正面玄関に到着したのは午後8時。ドアマンがフロントまで荷物を持ってくれたのはよかったが、チェックインはスムーズでなかった。スイートを予約していたので、カウンターの右隅にあるエクセレンシィフロア専用コーナーの所へ立ったのだが、カウンターには手が空いている係がいるにもかかわらず、誰もこちらへはやって来ない。
声を掛けるとやっと気づいたが、「こちらへどうぞ」と自分のいる場所へ来させようとする。別にどこで手続きをしようと同じことかもしれないが、それでは特別なコーナーを設けている意味がない。第一、従業員が自分から動こうとせず、客に手間を掛けてはばからないという感覚では困る。もし係が持ち場を離れられない事情があるのなら、ロビーでうろうろしているベルアテンダントが、客を然るべき場所に案内するべきだ。
結局、係が専用コーナーに来て手続きを行った。しかし、渡されたルームキーはレギュラールームのものだった。スイートを予約しているはずだと言うと、「ツインルームで承っております」と反論する。こちらには予約の控えもあるので、よく調べるように伝え、40階のエクセレンシィラウンジで待つことにした。ラウンジに客はいなかったが、奥にセットされたオーディオからワーグナーの前奏曲が流れ、それが格調高い雰囲気をつくっていた。
コーヒーを飲みながら置いてあった写真集をぱらぱらと眺めていると、先程のフロント係がやってきて、不手際があったことを丁重に詫びた上で、スイートの用意ができたことを告げた。しかし、禁煙室はすでにふさがっており、喫煙室しか用意できないという。臭いがするようなら、部屋を替えてもらうかもしれないと言うと、もう一度調べに行き、「禁煙室がご用意できました」とのこと。希望通りの部屋があったのは喜ばしいが、なんとも胡散臭い成り行きだ。
エクセレンシィスイートには、広さやレイアウトの異なる5つの種類がある。AとBタイプは66平米で、それよりは狭いCやDタイプよりもラックレートで11,550円高い。また、エクセレンシィスイートは全体で25室もあって、エクセレンシィフロアのツインやダブルよりも数が多い。今回利用したのは、Aタイプのパレスビューだ。同じAタイプにパークビューもあるが、そちらは部屋が完全に2室に分かれたセパレートタイプになっている。Bは以前にも利用したので、今回はワンルームタイプのAをリクエストした。タイプによって部屋のレイアウトや使い勝手がかなり違うので、好みがある場合はリクエストが必要だ。
エクセレンシィフロアの客室は、一般階よりも天井が高くなっており、それだけ窓も大きい。それに加え、Aタイプはレギュラールーム2室分の幅がある、ワイドなパノラマウィンドウが魅力だ。41階からは景観を遮るものもなく、東京の広さを実感できる眺めが広がる。室内にはテレビやミニバーを収納したキャビネットが中央に置かれ、それがベッドスペースとリビングスペースを分ける役目をしている。テレビはリビング側用とベッド側用の2台が設置されているが、DVDやオーディオはない。
リビングスペースには、ローテーブルを囲んだソファと、窓に向いたライティングデスク、ファックスマシンが載ったワゴンが設置されている。一方のベッドスペースには、140センチ幅のベッドが2台並び、軽やかなベッドスプレッドが掛かるが、寝具は真っ白なデュベカバー仕上げだ。レース、ドレープ共に電動式で、照明はスタンドのみ。家具の質感は高くないが、壁紙にはパークハイアットを思わせる色を使い、全体的にカラーコーディネートはよくできている。
入口付近にはバスルーム、トイレ、広いウィークインクローゼットを設けている。グローゼット内はフローリング仕上げで、幅広いハンガーレールとチェストが用意されているが、チェストの上には金庫が載っており、引き出しに入らないもを載せることすらできなくしている。バゲージ台もないので、せっかく広いクローゼットがあっても、荷物の整理には苦労した。また、この部屋のちょうど真上が宴会場のため、深夜にもレイアウト変更などの作業があるらしく、その間はかなりの騒音が響いた。
トイレはバスルームから完全に独立している。床は大理石で、同じく石造りのベイシンを備える。バスルームは天井が高いし広々しているが、照明が平板でつまらない。全体が大理石仕上げで、バスタブに並んだシャワーブースのほか、ベイシン、ドレッサーを備え、アメニティはSOMO。タオルは3サイズ2枚ずつで、バスローブもあるが、使い古されてヨレヨレだった。また、タオルの置き方が粗雑だったり、グラスが汚れていたりと、清掃が丁寧さを欠いている印象だった。
ラウンジでの朝食は、とてもシンプルな内容だ。だが、具沢山のスープ、美味しいクロワッサンと蜂蜜、ヨーグルトなどを備え、パリのプチホテルのようで悪くない。チェックアウトはラウンジにてスムーズに行われたが、特別階のサービスとしては非常にあっさりしており、印象に残らなかった。
|