お誕生日席 |
2007.03.24(土)
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ストリングスホテル東京 The Peak Suite | |
The Strings Hotel Tokyo |
楽-3
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チェックインはこの上なくスムーズだった。ロビー階でエレベータを降りると、顔なじみのマネジャーが待ち構えており、フロントに立ち寄ることなくそのまま客室へ案内された。客室で手続きをするのかと思ったが、レジストレーションカードにサインをすることもなく、すぐさま部屋を使わせてもらえた。まさに顔パス。テーブルに用意されたカットフルーツの盛り合わせとバースデー仕様のテディベアを見つけると、マネジャーから「お誕生日、おめでとうございます」と言葉を掛けられた。照れくさそうなマネジャーの仕草につられて、思わずにんまり。だが、こうした心遣いは嬉しいものだ。
今回の客室は、最上階の東京ベイ側コーナーに位置し、リビングダイニング、ベッドルーム、バスルームからなる最上級のザ・ピークスイートだ。このホテルは、いわゆるプレジデンシャルスイートのような象徴的意味合いのスイートは持たず、他の同カテゴリーホテルと比較すると、最も低価格の客室と最高級スイートとの差が小さい。多くの高級ホテルでは、最安と最高との差が料金・広さともに5倍から20倍にもなるのに対し、ここでは4倍程度に抑ええている。それでも、104平米という最高級スイートにしてはコンパクトな面積に対し、料金は高めだ。 エントランスを入ると、照明を抑えた前室があり、そこを抜けると左右にリビングダイニングが広がっている。かなり横広で細長い印象の空間で、そのど真ん中に太い柱があるが、四方をミラー張りにすることで鬱陶しさを格段に軽減している。柱の脇にはライティングデスク、チェス盤の載ったゲームテーブル、フルボトルのリカー類を載せたワゴンがある。このリカーも、冷蔵庫のドリンク類同様無料のようだが、結局手をつけることはなかった。 リビングには、3人掛けソファ、オットマン付きソファ、レザーのカウチベッドが、ガラスのラウンドテーブルを囲むように配置され、カーペットの上に毛足の長いブルーのラグマットが敷いてある。だが、このラグマットが部屋の平行線に対して曲がって敷かれていたり、ラグマットの上に置いた家具がその長い毛足のせいで不安定に傾いていることが気になった。テレビは42インチで、SONYのホームシアターシステムを備える。家具のチョイスや配置の工夫により、レジデンシャルな雰囲気のあるリビングにまとまっている。 一方、ダイニングは反対側のコーナーウインドウに面しており、リビングと同じラグマットを敷いてシンメトリックな一貫性を持たせたが、リラックスしてくつろげる雰囲気のリビングに対して、ダイニングはスッキリと引き締まった印象になっている。木製のテーブルにベロア地のイスを8脚を添え、直方体のペンダント照明が優しく照らす。脇のキャビネットには4名分の食器類が収められている。 だが、不思議なのは、専用のドアを設けたパントリーがリビング側にあることだ。この配置では、仮にこのスイートで会食をする場合など、食事はいちいちリビングを経由して運ばなければならず、スマートに事を運ぶことの妨げになるだろう。 ベッドルームはコンパクトなサイズだが、寝室が広すぎるとかえって落ち着かないので、この感じは悪くない。200センチ幅ベッドが置かれ、窓際には白いイスとテーブル。ベッドの足元にある棚には、小さなテレビとオーディオセットのほか、いくつかのオブジェが飾ってある。窓の反対側にはクローゼットとドレッサーが並び、なかなか居心地はいい。リビングダイニングとベッドルームは、それぞれ独立した調光システムを採用しており、シーン設定や細かい調光が可能。カーテンは電動式だが、ドレープのヒダがキレイにまとまらないのが気になった。 バスルームの造りは、この部屋のひとつ下のカテゴリーにあたるザ・スイートと同等だ。ダブルベイシン、独立したトイレ、窓際に配したジェットバスと洗い場スペースなど、設備的には申し分ないのだが、照明がどうにも明るすぎて気に入らない。居室の調光システムを、なぜバスルームにも採用しなかったのかが悔やまれる。また、バスタブのあるウェットスペースは、窓からの冷気により、いつでも寒くて困るし、すぐに窓が曇ってしまうので、眺めを楽しみながらの入浴は至難の業だ。 アメニティは標準客室とそれほど違うわけではない。いくつかのアイテムが加わったり、歯磨き粉のサイズが大きくなる程度なので、スイートだからと特に気を配っている様子は伺えなかった。また、清掃はよく行き届いており、申し分なかった。 ここまではよかったが、残念なことはまたもディナーに予約したレストランで起こった。ここのレストランは鬼門なのか。予約はチェックイン時に出迎えたマネジャーを通して入れてもらった。時間通りにロビーに行くと、マネジャーが待っていて、店まで先導してくれた。店の入り口まで来たところで礼を言って別れ、あとは店のスタッフが席まで案内した。 だが、その席はキライな狭苦しい席。店はそれほど混み合っていないのに、2名用の小さなテーブルをビストロみたいに狭い間隔で並べた席だった。しかも、両脇のテーブルにはすでに客がいる。ふらっとランチでも食べに来たのなら、まだ我慢しないでもないが、早い機会にマネジャー経由で誕生日の食事を予約したにもかかわらずこれでは、納得が行かない。しかも、前回にも席のアサインのことで苦情を言ったのだから、店はどのような対応を期待されているかを、承知していなければならない立場である。 そして、今回、それほど気が進まないのにこの店を選んだのは、前回の汚名返上の機会を与えるためでもあった。あえて「狭い席は勘弁してくれ」などと付け加えるのは、係に対して失礼だと思って差し控えたが、とんだ見当違いであり、期待は見事に裏切られた。 そもそも、この店は席の配置に偏りがあり過ぎだ。ゆったりとした円卓や、喫煙席セクションのゆとりある空間の取り方と比べると、その狭い席のコーナーはまるで喫茶店。席の優劣が顕著であることを店はしっかりと認識し、どうしても席の割り振りの都合が付かないのであれば、客に断わりを入れてから予約を取るべきである。結局、ベンチシートの円卓が用意されたが、すでに食事をする気分は萎えていた。そこへマネジャーも詫びにやって来たので、気を取り直して料理を注文することに。 料理はよく出来ていた。オーセンティックな素材と、新しい感性の出逢い。一時期よりもけれんが減り、印象がよくなった。だが、サービスの洗練は料理に遠く及ばない。いちいち空いた皿を下げていいかと確認して鬱陶しいし、「かしこまりました」は短縮形が出現し「かしこした」としか聞こえなかった。 パブリックスペースのBGMは1日中JAZZ。夜はまだしも、朝食時には勘弁してほしい。このアトリウム空間に、音楽は不要。人の動きや、食器の音だけで、十分よい雰囲気になるはずだ。 |
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