六本木ヒルズの人出にはいつも驚くばかりだが、グランドオープンから半年が経ったグランドハイアットには、心なしかゆとりが見えるようになってきた。スタッフたちも尋常ではない混雑に心身ともにすり減らしているに違いないが、疲れを感じさせない爽やかなサービスをするスタッフに接する機会があり、とてもいい印象を受けた。かと思えばそれを台無しにするような心ない振る舞いしか出来ない者も一部ながらいる。東京新名所にある最新ホテルは、接するスタッフによって印象が180度違ってしまう、惑いの森のようだった。
チェックインを担当した女性スタッフは優秀だった。混雑するでもなく、落ち着いたフロントカウンターでは、とても丁寧なサービスで手続きが行われた。レジストレーションカードに住所を記入すると、自分もその近所から通っているという話題を投げかけ、ゲストと積極的に会話をする心がけが感じられた。この時ベルが出払っていたので、案内を断って自ら先に客室へ向かった。荷物は後に届けられたが、随分と時間を要した。
客室は17階だったが、森タワーが目の前にそびえる向きのため、視界はかなりふさがれている感じだった。わずかに開けた隙間から、東京タワーの全景が望めるのが印象的だった。開業当時に比べると、室内設備のマニュアルやヒルズのギフトカタログを常備するなど工夫を感じさせる一方で、早くもルームサービスメニューが値上げされたり、アメニティが一部簡素化されるなどの後退も見られた。清掃はほぼ行き届いているが、タオルの数枚に髪の毛がからまっていた。また、スタイリッシュなベイシンは、排水が悪く使いにくい。
シンプルな寝具は、フレッテのシーツを使い、軽やかで肌触りがよく快眠できる。その他、設備としては非常によく吟味されており、多くの部分で群を抜く快適さを与えてくれる。しかし、パークハイアットと肩を並べるほどの高価格であることを考えると、コストパフォーマンスが優れているとは言えない。とりわけ駐車場代の2,000円が高く感じる。
また、数々の場面で人手不足を印象付けられた。これほどのホテルであれば、必要な頭数くらいは揃えてもらいたいものだ。チェックイン時はゆとりがあったので丁寧なサービスが心地よかったが、チェックアウト時には列を作らされ待った挙句に度を越した丁寧さでサービスされ、逆にイライラした。この状況下でバカ丁寧の必要はない。適切な濃度のサービスを提供できるように、場や空気を読める能力を身に付けるべきだろう。
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