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2003年5月11日

キャピトル東急ホテル Executive Room
怒-3 フロントは宇宙人
いつも見事なロビーの花
キャピトル東急ホテルのサービスには、大きな信頼を置いてきた。ヒルトン以来のアメリカンスタイルの合理性と、日本的な奥ゆかしさを併せ持つ、東京でもトップクラスの安定したサービスを貫いて来た。客層に恵まれた立地で40年間磨き上げてきたその信頼を、この先も守り通せるのか心配になるような滞在になってしまった。

エレベータホールをはさんで左手にレセプション、右手にキャッシャーというユニークなレイアウトのロビーは見通しがよく、いつもくつろぐ人や待ち合わせの人たちで賑わっている。そうした人々を見守るように、ベルマンたちがキリッとした表情で立ち、何か頼めば颯爽とそれをしてくれるというのが、キャピトルのいつもの表情だ。チェックインは、たまに愛想のない係がいるものの、迅速な対応にカバーされて、いつでも滞りなく行なわれてきた。

この日、カウンターには3人のフロントクラークがおり、右端のカウンターではクラークがチェックインを行なっていて、6〜7人のゲストが固まっていた。ほかふたりは手すきだったので、中央のカウンターで名前を告げたところ、「お並びいただいてます」と厳しい表情で門前払いされた。まぁ、隣のグループももうチェックインが終わるようなので、仕方がなかろうと思い、隣のグループの後ろについた。しかし、一グループと思ったゲストは、実は2つのグループだったようで、また次のチェックインが始まってしまった。

痺れを切らして、先ほどのクラークにチェックインしてくれないかと頼むと、いかにも不機嫌な表情で不承不承手続きを始めた。すると今度は予約した料金より倍近く高い価格を提示され、それはおかしいと言うと、予約係に確認してくると後ろに引っ込んだきり、長いこと戻ってこなかった。引っ込むより前の時点で、この子じゃダメだと思ったので、マネージャーを呼んでほしいと言たのだが、そのマネージャーも一向に現れなかった。

5分ほどしてその係が戻ってきて言うには、提示した料金は間違っていないはずだという。しかし、こちらは予約時の画面のコピーを持っていたので、それを示して、このとおり書いてあるではないかといっても、料金は間違っていないの一点張り。まるでSF映画で宇宙人に乗り移られた人間のような冷やかな表情のまま、最後の最後まで一言たりとも詫びの言葉を口にしなかった。

値段の間違いはフロント係の責任ではないにしても、問題が起こった時に相応しい態度とはどういうものか、まったく知らずしてフロントに立つ資格はない。そして、カウンターにいる他のベテラン係も、手が空いているにもかかわらず、その子に決して助け舟を出すことはなかったことも情けない。その子だって悪気はないようだったし、別のところであったなら案外勝気なところを評価できたかもしれない。フロント以外のセクションで彼女の力を発揮させてやるべきだと思う。

エグゼクティブルームには、テンピュールのマットレスとピローを使ったベッドが入っている。改装当初はテンピュール独特の感触に違和感があったが、何度か利用して慣れてくるにしたがって、すっかりお気に入りになった。掛け布団も軽やかで、ぐっすり眠れるし目覚めも爽快だ。スッキリとレイアウトされた室内には、余計なものはないので、約32平米という面積よりも広く感じる。アールをえがいた広いライティングデスクは窓を向いており、外の景色を眺めながら作業ができるが、デスクの引き出しは浅くて使い物にならないし、LANもないので、あまり実用的な感じはしない。

バスローブやアニックグタールのアメニティ、上質なタオル、大理石のバスルームなど、それなりに気合が入っているのだが、どことなく及第点には足りない気がする。館内もレストランは充実しているが、それ以外余暇を埋める施設はほとんどないので、時間をもてあましたらテンピュールベッドで眠るのが一番だ。また、9階エレベータホール脇に、「エグゼクティブラウンジ」と書かれた部屋がある。ご丁寧に営業時間も書いてあるが、様子を見ようとその時間内に出向いてみても、一度も開いていなかった。

