン性 この日もフロントカウンターに立つ係はふたり。チェックインを待つ行列ができていることからも、人員不足は明らかである。その不満を穴埋めしているのは、係の低姿勢で感じのよいサービス態度にほかならず、わずかな待ち時間であればかなりの効果をあげている。だが、5分以上待つ状況が重なるとすれば、愛想だけではもはや補えない。 客室への案内も割愛され、客室へは自ら荷物を持って向かった。ロビーは団体客が多数たむろしている。来日中のトリノオペラ一行は、高輪と新高輪のプリンスに分かれて逗留しており、プリマドンナたちには最高級のスイートが用意されている他、稽古用のピアノルームも設けられている模様。出演者たちと顔を合わせる機会も少なくなかった。 さて、今回の客室はあえての低層階未改装ルーム。改装が進んでだいぶ残り少なくなった懐かしの部屋で過ごすためである。たまにこうしたノスタルジーの虫が騒ぎだし、ここや山の上ホテル、芝パークホテルなどに行ってみたくなるのだ。 しかし、何度見ても、常人の理解を超えた奇想天外なインテリアである。昭和のロマンか、ロココへのオマージュか、あるいは「芸術は爆発だ」への対抗か。なんだかよく知らないが、古びた空間をけばけばしく飾り立てたちぐはぐな内装は、老婆の厚化粧のよう。しかも、室内が「におう」のだ。 だが、完成当時の内装は、きちんとバランスが整っており、ユニークながらも説得力があった。後にファブリックを交換する度にバランスが崩れ、手入れを怠ったがためにオバケのようになってしまったのである。その最たるものがドレープとベッドボードの花柄だ。花柄が悪いわけではないが、よりによってこの色とこの柄かという感じ。 そこへ、今度は陰気なブルーの柄入り寝具を持ちこんできた。この柄あわせは、ワーストドレッサー受賞者だって避けるに違いない。せっかくの村野藤吾デザインを、悪趣味の権化にしてしまったのは、いったい誰なのか。これはプリンスの大罪のひとつである。 窓を背にして置かれたふたつのアームチェアは、どっしりと重厚感のあるデザインながら、白い枠と紅海老茶色のファブリックやフェミニンシェイプが、やわらかな印象を与える。座面が低いのは、空間を広く見せるための村野流チョイス。同様にベッドも低い。 ライティングデスクはさくらタワーのもの同様、さっぱりとしたデザイン。デスクトップには何もなく、LANケーブルだけが無造作に延びている。 ドレッサーはユニークな形をしており、丸いミラーやサイドにスライドする小物入れが洒落ている。フロアスタンドはここドレッサー脇とデスク脇にひとつずつ。明るさは十分だ。 サイドテーブルはドレッサーとよく似た意匠。高級茶葉とミネラルウォーター、バスローブが用意されているのは、プリンスホテルのメンバー用セッティングのようだ。 テレビはアーモアに収まっているが、昔ながらのブラウン管式。下には冷蔵庫が、さらに下は2段の引き出しになっている。バゲージ台は折り畳み式の簡易型のみ。壁面に組み込まれたクローゼットは、和室にもよく似合うようなデザインをしている。 窓の外にはバルコニーがあり、窓際の天井にはシャンデリアが下がっている。以前は汚れが気になったシャンデリアだが、最近は手入れをしているらしく、きれいだった。 バスルームも昔ながら。花柄のビニールクロスと白いベイシンに白いスツール。蛍光灯の照明がその白さを一層引き立てる。バスアメニティは簡略化され、シャンプー類は大型のディスペンサーボトルになった。 バスタブは2方向が開いているので開放的。改装された部屋も同じデザインだが、シャワーカーテンを開ききることができず、使いにくくなってしまった。ここはシャワーカーテンが左右に分かれ、完全に開くことができるので使い勝手がいい。 客室廊下には鋳物の門が設けられ、数種類の柄がある。こうしたユニークな意匠がどんどん消え去っていくのは寂しいものだ。 プールサイドは夕方からアウトドアレストランとして営業しているらしい。客室からプールが比較的近かったので、その騒音がうるさかった。22時になると「蛍の光」が流れ始めたが、客がはけたのはそれからずいぶん経ってからだった。 ロビーラウンジ「あさま」は、ゆったりとした座席配置と緑を望むくつろいだ雰囲気が自慢。コーヒーはワゴンとポットで丁寧にサービスされ、味もなかなかだった。打ち合わせなどばかりでなく、ひとりでゆっくりと過ごすにもいいラウンジだ。 |
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