フロントは珍しく混雑していた。すぐに手続きをしてもらえそうもなく、水縁のベンチに腰掛けて様子をうかがっていた。レストランではランチを終えた人々がコーヒーを楽しんでおり、ロビーを行き交う人々が放つ活気はアトリウムにこだましている。それをぼんやりと眺めていると、馴染みのスタッフが顔を出し、直接部屋まで案内してくれ、インルームチェックインが行われた。

今回利用したのはクラブフロアにあるコーナータイプのツインルーム。かつてクラブフロアがベイビューとされる向きの1面だった時に、その向きにあるコーナールームは利用したことがある。だが、品川駅向きのコーナールームは、当時レギュラールームのカテゴリーであったため、一度も使う機会がなかった。今回はクラブフロアに4室あるコーナールームのうち、品川駅向きをリクエストしてあった。こちらもトータルで2室しかなく、部屋割のコントロールが難しい部屋である。

扉を入るとフローリング敷きになった長めの細い廊下があり、片側にクローゼットを配置してあって、先まで進むと居室になっている。居室はコーナーを生かした2面のワイドな窓により、空中にいるような感覚さえあるが、暗く細い廊下を通ってくるだけに、明るい印象と解放感が一層強調されるようだ。

居室には2台のベッド、リビングスペース、デスクを中心としたワークスペースが設けられているが、空間的な余裕はさほどなく、どちらかというと手狭な部類だろう。以前利用したベイビュー側のコーナールームでは、デスクが室内に向いてカーブを描いて迫り出していたが、ここでは壁向きにスッキリ収まっている。テレビはデスク前の壁面の棚に置かれており、部屋のどこから観るにしても位置が悪いし、テレビそのものが小さすぎるが、大型テレビを導入しようにも置き場がないのが現状だ。

実に奇妙なのが高さの異なるベッドである。窓に近い方のベッドは、23センチ厚のマットレスを使い、高さが55センチあるのに対し、もう一方はマットレス厚が18センチで高さは60センチと、たかが5センチの差ではあるが、これでバランスと美観は完全に崩壊している。それは、窓から遠い方のベッドの下にトランドルベッドが隠されているためで、3名利用に備えて最近導入されたものと思われる。

なぜエキストラベッドではだめだったのか。やむを得ず第3のベッドを導入するにしても、どうして左右ベッドのバランスを保たなかったのか。これでは見た目が悪いし、ベッドの寝心地にも左右で雲泥の差があり、とても高級ホテルがすることではないという気がするだけでなく、このホテルの意識がもはやその程度でしかないことを物語っているようで残念だった。

朝食は6時半に一番乗りした。だが、イスや床にはパン屑が散らばっており、だらしなさ丸見え。ブッフェ台に置かれた皿は湯気が出るほど熱く、サラダやフルーツを盛り付けるには不適当だった。この時、卵料理をホールでこしらえるために料理人がブッフェ台の前に待機していたので、皿が熱いことが何気なく伝わるような素振りをしてみたところ、歳のいった料理人はそれにすぐ気付き、皿の温度を確かめた後に、パントリーに入って若いスタッフを叱りつけていた。

サービスは陰気というか、だらしなさが目立っていた。これを見てしまうと、ランチやディナーに来て高いものを注文してみようなどという気は、決して起こらなくなってしまう。