デスクでチェックインであることを告げると、イスに掛けるよう勧められたが、座るやいなや「お部屋へご案内します」と促された。もっと座っていたかったわけではないが、妙な段取りのせいでぎこちない気分に。だが、担当した美しいブロンドの女性は、それを気に留める風でもなく、エレベータホールに向かって颯爽と進んでいった。

高級ホテルでは、係がたとえ女性であっても、客の荷物は係が運ぶのが通常だ。あまりに華奢な係の場合、それが申し訳なく感じて「大丈夫？」と声を掛けることもあるが、大抵の場合、係の逞しさは客の想像を超えている。彼らもプロだ。高級ホテルに泊まるなら、余計な心配はせずに、受けられるサービスに身を委ねる方がいいのかもしれない。しかし、パークハイアットでは、どうもそういった習慣は受け継いでいないらしく、係は荷物に対してなんら注意を払わなかった。重い荷物を引きずってブロンドの係の後ろを歩く客という図は、鼻持ちならないトップモデルと、それに翻弄されるアシスタントのようだったことだろう。

用意された客室は、いつものパークデラックスルーム。新宿駅越しに、都心の景観を一望できる向きだった。丁寧に仕上げられており、清掃状態にも不満はない。落ち着いた内装と、よどみない空気が、深い安らぎを感じさせてくれる。

荷物を解いたら、まずはフィットネスへ。時間をかけてゆっくり汗を流す。夕方になってジムは段々と混雑してきた。どうやら会員の利用も多いようだ。安倍首相も会員なのか、ここでもまた遭遇。冬場は日が暮れるのも早く、それにつれジムの中もムーディな照明が効果を発揮しだす。ジムと言えば、蛍光灯を中心とした平板な照明がほとんどだが、ここではそんな無粋なことはない。絞り込まれたハロゲンのスポットが艶やかなフローリング床を照らし、床から高い天井まで一杯の窓が、まるでこのフロアが夜景に浮いているような感覚を与える。中央のプールもまた幻想的だ。

そして、スパエリアは非常に贅沢な造りになっている。ロッカールームも窓際にあり、様々な位置に配されたドレッシングコーナーには、夜景を見ながらグルーミングできるものもある。バスエリアには、モザイク大理石のジェットバス、滝のような打たせ湯、それぞれに温度が違う3箇所のドライサウナ、水風呂、6箇所の大理石シャワーブース、2箇所のボディシャワータワーが備わっている。タオルやアメニティも贅沢に用意され、客室アメニティと同じイソップの化粧品が揃う。レセプション、トレーナーともにサービス面でも優秀。ホテルのフィットネスクラブ＆スパとしては、総合的にも最高レベルだ。

部屋に戻った時、まだターンダウンが済んでいなかったのでリクエストしたところ、10分後に来て、8分掛けてフルサービスのターンダウンが行われた。在室中の作業だったこともあるだろうが、部屋の空気を乱すことはなく、丁寧で静かだった。夕食はルームサービスで。ステーキやオニオンスープ、アスパラガスグリル、ナシゴレンなどを注文。温度もよい状態で運ばれてきたし、のんびりとくつろぎながら食事を楽しむことができた。

朝食もルームサービスで注文した。コンチネンタルスタイルの「ジランドールブレックファスト」に加え、お気に入りのバジル風味のエッグベネディクトを。指定した時間ぴったりに運ばれ、たっぷりと差し込む朝日とともに、気持ちのよい朝がスタートした。ラグジュアリーホテルで過ごす1日として、不足のない滞在だった。