2000.11.18
障害物競走
東京ドームホテル Excellency Suite
楽-1

豊富なアイテムが揃うアメニティ

2000年6月にオープンしたばかりの東京ドームホテルは、1000室を越える客室とバラエティ豊かな飲食施設を擁し、水道橋駅前にそびえたつ超高層ホテルだ。各地に後楽園ホテルを展開する東京ドームホテルズのフラッグシップホテルとしての顔も併せ持っており、場所柄いつも多くの人で賑わっている。この日は土曜日ではじめから混雑を予想してか、通りから車寄せに入るところで警備員がホテル利用客かどうかの確認をしていた。車寄せにはドアマンの姿があったが、車を停め扉を自分で開けても、こちらにはなかなか気付かず、エントランスに対してオシリを向けて並んでいるベルアテンダントを中まで呼びに行かなくてはならなかった。ロビーに向ける注意を怠ってはならないが、10秒に一度くらいは軽く後ろを振り返って車寄せを確認するクセをつけたほうがよいだろう。

担当した女性のベルアテンダントは、笑顔がステキで好感を持てたが、知識が不足していた。予約の際、エクセレンシィフロア利用のゲストは専用カウンターがあるとあらかじめ言われていたので、エクセレンシィフロアを予約してある旨を彼女に伝えた。すると最初は40階のラウンジで手続きをと言っていたが、すぐにフロント前の長蛇の列に並ぶようにと前言を翻した。専用カウンターがあるはずだと尋ねてみても「申し訳ありませんがこちらにお並びいただかないとチェックインができませんのでお部屋にはお入りいただけませんがどうしますか?」などとピントがずれたことを言う。

埒があかないので、自分で捜し歩いてみたらちゃんとフロントの一番端に専用カウンターがあり、まったく待つことなく手続きが済んだ。次に待ち受けていたのはウワサのエレベータ。待てど暮らせど来やしないことで有名だが、その予備知識があったのでさほどイライラはしなかった(滞在中最大待ち時間10分)。低層階用とレストランを含む高層階用が各4基ずつしかなく、むしろ待つことよりも通勤電車みたいにすし詰め状態になることが不快だった。

高層階エクセレンシィフロアにあるエクセレンシィスイートは50平米強で50,000円のタイプと、66平米で60,000円のタイプがあり、今回利用したのは60,000円の2ルームタイプ。スタンダードなツインルーム2部屋分で、ひとつがリビングルーム、もうひとつがベッドルームになっている。両部屋とも天井が280センチと高く、幅265センチ高さ203センチの大きな窓が床から57センチの高さからあって実にダイナミックな景観が楽しめる。

今回は東京ドーム側で埼玉方面を望む向きだったが、遠くまで視界が開け東京の広さを感じ取ることができたものの、おそらく反対側の方が高層ビルなどが立ち並んでより東京らしい眺めなのではないかと想像する。また、眼下の後楽園遊園地ではヒーローショーが行なわれており、悪役がヒーローに倒されて大きなマットに向かって落ちてゆく様子など、正面の客席からは見えない部分が真上からよく見下ろせて面白い。それと同時に主題歌にのせてヒーローの戦う声がよく聞こえてくるというのもこのホテルならでは。

室内のインテリアは趣味よくまとまっている印象だが、ひとつひとつの家具は家庭で使うような代物ばかりで高級感はなく、郊外新築マンションのモデルルームのようなテイストだ。ベッドは130×210センチと大型で、羽毛布団がとても心地よく、電動式カーテンが便利。バスルームは約7.5平米と広く取られ、トイレはバスルームとは別に独立して設置されている。バスルームは照明がすこし暗いが、天井高はゆとりの240センチで総大理石張り。BGMを聞くことができ、もちろんバスローブも備わっている。アメニティは品揃え豊富だが、歯ブラシやかみそりの品質はイマイチだった。

夕方には丁寧なフルサービスのターンダウンがあり、使用したタオルの交換のほか氷補充やグッドナイトチョコレートサービスも行なう。滞在中最も優れていると感じたのはこのターンダウンを担当した従業員だった。ルームサービスは6:30から0:00まで。またフォーシーズンズ、ウェスティンに次いで、このホテルの客室でもグローバルスポーツ研究所のスポーツマッサージを受けられるようになった。

