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ザ・キャピトルホテル東急 Deluxe Room |
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The Capitol Hotel Tokyu | 2010.11.19(金) |
東京都千代田区 | 哀-3 |
ARCHIVES ・ 1992 |
新しいキャピ 2006年11月30日、40年以上に渡る歴史にピリオドを打ち閉館したキャピトル東急ホテル。今なお、昔のホテルを懐かしむ人は少なくないだろう。 その跡地に約4年の歳月を費やし完成した東急キャピトルタワーは、地下4階、地上29階建ての複合ビルとなり、その中にザ・キャピトルホテル東急がオープンした。かつてのキャピトルの血統がどれだけ受け継がれているのか、あるいはまったく新しい別のホテルとして生まれ変わったのか、興味は尽きない。 予約の受付を開始した時点で、オープン初日の宿泊を予約してあったのだが、あいにく仕事の都合でキャンセルせざるを得ず、改めて訪ねる機会を得たのが、約一ヶ月後のこの日だった。 日枝神社や首相官邸に隣接する立地はもちろん、傾斜地の建築という点も以前と変わっていないが、車で訪れる場合、エントランスの場所がややわかりにくくなった。一度わかってしまえば心配ないが、初めての時は地図で道を確かめておいた方がいい。 真新しいビルはさすがにフレッシュだが、さほど目を引くデザインではなく、目の前の山王パークタワーが放つ個性に埋もれているようにも見える。ビル周囲の公開空地も広々としており、ゆとりが感じられるものの、高級ホテルの存在を予感させるものがなく、少々拍子抜けでもあった。 それにしても、心機一転、外資系ラグジュアリーブランドホテルに挑戦するほどの高級路線を行こうと目論んでおきながら、なぜホテル名に東急の文字を残したのかが不思議。スッキリと「ザ・キャピトルホテル」にした方が高級感があるし、ホテルとしてトップを極めようという意気込みも伝わるだろうに。 建物内の動線はホテルとオフィスとで完全に分離されており、ホテル用スペースも十分にゆとりある空間設計がなされている。1階のエントランスから3階ロビーに至る動線や、地階にある地下鉄駅からの連絡口も、空間と意匠が巧みに溶け合い、美術館を思わせる雰囲気を醸す。だが、わかりやすさを犠牲にした感は否めず、実際、ロビーがどこだかわからずに右往左往する客が多数見受けられた。 正面玄関車寄せは3階ロビーに面している。車でのアクセスもわかりにくく、以前のキャピトルを知っている人は、余計に混乱するように思われる。 正面玄関に控える係も頼りなかった。自分のショーファーに送らせて到着した時のこと。荷物を下ろすよう頼んだところ、返事をするより先に「駐車料金は1泊4,000円になります」と言い出した。藪から棒とはこのことである。風格のあるドアマンは見当たらず、若い女性が立っているのだが、それだけでも高級ホテルの雰囲気は崩壊している。 ロビーには前キャピトル時代から受け継がれた大きな装花が飾られている。吹き抜けや階段を配したロビーは、屋内外に水をあしらい、動的でありながらも落ち着いた風情を醸している。ただ、ホテルとして華がない。せいぜい上品なレジデンスといった趣きだ。 宿泊のレセプションカウンターは、正面玄関を入り左方向に進んだ奥にある。そこは位置的にも空間的にも中途半端な印象があり、どうにも落ち着かない。フロント係の接客ぶりも暗く、ホテルに着いた瞬間から下がり始めたテンションが地に落ち、更にどんどん気が滅入る。 客室への案内は、これまた不慣れな若いベルアテンダントが行った。荷物を載せたカートの扱いもあぶなっかしい。エレベータホールはフロントカウンター脇にあり、4基が客室階へと続いている。造りや雰囲気はセルリアンタワーによく似ており、セルリアンよりちょっと渋い感じだ。 客室階は照明を落としてあり、陰影が強調されている。客室ドアは明るい色調の木目で、客室番号めがけてスポットライトが当たる。まだ新しいからか、さまざまな建材のにおいが入り混じり、目にも刺激が伝わってくる。 客室は5階と18階から29階にあり、27階から29階はクラブフロア。スイートは5階と27階から29階にあり、特に5階にはガーデンに面したユニークなスイートが揃っているという。