1階の特別階用のカウンターには男性の係が立っていた。カジュアルな印象の強いこのホテルには珍しく、とても品がよく笑顔の似合うイケメンだった。この物腰ならラグジュアリーホテルでも十分通用する。そう思うとちょっともったいない気がするけれど、余計なお世話だろう。案内を勧められたが辞退して、自ら部屋へ向かった。

エレベータはたくさんあるが、それぞれはとても小さいし、あらゆる施設にアクセスするため、利用客が多く混雑する。低層階用と高層階用で半分ずつになっているのだが、どちらも最上階まで運行しているので、高層レストランやスカイバンケットを利用する人は、先に来た方に乗り込む。そんなわけで、肩が触れ合うほど混雑したエレベータに乗って、客室としては最上階にあたる41階まで上昇した。

今回の客室はエクセレンシィツイン。以前にも同じタイプを利用したことがあり、その時は禁煙フロアの40階だった。今回は喫煙フロアだが消臭して用意したとのこと。そして、たまたま40階で泊まった部屋の真上に当たった。室内には少しタバコ臭が残っていたが、耐えられないレベルではなかった。そもそも喫煙フロアの消臭対応を承知して予約したのだから、文句は言いにくい。よほど臭う場合は、もう一度脱臭を頼むことも出来るが、まぁ我慢できそうだった。

室内の様子は、臭い以外、真下の部屋とまったく同じである。でも、今日は天気がよくないので、せっかくの大都会の夜景は霞んでいる。晴れていれば、皇居、東京タワー、新宿、汐留、六本木と、東京をパノラミックに一望できるはずだ。それはレギュラーフロアよりも高層階にあり、高い天井と大きな窓を持っているエクセレンシィフロアならではの魅力である。

そして、この33平米のツインルームで皇居側というのは41階には2室しかない。あとはすべてスイートだ。しかも、もうひとつのツインには太い柱があるので、それがないこちらの方が少し好条件である。

インテリアはカジュアルながらも、レギュラーフロアよりずっと落ち着いた色調。家具やファブリックのクオリティはさほど変わらないのだが、色合いも手伝って、質の差以上の違いを感じさせる。実際に違っているのは、ベッドボード、アーモアのデザインくらいだろうか。スタンドやイスはレギュラーフロアと同じである。あとは、ハンガーがプラスチックでなく木製だったり、茶器がちょっとよかったり、ミニバーが充実していたり、FAXが常設されていたりというくらい。

バスルームもアメニティは充実するが、デザインはレギュラー高層階と同じで、今回もまたシャワーが弱いことが気になった。また、空いているコンセントがひとつだけというのも困ったもの。FAXや高速インターネットモデムのためにコンセントが使われ、すでにタコ足状態。パソコンの電源を取ったら、携帯の充電はバスルームでするしかなかった。

40階のエクセレンシィラウンジは、珍しくいつも空いていた。ラウンジはやっぱり空いている方が心地いい。あまり酒は飲まない方だが、せっかく並んでいるカクテルベースを見たら、バーテンごっこをしてみたくなった。でも、作ったからには自分で飲まなくちゃならないので、何種類もは試せなかった。カクテルアワーのスナックは、袋菓子、ナッツ、キューブチーズのみで、ちょっと物足りない。

深夜1時半。隣のスイートからバースデーソングが聞こえてきた。どうもパーティが最高潮を迎えたらしい。大勢集まってかなりの騒ぎをしている。時間が時間だけに迷惑だ。しばらく様子を見たが、エスカレートする一方だし、一部が廊下にも出て騒ぎ出した。こりゃたまらんと、フロントに対応を求めた。するとただちに行動を起こし、10分後には静まった。迅速な対応は信頼に値する。

朝食は40階ラウンジで。パン、フルーツ、ヨーグルト、ジュース、コーヒー・紅茶に加え、温かいスープがある。充実しているとは言いがたいが、朝もガラガラだったので、部屋とは反対側の景色を眺めながらゆったりと過ごせた。チェックアウトも40階のラウンジで行なったが、上品でスムーズだった。気分よく出発したのに、下りエレベータはまたも各駅停車で超満員。地上に着く頃には、せっかくの好印象も吹き飛んでしまうほどだった。