40階の専用ラウンジは、一応カウンターもありチェックアウトには対応していて、大抵は2名の従業員が常駐している。ラウンジ内は下げ物以外は完全にセルフサービスで、暇を持て余している2名の従業員はなにひとつ手伝ってくれない。夕方のカクテルアワーでさえオードブルの類はまったくなく飲物のみで、かつての国内線のスーパーシートラウンジのよう。わざわざくつろぎに出向く価値は感じられなかった。朝食は希に見る質素な内容で、飲物とパン、ヨーグルト、カクテルフルーツのみだ。パンの味は悪くないが、コーヒーマシンのコーヒーは苦いだけで香りもコクもなかった。いつも空いているようなので差し支えないのかもしれないが、広い割には収容人数が少なく、座席の配置にもいくつか欠点があるようだ。

チェックアウト日は国際女子マラソンの開催日で、ちょうどホテルの正面がコースになっており、まさにチェックアウトタイム頃に道路が封鎖され、ホテルから車で出ることができなくなってしまった。それについて事前の案内が不足しており、どのような予定になっているのか従業員に尋ねてもぎこちない返答しか得ることができなかった。到着から出発まで、客室内以外では次から次へと足止めをくらうことが多く、なんとなく障害物競走に出場しているような気分だった。

この巨艦ホテルは、設計にもインテリアにもどこか素人臭さがにじみ出ていて、ホテルのプロがこしらえたという印象は何処にもない。よいと感じる部分はすべてよそのホテルからパクッたところばかりだ。ちょっとだけ夢があるけど合理性を欠いたプリンスホテルというイメージのあるこのホテルは、時間に追われる都会人よりも東京に観光で訪れる人のために存在するかのよう。

リビングルーム。ライティングデスクが狭い。 そこいらへんでも買えそうな家具

ちょっとかわいいグラスやカップ ベッドは快適

ベイシンは175センチ幅だがシングル シャワーブースの扉は内側に開く

カジュアルダイニング「ピア・ビュー」

夕方ちょっとだけ空腹だったので、軽食をとろうとカジュアルダイニングに入った。明るいインテリアに囲まれた店内はランチブッフェの後片付けとディナーブッフェの準備を並行しており、すでにゲストの数は少なくなっているが、まだ先ほどまでの活気の余韻が残っていた。インテリア同様サービスも明るく軽快で、従業員の年齢層は極めて若いが、それぞれに若さを最大の武器にして、溌剌としたサービスをしており好感が持てる。ホテルのレストランというイメージに固執することなく、アップグレードなファミレス程度で結構といわんばかりの戦略が、利用する側にも多くを期待させず、好ましいバランスを築いているのかもしれない。

注文したのはアフタヌーンセット1,500円。サービス料は不要だ。ひとつの皿にパスタとピラフが盛られたコンビネーションと、ミニビール、コーヒー、紅茶、アイスクリームの中から1品をチョイスするというセットだが、料理そのものは「ampm」のとれたて弁当の方がマシ程度の味。アイスクリームには髪の毛が入っていたが、対応には心がこもり見事であった。根っからサービスが好きな子達をよく集めたものだと関心する。

ブラッスリー「ララ・チャイナ」

こちらの店もものすごい活気だった。高い天井のホールは188席という規模で、オープンキッチンからの熱気などすぐにかき消されてしまうほど賑わいがあった。まったくもって居酒屋状態なのである。もっとも、ここは洋風居酒屋の中国料理版だから、その賑わいがよく似合う。もしひっそりとしていたら、窓の外の景色といい、寒々しい店に感じられるだろう。

料理はすべてアラカルトで、1品900円から2,700円と手頃な価格設定だ。1,500円程度のものが中心となっており、サービス料は不要。料理は残念ながらたいしたことはなかったし、サービス人たちも少々疲れ気味だった。600円の中国茶をご丁寧に中国式で入れてみたり、焼きそばにあんをかける仕上げを目の前でやってみたり、子供だましのパフォーマンスが多くじれったかった。忙しくてパンクしているのにそんなことまでする必要が何処にあるのかと疑問だった。

Y.K.