だが、機内でのサービスは「？」の連続だった。スーパーシートでは朝食がサービスされた。キャビンアテンダントは十分にいるのだが、なぜかJK席と前方にばかりサービスが集中していた。後方のAC席までサービスが回ってきた頃には、他の客はほとんど食べ終わっていた。待ちに待った朝食は、なんとファストフード風の容器に入ったオニオンスープ、パン、かっとフルーツ、チョコレートという内容だった。一口味見をして、美味しくなかったので、すぐに下げてもらいたかったが、30分も放置されていた。

見知らぬ隣人は、離陸直後から眠っていた。そのため、サービスを控えた旨のシールが座席に貼られていた。彼が目覚めた後、キャビンアテンダントのひとりが、「朝食をご用意しておりますが、お持ちいたしますか」と尋ねたが、彼は不要だと断わった。その後、忘れた頃になると、別のアテンダントが同じことを尋ねる。結果的に4人のアテンダントに4度も同じ質問をされ、同じ返答をしていた。この狭い機内でさえ、連携というものは皆無のようだ。

那覇は曇っていたが、気温と湿度が沖縄らしさを物語っていた。ナハテラスのエントランスに到着すると、女性の係が出迎えてくれたが、名前を尋ねられてしまった。不思議なことではないかもしれないが、ナハテラスでは異例のことである。「神田です」と答えると、「下のお名前は？」とまで聞かれ、少々気分が悪かった。

だが、2階のクラブラウンジに足を踏み入れてからは、いつも通り極めて快適な時間となった。はるばるここまで来てよかったと思わせてくれる瞬間である。リージェント沖縄が開業した際、ホテルが単なる旅先の宿にとどまらず、泊まるために旅に出るという目的になることを教えてくれた。それは、今日にも引き継がれている。

このホテルがただならぬ存在なのは、彗星の如くデビューしたリージェントから、堕落した全日空ホテルズを経由して、現在のテラスへと、何度も運営が変わったにもかかわらず、初心が見事に貫かれているからだ。リージェントから残るスタッフはごくわずかだし、内装も変わってしまったが、それでもここに来れば往時の記憶が瞬時によみがえり、その記憶が今に連続していることを実感できる。

今回も、チェックインからアウトまで、ここから一歩たりとも出るつもりはない。さらに言えば、明日のアッタテラスも含め、空港とホテル以外には、どこにも寄らないつもりだ。滞在中、出来る限りの時間をここで過ごしたいと思わせてくれる、数少ない空間なのである。お気に入りの小さなプールは、すでに今期の営業を終えているが、まだきれいな水を湛えている。プールサイドのデッキチェアに横たわって、何時間も過ごす。そして、ジムでトレーニングをし、サウナで汗を流し、親しい友人を呼んでディナーだ。

当初は「真南風」に行くつもりだったが、今日はハロウィン。「ファヌアン」ではこの日のための特別コースを用意しているというのに、店はガラガラだったので、気の毒になって「ファヌアン」に入った。6,000円のコースは、どれもモダンな盛り付けと、ハロウィンならではの遊び心が感じられるもの。特に印象的だったのは、ワゴンデザート。どれも食べるのがもったいないようなかわいらしいデコレーション。料理全体の味も進歩している。

部屋に戻ると丁寧にターンダウンされていた。誰がやったのかわからないが、姿を見なくても、その仕事ぶりが目に浮かぶようだ。地元のラジオを聴きながら入浴し、軽く眠った翌朝は、ラウンジで朝食。ブッフェ台でまず目に入るのは新鮮なフルーツの数々だが、パンも美味しい。そして、品のあるサービスがまた快適だ。9:30には、馴染みのスタッフに見送られてアッタテラスへ出発。今回もまたよい滞在だった。