車での到着は気分のいいものではなかった。センターループからアクセスする車寄せは、完全に屋内に位置し、時には大型バスも入ってきて慌しい雰囲気になる。複数のホテルスタッフがサービスに当たっているが、その素振りにホテルゲストを歓迎するムードはなく、険しい表情を崩さないまま淡々と作業をこなすだけだった。
車から荷物を運び出す際も、まるで建築現場で資材を扱うが如し。プレスしたばかりのスーツを掛けてあるハンガーは肩を鷲づかみにして運ぶ始末だ。ハンガーは常に吊り下げ部分を扱い、カバー越しにも生地に触れないよう心がけるなど、基本中の基本だ。鷲づかみにされたハンガーは、フロントマネジャーに申し出て、30分以内にプレスをやり直させた。
一転してチェックインは大変感じがよかった。細かいリクエストにもよく耳を傾け、すべてを実行してくれた。手続きが済んだ時、たまたまベルが出払っていたのだが、彼女は自ら客室まで案内するほど機転が利いた。しかし、部屋に入ると他人宛てのメッセージカードとフルーツがテーブルにセットされていた。どかしてもらえば済むことかもしれないが、他人の部屋に入り込んだようで気分も悪い。係はこちらが頼むまでもなく、別の客室を用意するといい、部屋を後にした。すぐにフロントマネジャーから、新しい客室と「正しい宛名」のフルーツやチョコレートを用意すると連絡が入り、程なく新しい客室に落ち着いた。
いくつかすべき仕事が残っていたので、まずは片付けることにした。頭を集中させようとすると、廊下から積み木を倒すような音が響く。ドアスコープを覗くと、目の前が氷のディスペンサースペースだった。ゲストが氷を取りに来る度に音が気になった。バックヤードへと続くサービス用の出入り口も近くにあり、ワゴンの音などが絶えず聞こえる。
客室入口がフローリングなために、音がよく反射して大きく聞こえてしまうのだ。扉の下の空間も広いので音が通りやすい。いたたまれずマネジャーに相談すると、現在も扉の下にパッキンを入れられないかなど検討しているところだという。とりあえず氷ディスペンサーの電源をオフにするなどの対処をしてくれた。
夕刻にターンダウンに来たのは、気のいいおばちゃんたちだった。和気藹々とテンポ良く仕事をしている様子が微笑ましかった。ベッドサイドの時計が5分進んでいたので、直してほしいと頼むと、「こういう新しい機械はどうも苦手で、スイマセン」といいながら、どこかへ持っていって直してきてくれた。彼女らがこのホテルで一番人間的かもしれない。
夜になって、どうしても自分のパソコンから番号通知でFAXを直接送信する必要が生じた。しかし、客室の電話回線からは186発信ができなかった。アシスタントマネジャーに、別回線を立ち上げることでそれが可能かを尋ねると、調べて折り返し電話をするとのこと。25分の後、電話が鳴って「お休みのところ恐れ入ります」と切り出した。
こちらは今か今かと首を長くして返事を待っているのに、お休みのところとはこりゃ如何に。更にこのホテルの交換台は186発信に対応していないので方法はないと言い切るのみで、代案などは出てこない。だが、多くのホテルではビジネスセンターなどに交換台とは別の回線を持っているはずなので、それを調べさせると可能であることが判った。
1泊2000円掛かる駐車場は、これまでチェックアウト日以内なら遅くまで駐車可能だったが、15時以降は別料金になってしまった。グランドクラブを利用しても、ヘルスクラブが有料になるなど、細かい点で段々と高くなってきた。
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