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パークハイアット東京 Park Suite | |
Park Hyatt Tokyo | 2010.08.28(土) |
東京都新宿区 | 哀-3 |
ARCHIVES ・ 1992 |
先の予約なので 正面玄関に到着すると、係は荷物を持ち、次いでロビーへと案内するために、館内へと先導した。歩きながら「お名前をフルネームでいただけますか」と尋ねられた。毎度のことなのだが、これにはどうも違和感をおぼえる。 業務上のこととはわかっていても、いきなりフルネームをと聞かれるとついつい身構えてしまうし、そう聞くあなたは誰なんだと言い返したくなる。海外で初めてのホテルに泊まる際など、入口で同様に名前を尋ねられることがあるが、大抵、係は先に自分の名を名乗り、「フロントまでご案内します」とか言った上で、客の名を尋ねてくる。 英語圏ですらこうした気遣いが見られるのに、日本を代表するラグジュアリーホテルにおいて、配慮に欠けたダイレクトな尋ね方をするのは感心しない。少なくとも「失礼ながら」という態度を見せて欲しいし、いきなりフルネームでなどと言わず、やんわりと「お名前を」と尋ね、下が知りたければ、さらに丁重に尋ねてもらいたい。 だいたい、正面玄関に立つ係には、その日にチェックインする客のリストが渡されているはずである。小規模なホテルなのだから、全員の名前を覚えることも難しくはないはずだ。しかも、繰り返し訪れている客に、毎度毎度名前を聞くようでは、ど素人としか言いようがない。ここはいいホテルだが、正面玄関の守備はまだまだ甘い。 レセプション係にバトンタッチしてからは、ベテランのスタッフが対応してくれたので、たいへん心地よく感じられた。安心感もケタ違いである。逆に言えば、安心できないスタッフに当たることもあるわけだが、それではパークハイアットの快適さを十分に感じとることはできないだろう。 さて、最初に用意された部屋はいつも通りの部屋だった。だが、夜になって目の前の道路で非常に激しい騒音を伴う工事が始まった。 工事が実施されることは、ホテルでも把握していたはずであり、それをアサインに反映できなかったのは、配慮に欠けると思われても仕方がない。ここは最高級ホテルなのだから。 だが、文句を言うまでもなく、レセプションに工事が騒々しいと告げるだけで、すぐにスイートが用意された。いや、すぐにというのは言い過ぎだ。というのは、土曜日で部屋がほぼ埋まっており、「周囲が静かな禁煙室」を調整するのには、少々時間要したのである。それでも、状況を考慮すれば、非常に迅速な対応だったと思う。 移った先のパークスイートは、これまで使ったことのあるものとは、若干異なる部分があり、興味深かった。まずは、入口の構造である。廊下から扉を入ると、ずいぶんと長い廊下状のホワイエがある。 そこは室内の専有面積でありながら、まるでパブリックスペースのような趣きの、微妙な空間だ。入ってすぐのところには、両脇が収納スペースになっており、ハンガーレールと、大型スーツケースやゴルフバッグでも余裕で入るような納戸が、それぞれ2か所設けられている。 そこから少し進むと、エレベータホール前のような設えの空間がある。パークルームに置いてあるのと同じライティングデスクが壁に沿うようにしてセットされ、両脇にふたつのイスが並んでいる。電話機やメモパッドもあるが、ここはワークスペースには向いておらず、インテリアデザインとしての設えに見える。 そのデスクの向かい側には、花台に載せられたメタリックな器がシンメトリーに置かれ、オブジェとして結構な存在感を放っている。ここまでの空間だけで15平米以上はある。 そして内扉があり、その先はお馴染みのパークスイートとほぼ同じ空間になっている。これまで利用したタイプでは、この内扉が客室と廊下を結ぶ唯一のエントランスだった。扉脇には、書物が開かれたコンソールとミラーが置かれている。 その先を、廊下に沿って進むとリビングルームへと出る。リビングには丸テーブルを囲んだソファセット、4人用のダイニングセット、テレビやミニバーを含むユニット家具とサイドボードが設置されている。 リビングの天井は高く、窓の上には額が飾られ、それぞれをピクチャーライトが照らしている。また、ソファの背面は石とミラーの組み合わせになっており、部屋をより広く見せる上でも効果的だ。 テレビやミニバーのユニット家具は、黒いシンプルな素材でできているが、立体的なデザイン性と、各アイテムを魅せる巧みなディスプレイで、チープさを打ち消して余りあるものを感じさせている。 また、この部屋は、外から見た時に3つある棟のちょうど接合部分に位置しており、外観上は総ガラス張りになっている場所である。