パーク ハイアット 東京 Park Deluxe Room |
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Park Hyatt Tokyo |
2009.02.07(土)
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東京都新宿区 |
怒-3
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汚名返上の機会 | パークハイアットは、前回利用した際に不行き届きが重なり、残念という域を超えて怒りを覚えて帰って以来、しばらく滞在も食事も控えていた。思い出せば今でも腹立たしいが、その後、責任者が自筆の手紙をよこし、当時の非礼を深く詫びてくれたので、一度は彼の顔を立てて再訪しなければならないと考えていた。
それから1年。以前バンケットで世話になったスタッフからクリスマスカードが届いたのを機に、久しぶりに予約を入れることにした。行きたいと思ったのは年末だったが、予定と空室が一致したのはこの日、2月7日であった。 いざ、エントランスに到着。係に名前を告げると、そのままロビー階まで案内され、レセプションで待ち構える係に引き継がれて、直接部屋に向かい、そこでチェックイン。このスムーズさは、他ではなかなか味わえない見事なものである。 用意されたのは客室としては最高層階にあるパークデラックスルーム。エキストラのタオルやアメニティなど特別なリクエストは、開業当時にしたものが今でもきちんと受け継がれている。室内がややタバコ臭かったが、今回それには目をつぶった。清掃は実によく行き届き、非の打ち所がない。 インテリアも見慣れているのに、新鮮でインスピレーションに満ちている。開業から15年経っても、古びた印象や時代遅れの感がないというのは、やはり素晴らしい。客室備え付けのステーショナリーには折れ目ひとつなく、グラス類も美しく磨かれている。バスアメニティは今もイソップを揃え、今回は珍しくビン入りのバスソルトも置かれていた。 またミニバーには、ちょっとしたショップに見えるほどの豊富な品が揃い、魅力的なディスプレイが印象的だ。無料で利用できるホットドリンクには、フレッシュドリップコーヒーに加え、緑茶、紅茶、ハーブティーが用意されており、それを飲むための器もまた興味をそそる。こうした「見せ方」の巧みさは、間違いなくトップレベルであり、芸術の域すら感じさせる。 この完成度の高い空間を存分に味わうなら、できるだけ他人との接触は避けたほうがいい。人と会わず、自分だけの時間と空間に身を委ねることこそが、パークハイアットを楽しむ秘訣である。この上なくスムーズなチェックインや、ルームサービスでの食事、スパスイートでのトリートメントなどは、パークハイアットで過ごす快適な時間を一層心地よく彩ってくれるはずだ。 だが、混み合った時間のプールやレストランは、一転、甘い夢から覚めたような気分にさせられる。この日のプールがまさにそうだった。雰囲気のいい天空のプールは、夕暮れがよく似合う。しかし、水の中は市民プールのイモ洗い状態で、全体に雑然とした印象だった。混雑している時はプールの水も濁り、幻想的な美しさも半減。プールサイドでは係がバスローブやタオルのサービスを行なっているが、その点に関して言えばペニンシュラやリッツ・カールトンの方が細やかで優れている。 一方、有料で利用できるスパの浴室は、どこと比較してもここが一番いい。ゴージャスな石造りの空間や優れたデザイン、高級化粧品が並ぶドレッサーや落ち着いた雰囲気のリラクシングルームなど、そのスケールといい、メンテナンス状況といい、群を抜いている。 この上品な空間でさえ、雰囲気をぶち壊しにする人というのはいるものだ。大抵の場合、ここに仲間と連れ立って来る人は少ないので、皆、それぞれに考え事や瞑想気分で湯船に浸かっているものだが、この時はまるで銭湯のように大声張り上げて会話するサラリーマンがいて鬱陶しかった。確かに、この湯船で人と会話しようとすると、ブロアの音に遮られ、小声では聞き取れない。だからと言って、スパ全体に響き渡るような大声で、くだらない自慢話をすることもないだろう。 そうかと思えば、水着のまま湯船に入る外国人もいた。文化をしらないのか、お恥ずかしい事情でもあるのか、とにかくここでは素っ裸こそが正装である。 夕食には「ジランドール」を予約してあった。ホテルに対し、前回の汚名返上のチャンスを与えるために用意した機会である。静かな席をリクエストしたら、窓に近いセクションに新しく設けられたブース席に案内された。 料飲の責任者が前回のお詫びにと用意していたのは、ルイロデレールクリスタルのボトル。それに合わせて11,000円のコースを注文した。改めて丁寧な挨拶があり、店のマネジャーもその場に立ち会った。こうして始まった夕食である。今回は百点満点と太鼓判を押して帰れるだろうと期待したが、読みが甘かった。 いや、読みが甘かったのは店のマネジャーの方である。店はそれほど混雑しているわけでもなかったのだから、黒服を着たマネジャーが自ら十分な注意を払うべきであった。実際のサービスをベスト姿の坊やに担当させるのは百歩譲って許すとしても、監督もせず任せっきりとは浅はかだ。自分の上司が高級シャンパンを差し出したことから推し量り、後を任された責任は重いと気付くべきだった。結局、彼は上司の顔に泥を塗ったのである。 これが汚名返上の機会であることを別にして店の様子を見渡してみると、サービスは以前よりも角がとれ、なめらかになりつつあるようだが、料理のクオリティは以前と変わらず並かそれ以下であった。「スープストック」でももう少しマシな味が出せそうなブイヤベースに、硬くてまずい牛ヒレ肉や、中まで常温のチョコレートフォンダンなどを出されたのでは、またここに来たいとは思えない。帰り際も、黒服は見送ることさえしなかった。「ジランドール」は今やパークハイアット東京の恥である。 |
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パーク ハイアット 東京(公式サイト) | |
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