ザ・プリンス さくらタワー東京 Junior Suite | |
The Prince Sakura Tower Tokyo |
2009.03.28(土)
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東京都港区 |
哀-4
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薄汚れた部屋 | 高輪ではいよいよ桜まつりが始まり、3軒のホテルも人出が多くなってきた。だが、この日は晴天ながら雲が多く、なかなかスカッと晴れることがないため、さて花見だというウキウキモードにまではいまひとつ盛り上がらない。
高輪プリンス庭側玄関の前にある桜開花基準木には「5分咲き」との表示があるが、見た感じは2〜3分程度の印象。実際の開花状況よりも、見た目の方が少し控えめに感じられるのかもしれない。他にも様々な花が咲き始めているが、日が当たらない時に見る花は、どこかまだ冬をひきずっているかのようだった。 まだ少し肌寒い庭園に対して、暖かい館内は混雑を呈していた。さくらタワーのロビーが混むというのは珍しい。通常のチェックインタイムより1時間早く到着したが、すでにレセプションラウンジには多くの客がいる。チェックインをしながら、ウェルカムドリンクのコーヒーを飲んだが、それは酸味の強い個性的な味。部屋へ入れるのは1時間後かと思っていたが、すでに用意が整っており、すぐにカードキーが渡された。 この日、高輪3軒のプリンスでは、それぞれのスペシャルルームが同一料金で売りに出ていた。高輪のロイヤルフロアガーデンスイート、新高輪のエグゼクティブクラブルーム、そしてさくらタワーのジュニアスイートである。部屋の広さや特別階向けの充実したサービスを考えれば、高輪か新高輪が魅力的だったが、最近一番ご無沙汰なのはさくらタワーのジュニアスイートだったので、それを選んだ。 用意されたのは9階のジュニアスイート。まださくらタワーが開業したてのころに利用したきりで、本当に久しぶりの利用である。部屋の中に入っても、全体のレイアウトや設備には覚えがあるが、ディテールには初めて見るような新鮮さがある。だが、総じての印象は、ずいぶんとやつれ、疲れ果てた部屋だというものだった。リブランドの際に多少の化粧直しはしてもらったようだが、日常の手入れが悪く、清掃も不十分なので、本来の状態とは程遠いありさまなのだ。 空調の吹き出し口には風の通り道が黒く浮かび上がっているし、窓は汚れでザラザラとして思春期の顔肌のよう。レースカーテンも汚れでグレーになっている。もともとグレーなのかを確かめたくて、部分的に塗らして汚れを落としたら、真っ白になった。これではどんな立派な部屋をこしらえても、たちまち薄汚れて気品を失うだろう。部屋の造りがユニークで、元来、居心地は悪くないはずなだけに残念でならない。 室内は入口から居室までの間に、やや長い廊下状のホワイエがあって、幅の広いバゲージ台、ウォークインクローゼット、ミニバー、バスルームやトイレへの扉が設けられいるが、居室とホワイエの間に内扉はない。クローゼットの扉は両開きの折戸で、中には長いハンガーレール、オープンラック、そして上部にも扉付きの収納棚が設けられ、大きな収納力を持っている。ズボンプレッサーやアイロンセットも用意してある。 居室は、半円状の窓が最大の特徴。船の先端にいるような気分が味わえるが、窓そのものは幅はあっても高さがなく、圧倒的な開放感というには遠く及ばない。むしろ、低層階で庭の木々が近い方が、味わいある眺めを満喫できると思われる。 窓を背に置かれた1人掛けソファはふたつ。それにテーブルを添えたというのが、シッティングスペースのすべてであり、リビングに独立性もなければ、広々とした占有空間があるわけでもなく、これをもってジュニアスイートと呼ぶには無理があるように感じた。せいぜいデラックスルームとか、コーナーデラックスと呼ぶのが適当だろう。 ベッドは140センチ幅が2台。マットレスは17センチ厚の古いものを使っており、ベッドの高さも40センチと低い。寝具はデュベとデュベカバー仕上げに改められているが、不思議だったのはシーツ。左右のベッドで、シーツの質が著しく異なっていたのである。片側はなめらかで肌触りもよかったが、もう片方はザラザラゴワゴワ。 何かの間違いで、本来さくらタワー用ではないものが混入して、それに気付かずメイクしてしまったのか、それともこれほどのクオリティ差を無視して、あえて混在させているのかはわからないが、どちらにしてもいい加減であることは間違いない。 天井高は263センチ。ベッドに横たわると、進入禁止の標識みたいな意匠の天井が目に入るが、そこに間接照明が施されているわけではない。テレビやデスクはというと、残された壁面に追いやられ、やや肩身が狭いような面持ちで置かれている。テレビは32インチの液晶型で地デジ、BSデジタルに対応。並んだデスクはドレッサーを兼ねており、目の前には三面鏡が畳まれている。 更に隣には湯沸しポットやコーヒーメーカーを載せた小さなサイドテーブルがあるが、卓上にはコーヒーがこぼれて乾いた跡が残っている。コーヒー用のマグカップがひとつしかないことも不親切に感じられた。テレビからサイドテーブルまでの並びは、狭いスペースに無理矢理押し込んだ印象があり、見た目に悪いだけでなく、実際の使い勝手も不便だった。 居室内の照明は、ナイトランプ、デスクランプ、ふたつのフロアスタンドのみで、ほんのり淡い。夜にはやや照度が足りない気がしないでもないが、落ち着いた雰囲気を味わうには悪くなかった。 居室だけの設備を見ると、このジュニアスイートよりもレギュラールームの方が充実しており、使い勝手でも優れている。だが、バスルームの個性では、この部屋の方がインパクト大だ。 トイレは完全に独立しており、バスルームだけでも広さは約10平米。小さいながら窓があり、自然光が差し込むようになっている。カーブの多い形状はどこか貝殻を思わせ、円形のブロアバスを中心に、シャワーブースとダブルベイシンをゆったりと配したレイアウトだ。壁はタイルで、床やベイシントップは大理石を使っているが、照明が蛍光灯で白っぽいため、それらが美しく映えないのが残念。照明スイッチは一括のオン/オフのみで、別に床暖房のスイッチがある。 ベイシンは立つには低く、添えられたスツールに座ろうにも、タオルハンガーが邪魔をして座りにくいなど、設計の意図がよくわからなかった。ブロアバスは直径が153センチあり、たっぷりの湯に浸かれるのが魅力だが、バスタブ内が垢で汚れていることや、ブロアが数分ですぐに停止してしまうなど、不満もあった。タオルは4セット。アメニティはブルガリだが、係がコンディショナーとボディローションを見間違ったらしく、数のバランスが合っていなかった。 やはり、プリンスの最高級クラスを標榜するのなら、細部にまで行き届いたサービスが必要なことはもちろん、基本的な清潔さや日頃のメンテナンスは欠かせない。高級ホテルの看板を常に磨き上げておくのは、本当に骨の折れること。訪れる度にガッカリが重なるのではなく、お見事!という驚きを散りばめてこそ、ザ・プリンスの名が光るというものだ。 |
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ザ・プリンス さくらタワー東京(公式サイト) | |
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