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グランド ハイアット 東京 Grand Room  
Grand Hyatt Tokyo 2011.11.18(金)
東京都港区 怒-5

毛利庭園

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厚顔無恥


グランドハイアット東京のある六本木ヒルズは、都内でも有数のイルミネーションスポット。この時期、けやき坂や毛利庭園には、淡いブルーの電飾が無数に施され、銀河やホタルの乱舞を思わせる美しさだ。

この日とその前の週に、続けてグランドハイアットに連泊した。夢のようなイルミネーションとは対照的に、いずれも滞在も満足に程遠いばかりか、これほどひどいホテルが他にあるかと呆れ果てるばかりだった。

かといって、万人にとって最低なホテルだというわけではなく、多くの場合は快適な滞在を提供しているらしく、あいかわらず屈指の人気を博している。単に相性が悪いのか、貧乏くじのすべてがたまたま回って来たのか、とにかく踏んだり蹴ったり。思い出しても腹が立つ。

エレベータホール

この日チェックインしたのは20時。10階のグランドクラブラウンジは、カクテルアワーの名残りでかなり賑わっていた。福島で1週間の演奏会を終えての帰京で、はやくシャワーを浴びて休みたいと思い、ルームキーを受け取って部屋へと急いだ。

客室ホワイエ

用意された客室は42平米の標準ルーム。デラックスルームにアップグレードされることもあるが、この日は週末で混雑しており、広い部屋は埋まっているとのこと。ここの標準ルームはなんとなく窮屈で好きになれないのだが、高層階の開けた眺めが救いだった。

デスクから窓を見る

福島では子どもたちが大きな花束をくれた。それを花瓶に飾り、枯れるまで眺めて子どもたちとの思い出を愛でるとしよう。花瓶はチェックインの際にリクエストしたので、ほどなく届くだろう。

福島県の担当者からは福島の銘酒を贈られ持ち帰った。要冷蔵とあるので早速冷蔵庫で保管しようとしたが、室内の冷蔵庫にはすでに一部の隙もなく飲み物が詰まっている。花を飾ったら、グランドクラブラウンジで預かってもらうとしよう。

テレビ前からバスルームを見る

だが、待てど暮らせど花瓶は来ない。最初はライティングデスクの上に花束を置いて待っていたのだが、一刻も早く水につけるべきだと思い、バスルームのベイシンに水をためて、花束を立て掛けた。

かれこれ30分経つが、花瓶は来ない。届かないのは、何かの手違いかもしれないと思い、デスクに向かい客室係に電話をしてみることにした。電話に応じた係は「ただいまからお届けします」との返事。

それを聞きながら気付いたのだが、デスクの上に、ビールかコーラのような飲み物がグラスの形に付着し、半ば乾いてベトベトになっている。電話口の係に、ついでにデスクの上を掃除して欲しいと付け加えて受話器を置いた。

デスク

花瓶より先に、掃除係が来た。掃除係に花瓶を持たせりゃいいのにと思ったが、ホテルにも事情があるのだろう。汚れの箇所を伝えると、係は乾いた布を使って、まるで厚化粧の涙をぬぐうように、デスクをそっとなぜている。

しばらく様子を見ていたが、たまりかねて「そんな調子じゃ、朝までこすっても落ちないのでは?濡れた布でふくとか、専用の洗剤を使うとかした方がいいのでは?」と突っ込んでみた。

返事はないが、反応はあった。もしかすると日本語が未熟な外国人なのかもしれない。彼女は黙ったままバスルームに行き、花の入っているベイシンで雑巾をゆすぎ始めた。一瞬、我が目を疑った。客の目の前で、これから客が顔を洗ったり、手をゆすいだりする唯一のベイシンを使って、清掃用の雑巾をゆすぐとは。しかも、そこには福島の子たちの気持ちが詰まった花束が入れてあるというのに。

バスルーム

次の瞬間、驚きは怒りに変わったが、この清掃係を叱責しても仕方がない。彼女には悪意はなく、客用のベイシンで雑巾をゆすぐのがいけないことだということすら知らないのだ。だが、ここは東京でも指折りの高級ホテルである。教育不足の責任は、マネジメントにある。

バスルーム

責任者を呼ぶと、ずいぶん待たされた後にやって来た。事の次第を説明し、反応を待った。すると、教育不足を詫び、二度とないようにするという、お決まりのセリフを聞かされた。大切な花を穢したことを詫びて欲しかったが、それはとうとう聞けなかった。

来たついでに、バスルーム内に見つけたジェル状のものがこぼれたままのところを掃除して欲しいと頼んだところ、責任者ともあろうものが、靴のまま浴室に入り、コツコツと音を立てながら作業する。

バスルームは客が素足で利用するところだ。ホテルの人間が靴のまま入るなど、許されない。責任者がこの程度の感覚だから、他の者たちも信じられないような行動にでるのではないだろうか。このホテルでは、客がいない時、どんな風に清掃しているのだろう。それを見てしまったら、二度と泊まる気になれなくなるかもしれない。

バスルーム

やっと花を飾って、今度は酒を預けにラウンジへ。部屋の冷蔵庫が満杯だから、ラウンジの冷蔵庫に入れておいて欲しいと頼み、要冷蔵と書いてある部分を指さしながら渡した。あとは係がやってくれるだろう。

せっかくいただいた酒だ。どんな味わいなのか、しっかりこの身で味わって、次にお会いした時には、気の利いた感想を述べられるようにしておこう。翌日、そう思いながらラウンジに酒を受け取りに行くと、なんとレセプションデスクの後ろに、雑多な荷物と一緒に置かれているではないか。

係に「冷やしておいてくれなかったの?」と聞くと、「大丈夫です、ちゃんと立てて置いておきました」との返事。あなた、日本語ダイジョウブ?

石

花だけでなく、酒までもか。どこまで踏みにじれば気が済むんだ。要冷蔵の酒を一晩常温にさらしたとて、鈍いこの舌には違いなどわからないかもしれない。だが、「これは福島の誇りです」と手渡される際の、この上なく丁重な扱いを見てしまったこともあり、その誇りを穢してしまったような気がして、何とも無念だ。

まずは、人任せにした自分の軽率さを呪った。だが、ホテルもホテルである。散々不手際があった後に、酒一本まともに預かれないのか。

対応に出て来た料飲の責任者からは、お詫びに同じ品を用意するとの提案があった。確かに味を見るだけなら、代替品でも事は足りる。だが、この度の気持ちが込められた一瓶に代替品はない。それでも、探すと言い張るので、好きにしてもらった。

だが、幻の名品は、都内の酒屋を方々探しても見つからなかったとのこと。そんなこったろうと思った通り。驚いたのは次に出たセリフ。「私どもの日本酒セラにはさまざまな銘酒が揃っていますので、その中からお好きなものをお選びください」。

どれだけ言葉を尽くしても、このホテルの連中には理解できないのだろうか。酒が飲みたくて騒いでいるのではない。「あなたがたが穢したものが何なのかわかっていますか」と問いかけているのだ。

これらはほんの氷山の一角。その後も細かいミスの連続。人間なのだから間違いがあるのは仕方がない。だが、そこから何ひとつ学ばないのは、愚の骨頂である。それでも「私たちは一流ホテルです」と胸を張れるのだから大したもの。厚顔無恥とはこのことだ。

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グランド ハイアット 東京

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