新高輪プリンスホテルの最上階にあたる16階には、標準客室の2倍の面積を持つスイートがずらりと並んでいる。フロアにあるほとんどの客室がスイートだ。エレベータホールや廊下にもシャンデリアが連なり、標準階よりもグレードの高い内装になっている。標準客室にはエントランス部分に門が取り付けてあるが、最上階にはなかった。これだけスイートが並ぶと、このホテルはスイート比率が高いように感じられるが、実際は千室に迫る客室数のうちの32室だから、3パーセント程度だ。
客室に入ると、まずはその華やかさに圧倒される。華やかといえば聞こえがいいが、正直な第一印象はケバケバしいの一言だった。だが、室内で過ごすにつれ目が慣れてくるのか、段々と心地よくなってくるから不思議だ。こうしたテイストの客室にはなかなかお目にかかれないので、今となっては貴重な存在かもしれない。
入り口を入ると、そこにはL字型のバゲージ台があり、十分な引き出し収納が用意されている。これなら大きなスーツケースを持ったもの同士が同室になっても置き場に困らない。だが、囲えばウォークインクローゼットにもできる広さがあるのに、むき出しになっているのが不思議だった。室内はワンルームタイプで広々と使えるが、かつては部屋の中央でカーテンか何かで間仕切りができるようになっていたらしい。現在はその形跡だけが残っており、部屋を仕切ることはできない。手前半分がリビングスペースになっており、ゆったりとソファを配置した。テレビはリビングスペースに一台あるだけで、ベッドに横たわるとテレビが見にくい。
ベッドはハリウッドツインスタイルに並べられ、オットマンを備えている。ベッドリネンや寝心地も標準客室よりはずっとよかった。ベッドの脇には大理石トップのドレッサーがあり、リビングスぺースとの間には、ローテーブルとアームチェアを置いて、就寝前のくつろぎのスペースを設けている。座るならリビングで十分という考えもあるが、より低い姿勢で掛けられるソファは、また違った座り心地が味わえるのがいい。イスやベッドのファブリックは控えめな色使いだが、縦縞の壁紙とカスケードのドレープが賑やかに彩っている。照明は独立したスタンドに加え、シャンデリアが印象的だが、調光が不可能なのが残念だった。また、ライティングデスクの役割を果たせる家具がなくて不便に感じた。
バスルーム内は床だけに大理石を用い、壁はビニールクロス仕上げだ。バスタブとトイレとビデが並び、ベイシンはバスルームの外に据えた。ベイシントップにも大理石を用いている。ベイシンの後ろはベッドスペースとリビングスペースそれぞれに通じる扉を持った廊下になっているが、ワンルーム仕様の今となっては意味を成さない廊下だ。クローゼットはその廊下に面している。アメニティは標準的で、バスローブを備える。冷蔵庫はスイートといえども空っぽだった。ややタバコの臭いが気になったが、窓を開けて換気をして凌いだ。周囲は空室ばかりだったのか、とても静かに過ごすことができ、バルコニーから見る東京タワーがとても美しかった。
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