グランドプリンスホテル赤坂 Suite  
Grand Prince Hotel Akasaka
2009.01.04(日)
東京都千代田区
哀-3

白い大理石ので囲まれた立体的なロビー空間
 
手本不在の悲劇 かつて赤プリにもいい時代は存在した。赤坂という好立地にそびえる近未来的な外観はアーバンライフの象徴となり、最上階のラウンジには連日多くのカップルが押し寄せた。そこから眺めるまばゆい夜景は、新宿あたりの高層ビルとは一味も二味も違っていた。

眼下の高速を流れる絶え間ない車のテールランプが躍動感を醸し、周囲の環境も世俗的な生活とは一線を画すような一種の風格を感じさせた。それに乗じてか、帝国・オークラ・ニューオータニの御三家の後を追い、これからは四天王の時代だなどと鼻息が荒かったが、月日は流れ、気が付けばひどく落ちぶれていた。

今このホテルを思うとき、心の中では荒城の月がBGMとなって流れてくる。客室はそれなりに広いし全体の造りも悪くなく、ここにセンスさえ伴えば結構いいホテルになるはずなのに、まことに残念でならない。今や宿泊料金は底を打っており、レストランにも活気はない。こうして正月を迎えても、高輪のような賑わいはなく、ロビーの装飾も気は心程度だ。

そして、心底がっかりするのはサービスの質の低さである。何か特別な粗相があったわけではない。どちらかといえば、スムーズだったのかもしれない。だが、ドア、ベル、フロントと、接する係がことごとくアルバイト的な仕事ぶりなのである。年の頃は定かでないが、見た目の印象としてはだれもが学生のようであった。

学生が悪いわけではない。一日も早く一人前になろうと、額に汗してひたむきに努力しているのなら、何とか後押しをしてやりたくもなる。スキルの未熟さを、熱意と謙虚さで補うことも、時に微笑ましく見て取れる。だが、仕事振りも接客態度も粗雑では、見ていて危なっかしいばかりか気分も悪い。つい前の日にはグランドハイアットのサービスに一層の洗練を期待したが、ここの現状と比較すればグランドハイアットは師範の域だ。

赤プリの若いスタッフの名誉のために付け加えると、今の赤プリには模範となるような優秀なスタッフがいないことが、老舗としての風格を育むどころか、品質をとことん貶めている最大の原因だと思われる。仮に若い連中に熱意があったとしても、よい手本がなければ国際級のサービスには到達できない。そう考えると、ここの若い連中は気の毒だ。

今回利用したのはスイート。90平米近い面積があるのに、1泊2万円台前半と破格の安さで売られている。最新のホテルと比較すると設備は見劣りするが、かなりのお買い得であることは間違いない。スイートは各廊下の突き当たりに位置し、入口を入ってからもまた長い廊下がある。その先が広々としたリビング・ダイニングだ。

最大の特徴は、何といっても横幅一杯に広がるパノラミックウィンドウ。しかも出窓風に張り出しているので、窓際だけでなく室内のどこからでも東京の広大で迫力ある都市景観を楽しめる。ところが、肝心の窓そのものが著しく汚れているのが残念だった。そして、カーテンが手動で横幅が広いために、まとまると重く、開閉には結構な力が必要だ。

リビングには5名分のレザーソファセットがあり、ダイニングには6名掛けのガラステーブルとレザーチェアを設置している。相当に使い込まれた感があり、これまでどのような秘密に接し、どのような情欲のゆりかごになったのか、尋ねてみたい気がした。

ソファセットに添えられたオーバルテーブルの天板は大理石。リビングとダイニングの間にあるサイドボードは大きな収納力を持ち、大型クローゼットとあわせればかなりの大荷物でも困ることはないだろう。

インテリアのカラースキームはホワイトとブルーグレー。手入れさえよければもっと好印象なはずだが、良好な日当たりが災いしてファブリックの退色が目立つ。家具のデザインは、むしろ一昔前のテイストがなかなかいい味を醸している。テレビは29型のブラウン管で、DVDプレイヤーを備えている。ダイニングがあってもキッチンの類はなく、ミニバーもレギュラールームに比べて充実しているわけではない。

そしてリビングにもユニットバスが設置されているのが珍しい。カーペット敷きのベイシンコーナーの奥に、バスタブとトイレのある160×160センチサイズのユニットがあり、これはレギュラールームのものと同等。リビングにバスルームを付帯することが、いったいどのようなシチュエーションで重宝されるのか、いくら考えても答えは出なかった。

一方、ベッドルームへと通じる廊下の途中にあるバスルームは、トイレとビデのあるユニットと、バスタブのみのユニットに別れており、こちらは床が大理石。リビングのユニットバスは樹脂系の床なので、クオリティにも微妙な違いが見受けられる。ベイシンの天端はいずれも大理石製である。

バスアメニティはポーラのアロマエッセシリーズだが、他のアイテムは以前よりも品揃えが悪くなった。ひとつだけ気に入ったのは、客室用のスリッパ。持ち帰り可能の使い捨てタイプだが、シロクマのぬいぐるみのようにやわらかい肌触りで、底のクッションもふわふわしている。

ベッドルームはリビングに比べるとコンパクト。赤プリ名物の窓際ロングソファはなく、大理石トップの丸テーブルとふたつのチューリップイスを置いている。ベッドは120センチ幅で、マットレスの厚さは15センチと薄め。レギュラールームではドレッサーになっている部分が、この部屋ではチェストになっており、ここにも収納力を強く意識したことが伺える。不思議だったのは客室内の温度。ベッドルームもリビングも同じ向きに窓があるのだが、ポカポカと暖かいリビングに対し、ベッドルームは震える寒さだった。

このホテルにもつい前日までは正月プランが存在したらしい。値段表によると通常のツインルームで、1室1泊10万円。どんな催しがあり、どんな食事が振舞われるのか知らないが、かなり割高感がある。

 
客室のカラースキームもロビーからの統一感がある スイートの魅力は横一面のパノラマウィンドウ ホワイトやクリスタルを基調にブルーのアクセント

スイートの家具はピアノフィニッシュ リビングのバスルームにあるベイシン リビング側バスルーム

エントランスドアから続く廊下 ベッドルーム側のバストイレ ベッドルーム側はバスとトイレが独立している

ベッドのヘッド壁にはビュッフェのリトグラフ 窓際のチューリップチェアが特徴的 ベッド前にはチェストが設置されている

新館のふもとでも存在感を放つ旧館 ライトアップされた旧館 旧館のロビー

旧館の寿の間 旧館のエントランス ロビーの正月飾りはサイコロがテーマらしい

ロビー ロビー フロント前

 グランドプリンスホテル赤坂(公式サイト)
 以前のレビューはこちら→ 001227 010210 011122 020923 030622 030706 031020 031107 031202 031216 040304 040328 040501 040620 040829 050122 050716 050730 060906 070520


公開中リスト | 1992 | 1993 | 1994 | 1995 | 1996 | 1997 | 1998 | 1999 | 2000 | 2001 | 2002 | 2003 | 2004 | 2005 | 2006 | 2007 | 2008 | 2009 |
| ホテル別リスト | レストラン別リスト | 「楽5」「喜5」ベストコレクション |