日曜日の夜、ロビーにはさほど人の姿はなく、閑散としていた。白い大理石で覆われた空間は、氷の世界のようにも見える。石の階段に腰掛けて、肩を寄せ合い語り合う男女の姿がなんとも印象的だった。日中は数多くの宴会で賑わうこのホテルだが、日曜日の夜が最も静けさに包まれる時だ。
客室は29階のビジネススイートだった。予想していたよりも高層階をアサインされ、ひとりで大喜び。この階になると、この客室からなら周囲の建物よりも目線が高くなるので、かなり開けた眺めを楽しむことができる。夜景といい、昼間みる皇居の緑といい、都心らしい景観だ。
改装を行なった後も、客室の間取りは改装前とまったく同じで、家具の配置などにも大きな変化はない。ファブリックの色にコントラストがついたので、以前よりはシャープな印象になった他、ハロゲン灯の照明、腰の高いベッド、回転椅子などを導入したのは、レギュラー客室同様である。
そうした新しい備品に混じって、昔懐かしいチューリップ椅子や、電電公社のマークが入った電話機、プリンスホテルらしさの光るテーブルなど、かねてからの品も大切に使われており、新旧渾然となった客室だ。また、20階以上の客室に導入されたという液晶テレビだが、この客室には備わっていなかった。
今回は清掃状況があまり芳しくなかった。寝室の床には、小さなものでああるが、ゴミが複数落ちたままになっており、サービスディレクトリーが置かれていないなど、不行届きな点があった。手軽にレギュラーコーヒーが楽しめるコーヒーメーカーが置かれているのはうれしいことだが、夜にチェックインしたのに、マシンは濡れたままだった。
清掃の状況がよくないところから想像が発展して、このコーヒーメーカーも清潔ではないのかもしれないという思いが頭をよぎってしまう。ちょっとしたゴミを見逃すことで、イメージはどんどんマイナス方向へと向かっていくこともあるので、清掃の最終チェックは念入りに行なって欲しい。尚、29階での携帯電話の電波状況は、あまりよくなかった。また、チェックアウト前の時間は、廊下で作業する客室係の声や音がうるさかった。
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