まずはこのホテルの最も標準的な客室であるレギュラーフロアのデラックスルームを利用してみた。 デラックスルームの面積は45平米。ベッドタイプはキングベッド1台もしくはシングルベッド2台のハリウッドツインがあるが、このホテルではいずれも「デラックスキング」と呼んでいる。 客室に入った第一印象はなかなかいい。和の趣きを外国人の視点で解釈した内装は、和の感性が今や世界的に通用するものに広がったことを示しているかのようだ。そして横広のフロアプランにより、窓が横幅広く取られて明るいのもいい。 家具はいずれも色彩感や装飾を控えながらも、空間によく馴染んでいる。窓際にカウチ型ソファを置き、大きな窓を背にくつろげる格好。デスクは壁を向いているが、トップが広く使いやすい。添えられた馬蹄型のチェアの曲線がアクセントになっている。脇に置かれたテレビは40インチ。デスクもテレビ台も、下は空間になっており、スッキリさせている。 ベッドは心地よいマットレスやベッドリネンを使っており、申し分なく快適だが、ベッドメイクの仕上げが乱雑なのが気になった。写真は自ら整えた後のものだが、乱れたメイクではせっかくの端整な意匠が台無しである。ベッドボードに間接照明が施されている点もセルリアンに似ている。 この部屋で最もユニークかつ斬新なのは、居室とバスルームやホワイエを仕切る障子風のスライディングドアだ。スライドするのは1枚なので、完全に閉じることはできないが、ドアの位置により、バスルームまたはホワイエを仕切ることができる。 バスルーム部分を開放すれば、シャワースペースから居室越しに外の景観を望むことも可能だ。また、ベイシン部分に外光が入れば、メイクアップの際にも役立つことだろう。一方、ホワイエを仕切れば、内扉の役を果たし、居室のプライベート感が一層高まる。 ホワイエにはミニバーのみを設置。ゆとりある空間だ。ミニバーには豊富な飲みものを用意した冷蔵庫の他、3種類のグラス、カップ&ソーサー、ティー&コーヒーセット、ミネラルウォーターがある。 バスルームは、シャワースペースとバスタブのあるガラス張りのウェットエリアと、ベイシンとクローゼットを配したドライエリアに分かれている。クローゼットはオープンな造りで、石のバゲージ台の上がハンガーレールと棚になっている。 ベイシンカウンターも石。トップが広く使いやすい。スツールを添えてあり、メイクアップカウンターとしても使える。 ウェットエリアの内部も石造りだが、本磨きにせず、シックな印象。バスタブとシャワースペースが隣接した洗い場式で、ハンドシャワーとレインシャワーを備えている。 バスアメニティはオリジナル。茶や桜といった、日本の香りをモチーフにしている。タオルやバスローブも肌触りがいい。トイレはスライディングドアで仕切られた個室。ベイシン部分とトイレ内は石床で、クローゼット部分はカーペット敷きになっている。 デラックスルームからの眺めは、国会議事堂側と日枝神社側の2通り。いずれの側でも眺めはいいが、キャピトルという名からもイメージされる国の中心部にいることを実感するには、国会議事堂側の方がそれらしい。特にライトアップされた国会議事堂と、皇居越しに連なる高層ビルやスカイツリーの景観は、いかにも首都東京的で印象深い。 滞在しながら思ったのは、もはやここは以前のキャピトルではないということ。かつてキャピの相性で親しんだホテルの面影はほとんどない。従業員に同じ顔ぶれはほとんどなく、若く不慣れなスタッフが多いことも、連続性を感じさせない要因だ。 それにしても、開業早々強気の値段設定には驚きを禁じ得ない。高品質であれば高くても客は来る。そんな幻想は、今のホテルではなかなか成り立たないのだ。少なくとも、閉館直前のキャピトルはずいぶんと値崩れしていた。それは同時に高いコストパフォーマンスを印象付けた。 だが、新しいキャピトルは名だたるラグジュアリーホテルと肩を並べる値段で売っている。かつての顧客は、もう他の住み家を見つけたとか、すでに他界した人も少なくない。もはや古い顧客に頼らず、新しいパトロンを見つけなければなるまいが、他のホテルと比べて特段魅力的と言える要素がなく、軌道に乗せるのは楽でないだろう。 いずれ息切れして安売りを始めるのは目に見えているが、強気に馴染めなかった客が離れた後では、安売りしてでさえも苦戦が続くのではないだろうか。 |
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