「おかえりなさいませ」。メインエントランスでそう言って出迎えてくれるホテルは、長年泊まり歩いていても、そうそう出会えるものではない。ただ決まりごとだからではなく、表情をひときわ輝かせながら誰と判って声を掛けてくれるのは、大変うれしいものだ。しかも通い詰めているホテルならともかく、開業して1年に満たないばかりか、数えるほどしか利用していなければ、よころびもひとしお。
その心地よさは終始続いた。チェックインはマネージャーが自ら担当してくれたサインだけの簡単なもの。案内された客室はすでにターンダウンが済み、いつでもベッドに滑り込めるようになっていた。今日ターンダウンしたのは、アルバイトの女の子だろう。枕の置き方だけでわかる。氷が用意されてるが、ほとんど融けていないので、まだターンダウンをしたばかりらしい。
部屋の様子は変わりないが、ミニバーにグラスがなくなり、焼き物のタンブラーが冷蔵庫内に用意されるようになった。ビールに合う器をリクエストする声が多いのに応えた結果らしいが、どうもこの部屋のインテリアには合わないし、ビールには確かにいいが、これでミネラルウォーターはかっこ悪い。
滞在中に速達を出す必要があったので、フロントでいつ投函に行くのか尋ねたところ、「今すぐ出しに行って参ります」との積極的な返事。自分で出しにいけとか、いつになるかわからないなどという対応しかできないホテルも少なくないだけに感心した。いつでも気を引き締めているところが、今後の成長を予感させるホテルだ。
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