反抗的な従業員 |
2007.12.15(土)
|
パーク ハイアット 東京 Park View Room | |
Park Hyatt Tokyo |
怒-4
|
|
|
パークハイアット東京は、日本におけるデザイン系ラグジュアリーホテルのパイオニアであり、その後に最新のホテルが次々とオープンした今でも、絶大な人気を誇っている。隅々まで計算され、一切の破綻がない完璧なデザイン性は、開業から13年が経った今でも新鮮さに溢れ、訪れる人をワクワクさせるだけでなく、洗練された美意識にも十分訴え掛けるだけの魅力を湛えている。パークハイアット東京を真似たホテルは数知れないが、同じ完成度の空間はまたとない。
だが、サービスの質にムラが多いという点でも、群を抜いている。素晴らしいサービスに胸を打たれることもあれば、あまりのバカさ加減に開いた口が塞がらないということもある。仮に前者の方が圧倒的に多かったとしても、後者のインパクトにたちまち吹き飛ばされてしまって、悪い印象だけがいつまでも残るのである。ところが、今回は悪いことが重なり過ぎた。まるで一日に何度もドロボーに入られたような気分だった。 パークハイアットのメインエントランスは2階にある。道路からアプローチに入り、緩やかなスロープをまっすぐ上がっていくと正面玄関だ。アプローチに差し掛かった時、リムジンバスを先頭に数台の車が連なる格好になった。どの車も正面玄関に向かってスロープを上がり始めた。だが、リムジンバスの前に更にホテルのシャトルバスがいたため、リムジンバスはそれよりも先に進めなくなり、坂を上がりきらない場所で停まってしまった。一層困ったことに、バスはそのままの体制で、客を降ろし始めたではないか。 後続の車はどうしようもない。クラクションを鳴らすが、バス運転手もホテルスタッフもお構いなし。車を降り、バスをどかすように言って、やっとしぶしぶと対応したという始末だ。やがてバスは正面玄関まで進んだが、後続の車はスロープから平面になったあたりまでしか進めないので、そこで人や荷を降ろすしかない。気付いたホテルスタッフが来て手伝い始めたのはいいが、「失礼しました」でもなければ「お待たせしました」でもなく、「お名前をフルネームで」と言われ、気分を害した。他に言うべき事があるだろうに。 レセプションでの対応は迅速だった。時間を無駄にしない合理的なサービスは嫌いではない。やや冷淡な印象もあるが、ここでチヤホヤされようとも思わないので、クールで結構だ。用意された客室は客室としては最上階のコーナールーム。パークハイアットに初めて泊まった時にアサインされた部屋だ。最高級スイートのコネクティングルームなので、他のコーナールームとは設備が若干異なっている。コーナールームは一般的な客室よりも天井が高く、2方向に、バスルームを含めて4面の窓を持っているのが特徴だ。 部屋の入り口を入ると、すぐ右側に引き戸があり、ウォークスルークローゼット経由でバスルームに通じている。まっすぐ進むと居室があり、一番手前ミニバーキャビネットを据えた。この部分は天井が低いが、額を照らす天井からのハロゲンライトと、ミニバー上のミラーがアクセントになって、ユニークな雰囲気を醸し出している。ミニバーには4種類の磨かれたグラス、豊富なミニボトル、無料のドリップコーヒーなどが用意され、ミニバーというより本格的な品揃えだ。コーナー2箇所に置かれた観葉植物も存在感が大きい。 ベッドはセミダブルが2台並び、足元の窓際には37インチの液晶テレビが台に載っている。奥の角にはデスクが斜めに置かれ、小さなイスが対面して添えられている。デスクの脇には、ハープ型ガラステーブルとオットマン付ソファがあり、もう一つのソファはミニバー付近に離れて置かれている。ガラステーブルの上にはウェルカムアメニティのチョコレートがあるが、これはどの部屋にも用意されているもの。なのに、それに汚い字でなぐり書きされたカードを添えるだけで、ダイヤモンドメンバーのスペシャルアメニティにしてしまうところが、ハイアットの狡賢いところだ。バレないとでも思っているのだろうか。 バスルームには、入口脇からクローゼット経由でも入れるし、ベッド脇の引き戸からも入れる。細長く取られたバスルームは、ミラーを巧みに配することで、圧迫感を激減させた。液晶テレビは、ベイシンからでもバスタブからでもシャワーブースからでも見える位置にあるが、一般客室のようにバスタブ正面の見上げる位置にあるのも捨てがたく、好みが分かれるところだろう。ベイシンとバスタブの金具はスイートと同じものを使っているが、シャワーブースの金具は一般客室と同じだ。 トイレは曇りガラスのスイングドアで仕切られており、ベイシンはダブルで、脇にはスツールを添えたドレッサーも備える。