夏至の一夜を赤坂プリンスホテルで過ごした。新しいホテルに押されて、やや存在がかげりがちだが、都庁やパークタワーと同じ丹下健三氏設計によるその均整の取れた印象的で美しい外観は、新しい建物が多く立ち並んだ今でも色あせることなく、超高層ホテルの最高傑作のひとつに数えられる秀作だ。改装を終えた室内はシンプルながら使い慣れるほどに快適さを増してゆく。
普段はさっぱり・あっさりのサービススタイルでありながら、何かあればひたすら低姿勢で問題解決に努めるというのも、赤坂プリンスのテイスト。永田町のお偉方の利用が多く、かつては松田聖子さんも赤プリのスイートを愛用するなど、国産著名人遭遇率が極めて高いホテルでもある。
今回はスイートを利用した。定価は10万円近くするのだが、日によってはかなり手頃なレートで利用することができる。スイートにはビジネススイート、ファミリースイート、和室スイートなどいくつかの種類があるが、単にスイートと呼ばれるタイプは、80平米強の面積を持ち、基本的に各フロアの両端に2室づつが配置されている。40階建ての高層ホテルだから、総客室数に対するスイートの割合は結構高い。
また、多くのホテルでは通常スイートは高層階などの条件のよいフロアに集約されているが、ここ赤坂プリンスではヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル同様、スイートは各フロアの中で条件のよい場所に縦割りに配置されているため、部屋のアサインによっては低層階になってしまう可能性がある。しかし、今回はラッキーなことに28階という比較的高層階を利用することができた。
エントランスを入ると、まず長い廊下があり、室内は水回りを除いて、ひたすら真っ青なカーペットが敷き詰められている。その他は白を基調としており、シンプルで涼やかな印象だ。廊下の途中には鏡張りの壁とクローゼットがあり、突き当たりでリビングへと続く扉と、マスターバスルームやベッドルームに向かう廊下に分かれている。リビングルームは広く、一面のワイドな窓が何よりも強烈な印象を放っており、夜になって室内の照明を消せば、まるで空中に浮かんでいるような気分さえ味わえる。高層階からは、赤坂御所の緑はもちろん、東京湾までが見渡せ、非常にパノラミックな眺めが楽しめる。
リビングには、ガラスのテーブルを据えた6人掛けのダイニングスペースと、白いキャビネットを挟んで5人掛けのゆったりしたソファを配置している。ソファはとても大きく、革張りで掛け心地もよい。天井からのダウンライトはハロゲン光で、窓際の両端にはスタンドも置かれており、室内照明の調光は自在だ。リビングルームの奥にもクローゼットが備わり、客室のどこにでも収納スペースが用意されている。
ライティングデスクはなく、LANやFAXも用意されていないので、ビジネスユースにはいささか不便だ。電話機はとても古いタイプのものだが、電話線が非常に長く延びるので、好みの場所まで移動して置くことができた。また、家具はいずれも白いピアノのような鏡面仕上げになっており、軽く拭けは汚れが落ちるので、清掃がしやすそうな感じ。テレビはやや旧型だが、ビデオデッキが備わっていた。さらに、リビングルームにもベッドルームとは別に、トイレだけでなくフルのバスルームが備わっているが、アメニティは置かれていなかった。
広々としたリビングに比べてベッドルームは小ぢんまりとしている。ベッド2台とチューリップイス、テーブルが置かれ、落ち着いた雰囲気。こちらもテレビは旧型のままだ。ベッドの正面には鏡と引き出しがあるが、ドレッサーの役は果たさない。ベッドルーム脇のマスターバスルームは、ベイシンを通り越したところにふたつの扉が並んでおり、トイレとビデ、バスタブが配置されている。床は大理石だ。結構なスペースを当てている割には、レイアウトが面白くない。
洗浄機能付き便器がビデの機能を兼ねるようになった今となっては、無用の設備があるというのは邪魔なだけだ。思い切り改装をすれば、新しいホテルにも負けないバスルームになったかもしれないと思うと少々残念。アメニティはジバンシイ製品を中心に揃え、ご丁寧にお持ち帰りようにロゴ入りの手提げまで用意してあった。もちろんバスローブも備わっている。バスタブのカランはサーモスタット付きだが、温度調節のつまみが固くて、とても使いにくかった。
日中はロイヤルプールに出掛けてみた。円形のプールの周りにデッキチェアを配置し、周囲にはパームツリーが植えられて南国ムードを演出している。宿泊客の入場は1,000円と手頃だが、デッキチェアは一回2,000円と高額。屋外プールながら温水なので、夏のみならず比較的長い期間楽しめるのが魅力だ。
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