1996.05.18
PIANO
パークハイアット東京 Diplomat Suite
哀-4

パークハイアットでプレジデンシャルスイートに次ぐ高級スイートがディプロマットスイートだが、140平米で180,000円のタイプと160平米で230,000円の2タイプがある。今回も前回同様、230,000円の方を利用した。それも定価で。

この部屋の魅力は何といってもピアノがあることだ。練習目的というよりも、いつもと違った環境なら、新鮮な気分で新しい曲の発想を生み出すことができるからで、ぼくの音楽にとってパークハイアットの雰囲気はとても刺激的だ。しかし、数日前に予約課から横槍が入った。電話が入って「ピアノはお使いになるのでしょうか?」と尋ねられたので、「もちろんです」と答えた。「テレビはお使いになるんでしょうか?バスルームはお使いになるんでしょうか?」といった質問と同じくらいばかげて聞こえた。

防音が十分でないので、他のゲストに迷惑が掛かるという。防音が十分でないのはホテルの問題だ。こちらは非常識なことをするつもりはし、他のゲストに迷惑を掛けるようなことは慎みたいと思っている。夜中に思い切りかき鳴らすつもりもないし、人が聞いて不快な演奏もしない。せいぜい夕方までポロポロ弾く程度。もし、それでも他のゲストからクレームがあれば、その時は連絡してくれさえすれば直ちに中止すると伝えて、電話を切った。

昼12時ごろ、ホテルに車で到着すると、いつものことだがドアは開けてもらえず、ドアマンを呼び「チェックインしますので荷物をお願いします」と頼むと、「チェックインは午後1時からです」との返事。それは1時ごろまた出直してきてくださいという意味かなと思いつつ、宿泊部長には早めの到着をすでに知らせてあると告げ、荷物を運んでもらった。

42階のレセプションに着くと、すでにアシスタントマネージャーが待機していて、そのまま部屋へ直行し、リビングでサインのみのチェックインをした。その際にも「もしぼくのピアノの音で迷惑を掛けるようだったら、いつでも遠慮なくおっしゃってください」と付け加えると、そのアシスタントマネージャーは「とんでもない、いつでもご自由にお使いください」と言ってくれた。

客室のエントランスは両開きの扉で、入るとすぐにワシントンホテルの一室分はありそうな広い前室があり、その奥がリビングダイニングになっている。大きなガラスのダイニングテーブルにはキャンドルもセットされていて、リビングには大型のオーディオキャビネットがあり、天井まである書棚にたくさんの書物が置かれている。ベッドルームには2台のクイーンサイズベッドと大型ワイドテレビにドレッサー。

バスルームは階段状になっていて、窓に向かってベイシンが備え付けてあり、バスタブは大型で同じく窓際に配置されている。コーナールームのバスタブより大型で、しかも一段高く配置されているので、バスタブに横たわりながらでも、夜景を望むことができる。その他、キッチンがあり、大きな紅茶の缶とワインが無料で用意されている他、自由に使える食器がかなりの種類と数、用意されている。各所に生花が置かれそのアレンジもセンスがよい。また、照明は可変でプログラマブル。なかなか効果的だ。

夕食にはゲストがあり、この部屋に付帯しているボードルームを利用して晩餐を取ることになっていて、料理などはすでに手配してあった。要するにあらかじめルームサービスを頼んだわけだが、今回はサービスに当たる担当の人件費ということで、3万円が加算された。このホテルで以前にも同じようなケースで利用したことがあるが、未だかつてそのような人件費を加算されたことはない。そもそも、料理だけで10万円を超す利用をしているのだから、その人件費くらい料金に含んでもいいのではないだろうか。

ワインは友人のソムリエからの差し入れを持ち込んだが、持ち込みばかりでは申し訳なく思い、シャンパンはホテルに注文した。食事もメニューはホテル側に一切任せていたが、結局ルームサービスメニューからの組み合わせだった。客室のパントリーに2人の給仕がつき、タイミンクを見てサービスに当たっているつもりらしいが、なんともお粗末だった。食事中、あるご婦人が給仕に声を掛けた。「このパン、とってもおいしいわね。幾つか分けてもらえないかしら?家でも味わいたいわ。」

すると給仕は「ありがとうございます」とだけ答えた。それを聞いて当然、お開きまでには用意してくれるものだと思っていた。有料だというのなら、料金は加算してくれても構わない。もし、何か理由があってできないことならば、丁重に断ってしかるべきだ。結局、「ありがとうございます」と言ったきり、パンは用意されなかった。給仕は彼女の言葉を単なる誉め言葉としか取らなかったのかもしれないが、彼の判断は悪い印象だけを残した。

また、コーヒーを出し終わったら、パントリーに引っ込んで一向に出てこなくなった。コーヒーのおかわりを頼もうと、席を立ってパントリーに行くと、我々が持ち込んだワインの余りを断りもなくテイスティングしていた。滅多にお目にかかれない高級ワインを味見してみたい気持ちは理解できるが、テーブルへのサービスをそっちのけにして、人様のものを無断で口に運ぶとは、随分と卑しい行為だ。人件費まで請求しておいて、何と厚かましいことか。まぁ、皆さんにゴキゲンでお帰りいただけただけで、ぼくとしては大満足。

リビングスペース

リビング全体

大きなバスタブ

ベイシンは段段になている

Y.K.