フロントはまだ空いていた。ドアマンからゲストリレーションズに引き継がれ、フロントでもキビキビとした動作で手続きが行なわれた。元気ハツラツのシェラトンらしいタッチだ。3月の約束どおり、前金で宿泊料も支払った。連休で混雑しているため、近くに子供連れが滞在しているとインフォメーションされ、それも承知した。スタートの印象は好調だった。

日中のＳＰＧラウンジは客が少なくゆっくりとくつろげたし、屋内プールもほぼ貸切状態。広いホテルなのに、こうも人の姿が少ないと、ゴールデンウィーク中であることを忘れてしまいそうだ。滞在客のほとんどがテーマパークへ出かけているのだろう。きっとパークは大変な人出に違いない。パークで遊ぶことが主目的で泊まっているのだろうから、ホテルを空ける時間が長いことが気にならないのも当然かもしれないが、日中ならばこれほどゆったりとホテルで過ごす時間を満喫できることを考えると、少々もったいない気がする。

このホテルの宿泊費だって決して安くないどころか、この時期はむしろ高い。パークで遊んで、ほとんど寝るだけで、朝食をとったらまた出掛けるという使い方の人が多いが、できることなら1泊余分に予約して、1日、それがムリなら半日でも、ホテルでゆっくり過ごす時間を持ってはどうだろう。ホテルという空間に相応しい振る舞いを子供に教えるという意味でも有意義ではないだろうか。

今回の客室は12階のラグジュアリールーム。海側36平米のタイプがアサインされた。この部屋は2006年4月にも利用した。タイプが同じという意味ではなく、部屋番号も同一。前回はスイートで使われていた大理石のテーブルとアームチェアが置かれていたが、それは取り去られ、スタンダードルーム用のテーブルとイスに入れ替わった。かつてタワーズで使われていたテーブルと同じ形の円形テーブルなのだが、タワーズ用が大理石の天板だったのに対し、スタンダード用はガラス天板と、ややグレードが劣る。また、スイート用のアームチェアは見た目にも立派で存在感があったが、スタンダード用イスは硬くて座り心地が悪い。何ゆえこのような改悪を行なったのか疑問だ。

いつもなら朝食はルームサービスにするのだが、今回は何の拍子か「なだ万」に行ってみたくなった。7時からの営業なので、1番乗りしようと思い、ちょうどに着くよう部屋を出たが、すでに数組の人が店の前で開店を待っていた。店が開き、女性の係が一組ずつ案内をしていく。「おはようございます」「何名様でしょうか」「ご案内いたします」という具合に、丁寧に接している。それは結構なのだが、一組案内して戻ってきては、また次の一組を案内という具合なので、効率は悪い。もうちょっとテキパキできないのかと思っていたが、次の次という順番まで来たので、大人しく待っていた。

そこへ、中年の男性店員がやってきて、高邁な態度で「何名様？」「はい、次の方は？」「それじゃ、一緒に来てください」と、まるで言い捨てるようにして、さっさと店内に進んでいった。丁寧な接客態度と引き換えに、これまで待たされることに耐えて来たのに、いざ次という段になって子供の遠足のような扱いをされ、とたんに不愉快になった。「おはようございます」とか「いらっしゃいませ」も言えないのでは、客の前に立つ資格などない。その態度について苦情を言うと、その中年はしばらくこちらを睨み付けていた。こんな店をテナントにしているようでは、ホテルの品性をも疑わざるを得ない。