なので、そうしようと思えば、全体を床から天井までガラス窓で囲まれた部屋にすることも可能だったが、他のパークスイートと同様の内装にしている。窓の形状は、他のパークスイートとは異なる。 ダイニングテーブルはガラス。イスの前足がユニークだ。テーブルの脇、窓に沿ったところには、サイドボードがある。リビング内にライティングデスクはなく、このダイニングテーブルがそれを兼ねている。LANの接続口やコンセント、ステーショナリーといったワーク用アイテムは、すべてこのサイドボードにある。 ソファはゆったりとしている。その気になれば6人でテーブルを囲める設えだ。丸いガラステーブルの他に、天然石トップのサイドテーブルがふたつあり、大きなソファ脇には電話機の載った小さなサイドテーブルもある。カーペットの色彩はPOPな感じだが、肌触りというか、踏み心地はいい。 窓からの眺めは、夜が素晴らしい。一面の夜景は東京の街が果てしなく続くことを実感させてくれる。だが、この眺めが得られるのは2方向ある窓のうち、1方向のみ。もう1方向は、隣接する部屋と視線が交わるために、スリットを設けて視界を限定している。 リビングとベッドルームの間に扉はなく、連続した空間になっているのだが、テレビのあるユニット家具の背面にある壁がある程度の仕切りの役をしているので、ベッドルーム空間の独立性がまったく失われているわけではない。 ベッドルームにはキングベッドが1台。両脇に置かれた行燈風の大きな照明器具は、どう見ても盆か葬式を彷彿とさせる。ここで眠っているところを他人に覗かれたら、故人に間違えられるのではないか。なんとも複雑な気分である。 それをのぞけば、ベッドルームの仕様は他のパークスイートと大差ない。ただ、ナイトテーブルがベッドからやや離れており不便に感じた。あと5センチ近ければたいぶ違うように思う。 ベッドの前にはテレビの掛かったボードがある。上段には額とともにいくつかのオブジェが飾られ、下段にはDVDプレイヤーを備えている。 テレビボード脇には、カウンター式のドレッサーがある。照明が上からのダウンライトのみなので、化粧をするには適さないが、就寝の前後には何かと役に立つ。 バスルームも広く魅力的に造られている。深いバスタブ、明るいシャワーブース、個室トイレ、ダブルベイシン、ドレッシングカウンター、そしてウォークインクローゼットが、2か所の引き戸で仕切られた空間に並んでいる。 床は天然石をメインに使い、一部がカーペット敷き。壁も、石やクロス、ミラーを巧みに使い分けている。また、照明効果の高さもさすがという感じだ。 ベイシンの隣には金庫の入ったキャビネットがある。そこはクローゼットにも近い場所だが、バスルーム内に金庫があると思うと、なんだか面白い。 ダブルのベイシンには、ハロゲンのスポットが当たって、美しく浮かび上がって見える。バスアメニティはフタ付きのカゴに収められて、ふたつのベイシンの中央に置かれている。浴室金具も、スイート仕様の立派なものだ。 パークスイートのバスタブは、他の部屋だともっと浅くて長い。おぼれてしまうほどの長さがあるのだ。しかし、ここはバスタブ背後に太い柱があるという構造上の理由により、パークルームと同じバスタブが使われている。バスタブ脇が窓になっているタイプもあるが、ここはミラー張りだ。 バスタブの背後は、特に使い道のないデッドスペースになっている。だったら、シャワーブースの壁をずらして、シャワーを浴びながら腰かけられるようにすれば、より魅力が増したように思うと、もったいない。 シャワーブースにもミラーを多用し、上部からのハロゲンスポットがブース内に立つ人を、主役のように引きたてている。隣にある曇りガラスの引き戸は、個室になったトイレ。バスルーム内の照明はすべて連動しており、一括の調光が可能だ。 カーペット敷き部分には、スツール付きのドレッシングカウンターがあり、ふたつ並んだスタンドが印象的。ウォークインクローゼットはこの隣にあり、ミラー張りの両開きスライドドアで仕切られている。 夕食には「ジランドール」を利用した。混雑しているわけでもないのに、客を一角に集めて座らせ、まったく落ち着かなかった。店としては、「良い席」を選んだつもりなのだろうが、適当な間隔があってのことだ。例えば新幹線のガラガラな車両で、他人同士が限られたブロックに詰めて座らされれば、散って座りたいと思うのがふつうである。 この夜は詰め込まれた上に、かなり行儀の悪い家族連れが近くにいた。子どもが走り回ったり別のテーブルに乱入しているのに、まったく気にもしていない様子。スタッフを呼びとめ、目に余るので注意するように言うと、「あちらの方が先の予約なので」という意味不明の言い訳をされた。この店では、先に予約すれば何をやってもいいらしい。よく覚えおこうではないか。 |
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