明るい室内 木目が基調のエントランス付近

ベッドサイド テンピュールベッド

デスクまわり オットマン付き肘掛け椅子

2003年5月4日 昼
キャピトル東急ホテル 「ケヤキグリル」
哀-3 形式主義
ケヤキグリルのエントランス
地下1階のレストラン・バーが全面改装を終えてオープンしたのは4月の中頃だった。改装前は確かに古くなっていたが、それなりに大切に使われてきた結果、新しい施設には真似のできない風格を携えていた。そして、施設同様に磨きの掛かったサービスや気質は、このレストランフロアのみならず、キャピトル東急ホテル全体にとって、かけがえのない財産のひとつだった。

エレベータで改装を終えた地下1階に降り立つと、「みさおラウンジ」があった場所は、ひろびろとしたシンボリックな空間に生まれ変わり、エレベータから見ると正面にある大きなレセプションデスクが目に飛び込んでくる。その威圧感のあるデスクに立つ係と目が合うやいなや、すかさず「どちらをご利用ですか?」と尋ねられる。もちろん、それは親切に案内をしようというサービスの一環だと思うが、どんな店があるのかな?とふらり様子を見に来たゲストにとっては、ちょっとした余計なお世話にもなりかねないような雰囲気だった。

そのレセプショニストに「ケヤキグリル」を予約している旨を伝えると、にこやかに案内をしてくれた。予約を入れたのは、ここに来る直前だった。その際、ジャケットの着用を要求されたが、あいにく準備がないので、貸してもらえるよう頼んでおいた。そのジャケットを手にとって店内へと進むと、店員の多くはベストにタブリエというスタイルだし、ほとんど女性ばかりのゲストたちも、サンダルやジーンズなど、ご近所にダイコンを買いに出たついでに立ち寄ったのかと思うほどの軽装ばかり。

そんな中、インナーと似合いもしないジャケットに袖を通していることがばかばかしくなり、着ることをやめた。このように形式だけ固めるという方策は、あまりに稚拙で付き合いきれない。ディナータイムならいざ知らず、よほどの高級店でもなければランチタイムのジャケット着用は不要だと思う。

店内は、以前からのケヤキ材の壁や、シャンデリアをそのまま活かしつつ、モダンでシャープなインテリアになった。開業当時から続く、オープンキッチンのスタイルもそのまま残した。案内された席は、ちょうどオープンキッチンやパントリーから近い席で、どうしても従業員のコミュニケーションや慌しい動きが目や耳を刺激して落ち着かなかった。さらに、バックヤードへと続く扉が開くたびに、モップなどの清掃用具が目に入る。それでは、どんなにいい雰囲気であっても興ざめしてしまう。

ランチタイムのメニューは、2,800円のクイックランチから、7,000円のスペシャルコースまで種類が豊富にあり、女性を対象としたコースも充実している。もちろん、アラカルトも用意されている。皿は一新され、セルリアンタワー東急ホテルの「クーカーニョ」を思わせるモダンで個性的なものになり、盛り付けもそれに合わせた独創的なもの。サービスは至ってクールだが、その無駄のないスタイルがかえって心地よい。

内装とともに、大きく様変わりした「ケヤキグリル」。今のところ料理やサービスはかつての流れを踏んでいるように見受けられるが、微妙に道から外れだしているような印象もあった。キャピトル東急40年の歴史で培ったものは何か、キャピトル東急ホテルとして大いに胸を張れるものは何なのか、今一度振り返ってもらいたい。それらが目先の新しさに埋もれてしまわないよう願うばかりだ。

[キャピトル東急ホテル] 960217 990103 990618 000504 000805 010407 010628 010818 010923 020222 020302 020524

Y.K.