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ザ・ナハテラス Deluxe Room | |
The Naha Terrace | 2011.05.02(月) |
沖縄県那覇市 | 楽-5 |
ARCHIVES ・ 1992 |
トランジット 那覇へとやって来た。厚い雲が垂れこめ、時折スコールのような雨が通り過ぎて行く。東京は晴天が続いていると聞けば、せっかくのバケーションで沖縄を訪れた人々にとって、このどんよりとした天気はさぞ呪わしいことだろう。だが、それでもやはり沖縄はパラダイスだ。 翌日には離島へと向かうため、今回の那覇はトランジットのようなもの。短い滞在にナハテラスは贅沢だが、通り過ぎてしまえばきっと後悔する。そう思って1晩の予約を入れた。昨年同様、クラブルームは使わず、4階のテラス付きルームをリクエスト。クラブルームよりは手頃ながら、連休中の料金はなかなか立派なものだった。 馴染みのゲストリレーションズオフィサーに出迎えられてスムーズにチェックイン。早速向かったのは、昨年と利用した客室の並びにある同じタイプの部屋だ。冷房が強く効いているため、窓が結露している。この湿気もいい思い出になるだろうと、空調を停め、バルコニーの扉を開けて空気を入れ替えた。雨にぬれた草木のにおいがした。 部屋を見渡しても、様子に変化はない。懐かしくもあり、故郷の家のようでもあり、すべての緊張がたちまち解けていくのがわかる。リージェントからパレスオンザヒルになり、その後ナハテラスへと変わっても、初めて泊まったあの日からずっと変わらない特別な空気がある。それがこのホテル最大の魅力だ。 しばらく窓を開けておくと、ピンと張っていたベッドリネンが湿気を帯びて、若干しわになってくる。歓迎するべきことではないかもしれないが、ラグジュアリービーチリゾートのベッドでよく覚えるあの感触によく似ていて、まるで波音まで聞こえてくるかのようだ。 窓際には大理石の丸テーブルと、オットマン付きのソファ。窓の外には植物に囲まれたテラスがある。海はまったく見えず、開発された近代的な都市景観に囲まれてしまっているのだが、それでもリゾートの雰囲気が心を和ませてくれる。 リージェント時代から続くウェルカムフルーツはガラスの皿に盛り付けて運ばれてくる。この皿もずっと長いこと使われており、このホテルに来たことを実感させてくれるもののひとつだ。 テーブルの上には蘭の鉢植え。淡い色で統一された室内で、貴婦人のようにひときわ目を引く存在だ。この部屋にライティングデスクはなく、そのため丸テーブルとソファで過ごすことが多くなる。デスクがないのを不便だと感じた時期もあったが、今ではここに来たら作業は忘れようという動機になっており、ただぼんやりと気が向くままにくつろぐことを教わった。 大理石造りのバスルームも、何度見ても飽きることがない。近年の最新ホテルに見る充実した設備に比べると簡素なのだが、ナチュラルな過ごし方にはむしろ簡素なことがマッチする。 バスアメニティはレギュラールームでもロクシタン。タオルはホテルオリジナルで、ふかふかとやわらかい。ナイトウエアやバニティケースなどのルームアメニティは、1階のあるブティックでも購入できる。 バスルームでくつろいだ後、タオルで体を拭きながら、ベッド越しに窓の外を見る瞬間に目に入る、大理石、ベッドリネン、そして亜熱帯の植物。ああ、リゾートだなと思わずにはいられない。ハンガーに掛けられた軽やかなガウンを着て、そのままテラスに出れば、鳥のさえずりが。ミニバーに用意された琉球紅茶をポットに入れ、熱い湯を注ぐと、リッチな香りが立ちのぼる。少々蒸し暑いくらいの那覇で、あえて熱い紅茶。いい気分だ。 夜には、ロビーへ降りて、淡い光に包まれた空間の雰囲気を楽しむ。誰もいないプールサイドで空を見上げるのも爽快だ。スタッフと顔が合えば、いつでも笑顔を返してくれる。ロビーラウンジから聞こえるピアノ演奏がやわらかいムードを醸す中、ダイニングへ向かい、沖縄の食材をふんだんに使った料理を味わう。食後は、ロビーラウンジの一角にひっそりと佇むバーで、デジェスティフを。ここに来たなら、ホテルから一歩も出ず過ごすのがいい。 翌朝は、日本料理「真南風」で和定食を。丁寧に調理された数々のおかずが並ぶ。連泊の場合は、魚の種類を変えるなど、工夫もしてくれる。今回は1泊だけだが、次の目的地へ行くのをやめて、このまま泊まり続けたい気分。それを振り切って出発する時には、スタッフたちが丁寧に見送ってくれ、実に名残惜しかった。 |
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