バスタブは深く、肩まで浸かれるタイプで、窓際に配置されているのだが、バスタブの縁より窓台の方が高く、バスタブに浸かってしまうと夜景が見えないので、日中に空を眺めながら入る方が気持ちいいかもしれない。 ウォークスルークローゼット内には、バゲージ台もハンガーレールも2箇所あって、更にもうひとつのドレッサーまで設けている。レイアウト上ベッドを置くのは無理にしても、クローゼットだけでも過ごせてしまいそうなほど広い。この空間を有意義に使おうと思ったら、相当の長期滞在を計画しなければならないだろう。夕方にはターンダウンが来たが、ゴミ箱は見ないし、毎回リクエストしている追加アメニティのことも忘れられてしまった。 夕食は「ジランドール」を予約してあった。時間通りに店のレセプションに出向いたが、「順番にご案内しますので、お待ち下さい」と冷たくあしらわれた。わずかに置かれたイスには、予約なしで来ている客が待っていて埋まっているのに、どこで待てというのか。 やがて案内された席は、窓に近い禁煙席。まずは食前にドライシェリーを頼んだが、バーから運んでくるので少し時間が掛かるという。食事の注文が済み、次はワインのチョイス。料理の内容を把握している給仕に、食事に合うオススメのワインがあるか尋ねたところ、「ワインリストをご覧下さい」と言われただけ。 知識がないのかもしれないが、言い方のニュアンスには、忙しくて客に付き合っている暇はないというような棘が感じられた。そんな給仕にオススメを尋ねて、よい情報が得られるわけがない。だったらお望みどおり、ワインリストを拝見するとしよう。すると、好きなドメーヌのムルソーが見つかった。値段は安くなかったが、もうその味が口の中によみがえり、実物が流し込まれるのを体が待ち構えているので、それを頼んだ。 給仕がワインと共に持ってきたのは、ハウスワイン用のレギュラーグラス。「ちょっと待って。ムルソーをこのグラスに注ぐの?」と尋ねると、何がおかしいのか?と言いたげな表情をしている。「やっぱり、ムルソーはヤメにして、一番安いハウスワインで結構です」と言うと、一度引っ込んでそれに相応しいグラスを持って来た。アペリティフに頼んだドライシェリーと一緒に。 料理が来るのも、かなり遅かった。確かに店内は混雑している。だが、それはいつものことで、給仕のシフトを組む際にも折込済みのはずだ。待ちくたびれながら周囲を観察していると、給仕は無駄な動きが多く、また、乱暴な歩き方をするので、店の空気を掻き乱しているかのように見える。店の構造もスムーズなサービスを実現にくくしているに違いない。だが、そんなこと、客には関係ないのである。料金に見合った内容の料理とサービスを提供してもらわなければ到底納得できやしない。 そこに料理が運ばれてきた。大きなトレーに載せられた料理は、一度トレーごとステーションに置かれた。ひとりの女性給仕がその料理をテーブルに運ぶためにトレーに歩み寄った。途中で床に落ちていたゴミを拾い、その拾った手のまま料理をテーブルに出した。別にそれを食べたからと言って、健康に影響するほどヤワじゃないが、ゴミを拾うのを見てしまった以上、そのままの手で運ばれた料理を食べる気にはなれない。 床に落ちたものを扱ったら、必ずすぐに手洗いをするのは、飲食に従事するものとして当然の常識である。今の行動はとんでもないと苦情を言って料理を下げさせたが、彼女はふてくされた態度で、ろくに返事もしなかった。するとまたすぐテーブルに来て、今度はグラスを持ち上げて水を注ごうとする。このテーブルに来ないでくれと拒絶するも、「消毒して来ましたから!」と反抗的な態度を取る給仕。こんな店で食事を続ける気にもなれず、席を立って部屋に戻った。 もう館内で食事をしたくなかったので、ヒルトンの「チェッカーズ」へ行った。土曜日の店内は祭りのように賑わっているが、サービスは実に気が利いてた。楽しいし、美味しいし、居心地がいい。こうも違うのか!続けざまに利用すると、クオリティの差が歴然。レストランにとって何が大切なのかを、改めて考えさせられるディナータイムだった。 |
|
|
|
パーク ハイアット 東京 | 950324 960518 970104 970216 990412 990530 011225 030629 061217 070108 |
公開中リスト
| 1992 | 1993 | 1994 | 1995 | 1996 | 1997 | 1998 | 1999 | 2000 | 2001 | 2002 | 2003 | 2004 | 2005 | 2006 | 2007 | 2008 | 2009 |
| ホテル別リスト | レストラン別リスト | 「楽5」「喜5」ベストコレクション |